約2年間の賜暇を終えて横浜に戻る前に急遽、パークスの指令で薩摩を訪問することになったサトウは、友人のウィリス宅に滞在中の1877年2月11日、なんと西郷隆盛が訪問してくる。ここのやりとりがどうなっていたのか、もっとも関心を引くところであろう。西郷は熊本に向けてその3日後に出陣するのだ。
西南戦争で出陣する直前で、西郷は側近に囲まれて自由に発言できないような雰囲気などが伝わる。サトウは西郷のファンであっただけに、幕末の時に会った西郷とは違う、反応の不活発さに驚かされたようだ。
サトウは、最後まで西郷隆盛のファンであり、また、ウィリスとも親しい友人だった。ところが、この二人とも順調には行かない。ウィリスは戊辰戦争や奥羽戦争でかつて医者として大変な貢献をし、薩摩にも好条件で雇われるが、ウィリスの歯車はだんだんと狂ってくる。西郷ファンであったことが影響したのだろう。ウィリスはこの後、面倒な手続きを踏んで帰国する。サトウは東京で勝海舟に会うが、勝ももはや正しい状況把握はできていない。
1877年から1878年にかけて、維新の三傑は相次いで死ぬ。1877年5月に木戸は病死。その9月には城山で西郷の死。さらに大久保は翌1878年5月に暗殺される。大変な時代だ。サトウは山登りや植物学に日本での僅かな楽しみを見出したようだ。とてつもない状況の中で記録されている日記や手紙からの引用で、この困難な時代を描いてみせる。

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西南戦争 遠い崖13 アーネスト・サトウ日記抄 (朝日文庫 は 29-13) 文庫 – 2008/4/4
萩原 延壽
(著)
イギリス公使の通訳生として、幕末から明治の日本に滞在したアーネスト・サトウの半生を追う大作、『遠い崖』全14巻中の第13巻。西郷隆盛はなぜ起ったのか? 西南戦争勃発の「現場」に居合わせ、西郷出陣までの経過を詳細に目撃した唯一の外国人はサトウのほかにいない。サトウにとって西南戦争、というより「西郷の叛乱」とは何であったのか。また鹿児島で医学の普及につとめていたウイリスにとっては?
- 本の長さ392ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2008/4/4
- ISBN-104022615559
- ISBN-13978-4022615558
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上位レビュー、対象国: 日本
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2015年7月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2008年4月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
西南戦争は明治の行方を左右する大事件であったのに、
サトウのは、日記などの記録という点では見事に寡黙である。
日記に記さないことと、サトウ自身がそのとき何を思っていたのかは同じではないが、
幕末からこれまで、読み継いできた読者にとっては期待をそがれる。
一方で大事件が起きているのに、自分を貫くサトウの姿に、
より、サトウとは何者なのか考える面白みは増してくる。
同じ時代に生きながら、ほんのわずかの違いでその歩みが異なってしまった
友人ウイリスとの対比の中で読み進めると、考させられることの幅が広い一巻である。
サトウのは、日記などの記録という点では見事に寡黙である。
日記に記さないことと、サトウ自身がそのとき何を思っていたのかは同じではないが、
幕末からこれまで、読み継いできた読者にとっては期待をそがれる。
一方で大事件が起きているのに、自分を貫くサトウの姿に、
より、サトウとは何者なのか考える面白みは増してくる。
同じ時代に生きながら、ほんのわずかの違いでその歩みが異なってしまった
友人ウイリスとの対比の中で読み進めると、考させられることの幅が広い一巻である。