若槻の回顧録は、歴史認識のあり方に対しても大いに学ぶべき視点を与えてくれている。
この回顧録の第一回目が掲載されたのが『月刊 読売』(昭和24年2月号)であるから、
東京裁判の判決(昭和23年11月)が下された3カ月後ということになる。当時の編集部
の前書きには「極東裁判主席検事キーナン氏が、日本における最も良識ある政治家の
一人とたたえた若槻翁の回顧録は、また新生日本の明るい道標ともなるべき収穫であろ
う。」と記されている。
そうすると若槻の回顧録は、東京裁判史観の本筋に沿った内容であり、それを補完する
役割を持つものとして語られたということになる。この回顧録の口述を薦めたのが読売新
聞社の馬場恒吾(政治評論家)であるが、馬場はこの回顧録に序文を書いており、明治・
大正・昭和の歴史の流れについて概略を述べている。自由主義者でもある馬場恒吾の
歴史認識を知る上でも、非常に参考となるものである。
東京裁判に対する若槻の立場について指摘しておきたい。
東京裁判に対する直接の批評は見当たらないが、首席検事のキーナンとは、何度か合って
裁判の進展に協力したことが記されている。回顧録が占領統治下に書かれたものであると
いう点を差し引いても、東京裁判それ自体に対して強い不満を抱いているという印象は
ほとんどない。むしろ、宇垣一成に対するキーナン検事の高い評価に対して、非常に感心している。
キーナン検事は、若槻、岡田、米内、宇垣の四重臣に対して「日本における真の平和愛好者」
と呼んでいる点は、「東京裁判史観」を論ずる上でも注目されなくてはならない。
つまり戦前の日本の指導者の中にも「平和愛好者」が存在していたことをしっかり認識して
おり、戦前の日本をすべて否定したわけではないのである。単なる「自虐史観」という批判
あたらない。これはグルー大使の歴史観とも相通ずるものである。東条派vs反東条派と
いう単純な図式となっている点は多少問題があるとしても、親英米派vs親独伊派、
積極開戦派vs開戦反対派、また戦争継続派vs和平推進派という対立構造の中で、
歴史観を構成しようということは間違ってはいない。
キーナン検事の言う「真の平和愛好者」とは、日米開戦反対派、和平推進派のことである。
これは日本国民の歴史認識の上でも、基本的には重要な視点である。
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明治・大正・昭和政界秘史 (講談社学術文庫) 文庫 – 1983/10/1
若槻 礼次郎
(著)
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- 本の長さ492ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1983/10/1
- 寸法10.8 x 2.1 x 14.8 cm
- ISBN-10406158619X
- ISBN-13978-4061586192
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著者について
慶応2年(1866)島根県生まれ、明治25年東京帝国大学仏法科卒業。大正元年第三次桂内閣成立と共に大蔵大臣就任、以後、第二次大隈内閣の大蔵大臣、加藤内閣の内務大臣を歴任。大正15年第一次若槻内閣、次いで昭和6年民政党総裁、第二次若槻内閣を成立。「国体護持の終戦」に尽くす。昭和24年11月20日没。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1983/10/1)
- 発売日 : 1983/10/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 492ページ
- ISBN-10 : 406158619X
- ISBN-13 : 978-4061586192
- 寸法 : 10.8 x 2.1 x 14.8 cm
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読み易いというレビューに偽り無し
古い、恐らく初版を所々読んでみましたがその当時の古い字体であっても他のレビューの通り非常に読み易いと思います。こういうものが絶えず再版されているという点だけでも評価出来ると思いますが大体の話が数ページで終わるので図書館等にあればちょっと手にとってみては如何でしょう。読み終わっていないのと見たものが最近の版でもないので評価は4にしておきますが長年に於いても誤字脱字と字体、仮名遣い程度しか修正されていないものと推測します。(言葉が基本的に綺麗であるしほぼ現代と同じで特に都合の悪そうなことも感じないので 仮に何かあったとしてもそれは既に最初で省かれるか修飾されてそうです。)とりあえず口語的文章中心なので入りやすく、どちらかというと近現代史が苦手な中高校生なんかにもオススメです。ロンドン軍縮会議が4ヶ月も掛かったとか多分教科書でそんなことは滅多に書かれてないだろう的な周辺事情がアッサリと書かれています。そんな感じから察すると余生の暇に殆どは資料と一緒に思い出して書いたのではないか・・・という気がするのですが、聞くところによると総理経験者がこうした本を残した例は少ないらしいのでそういう意味でもおもしろいのではないかと思います。
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2013年11月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年12月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とにかく、文章が読みやすい。
物の見方が冷静で穏当、そして描写は具体的で明瞭なので、
すっと頭に入る。
内容も、歴史的な話から交遊録的なものまで幅広い。
小見出しもうまい。
西園寺公の大喝 -第一次西園寺内閣-
抱きあって泣く元老 -第二次桂内閣-
大隈の口、山県の耳 -大隈内閣-
原、加藤の対立 -原内閣-
といった具合である。
関心のある人物が載っていれば、
気軽にめくってみるとよいと思う。
こういう本こそ、
できれば商品ページに目次を掲示して欲しいと思うのだが。
物の見方が冷静で穏当、そして描写は具体的で明瞭なので、
すっと頭に入る。
内容も、歴史的な話から交遊録的なものまで幅広い。
小見出しもうまい。
西園寺公の大喝 -第一次西園寺内閣-
抱きあって泣く元老 -第二次桂内閣-
大隈の口、山県の耳 -大隈内閣-
原、加藤の対立 -原内閣-
といった具合である。
関心のある人物が載っていれば、
気軽にめくってみるとよいと思う。
こういう本こそ、
できれば商品ページに目次を掲示して欲しいと思うのだが。
2008年3月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第一次世界大戦のころを読んでみた。
いろいろと知らないことが書いてあった。
清浦内閣が組閣に失敗したのは、海軍大臣を得られなかったからだ・・・。
また、大隈内閣の内側からの記述が興味深い。
加藤高明外務大臣と、参戦の経緯。
21か条と元老とのやりとり。
大浦事件についての身内からの描写等々。
座右において時々参照したい本だ。
いろいろと知らないことが書いてあった。
清浦内閣が組閣に失敗したのは、海軍大臣を得られなかったからだ・・・。
また、大隈内閣の内側からの記述が興味深い。
加藤高明外務大臣と、参戦の経緯。
21か条と元老とのやりとり。
大浦事件についての身内からの描写等々。
座右において時々参照したい本だ。
2018年9月29日に日本でレビュー済み
古い、恐らく初版を所々読んでみましたがその当時の古い字体であっても
他のレビューの通り非常に読み易いと思います。
こういうものが絶えず再版されているという点だけでも評価出来ると思いますが
大体の話が数ページで終わるので図書館等にあればちょっと手にとってみては如何でしょう。
読み終わっていないのと見たものが最近の版でもないので評価は4にしておきますが
長年に於いても誤字脱字と字体、仮名遣い程度しか修正されていないものと推測します。
(言葉が基本的に綺麗であるしほぼ現代と同じで特に都合の悪そうなことも感じないので
仮に何かあったとしてもそれは既に最初で省かれるか修飾されてそうです。)
とりあえず口語的文章中心なので入りやすく、
どちらかというと近現代史が苦手な中高校生なんかにもオススメです。
ロンドン軍縮会議が4ヶ月も掛かったとか
多分教科書でそんなことは滅多に書かれてないだろう的な周辺事情がアッサリと書かれています。
そんな感じから察すると余生の暇に
殆どは資料と一緒に思い出して書いたのではないか・・・という気がするのですが、
聞くところによると総理経験者がこうした本を残した例は少ないらしいので
そういう意味でもおもしろいのではないかと思います。
他のレビューの通り非常に読み易いと思います。
こういうものが絶えず再版されているという点だけでも評価出来ると思いますが
大体の話が数ページで終わるので図書館等にあればちょっと手にとってみては如何でしょう。
読み終わっていないのと見たものが最近の版でもないので評価は4にしておきますが
長年に於いても誤字脱字と字体、仮名遣い程度しか修正されていないものと推測します。
(言葉が基本的に綺麗であるしほぼ現代と同じで特に都合の悪そうなことも感じないので
仮に何かあったとしてもそれは既に最初で省かれるか修飾されてそうです。)
とりあえず口語的文章中心なので入りやすく、
どちらかというと近現代史が苦手な中高校生なんかにもオススメです。
ロンドン軍縮会議が4ヶ月も掛かったとか
多分教科書でそんなことは滅多に書かれてないだろう的な周辺事情がアッサリと書かれています。
そんな感じから察すると余生の暇に
殆どは資料と一緒に思い出して書いたのではないか・・・という気がするのですが、
聞くところによると総理経験者がこうした本を残した例は少ないらしいので
そういう意味でもおもしろいのではないかと思います。

古い、恐らく初版を所々読んでみましたがその当時の古い字体であっても
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読み終わっていないのと見たものが最近の版でもないので評価は4にしておきますが
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(言葉が基本的に綺麗であるしほぼ現代と同じで特に都合の悪そうなことも感じないので
仮に何かあったとしてもそれは既に最初で省かれるか修飾されてそうです。)
とりあえず口語的文章中心なので入りやすく、
どちらかというと近現代史が苦手な中高校生なんかにもオススメです。
ロンドン軍縮会議が4ヶ月も掛かったとか
多分教科書でそんなことは滅多に書かれてないだろう的な周辺事情がアッサリと書かれています。
そんな感じから察すると余生の暇に
殆どは資料と一緒に思い出して書いたのではないか・・・という気がするのですが、
聞くところによると総理経験者がこうした本を残した例は少ないらしいので
そういう意味でもおもしろいのではないかと思います。
他のレビューの通り非常に読み易いと思います。
こういうものが絶えず再版されているという点だけでも評価出来ると思いますが
大体の話が数ページで終わるので図書館等にあればちょっと手にとってみては如何でしょう。
読み終わっていないのと見たものが最近の版でもないので評価は4にしておきますが
長年に於いても誤字脱字と字体、仮名遣い程度しか修正されていないものと推測します。
(言葉が基本的に綺麗であるしほぼ現代と同じで特に都合の悪そうなことも感じないので
仮に何かあったとしてもそれは既に最初で省かれるか修飾されてそうです。)
とりあえず口語的文章中心なので入りやすく、
どちらかというと近現代史が苦手な中高校生なんかにもオススメです。
ロンドン軍縮会議が4ヶ月も掛かったとか
多分教科書でそんなことは滅多に書かれてないだろう的な周辺事情がアッサリと書かれています。
そんな感じから察すると余生の暇に
殆どは資料と一緒に思い出して書いたのではないか・・・という気がするのですが、
聞くところによると総理経験者がこうした本を残した例は少ないらしいので
そういう意味でもおもしろいのではないかと思います。
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2010年2月7日に日本でレビュー済み
教科書で習う日本史はどうしても事実のみを抽象的に覚えるだけになってしまう。
なのでたとえば「第三次桂太郎内閣は大正政変で多方面から非難され早々に辞職した」とおぼえると
桂太郎=悪人 といったイメージがつくられやすい。
しかしこの本を読むことで桂太郎や著者若槻らのイメージががらっと変わった。
さらに彼の大蔵省時代の記録を読めば、そこから戦前の官僚・政治家の信頼関係なども読み取れたりする。
ただ1949年という占領下において書かれたものなので、東京裁判などに関する記述は少ないし、これが本音なのか定かではない部分もある。
なのでたとえば「第三次桂太郎内閣は大正政変で多方面から非難され早々に辞職した」とおぼえると
桂太郎=悪人 といったイメージがつくられやすい。
しかしこの本を読むことで桂太郎や著者若槻らのイメージががらっと変わった。
さらに彼の大蔵省時代の記録を読めば、そこから戦前の官僚・政治家の信頼関係なども読み取れたりする。
ただ1949年という占領下において書かれたものなので、東京裁判などに関する記述は少ないし、これが本音なのか定かではない部分もある。
2004年11月2日に日本でレビュー済み
はっきり言って、戦前の政治家の中で若槻礼次郎の存在感はかなり薄いと思う。政策や人間的魅力で注目を浴びることはなく、かと言って「帝国日本の悪の象徴」といったイメージで糾弾されるわけでもない。だがこの本の存在を軽く見てはもったいない。そもそも日本では、功成り名を遂げた政治家が後世の評価にも耐えるだけの資料的価値を持つ回顧録を執筆する伝統が、残念ながら存在しない。その中にあって戦前二度にわたり政党内閣を率い、その後は重臣として一定の重きをなしたこの人物による回顧録は、やはり貴重な資産だからだ。
島根の下級武士の家に生まれ困窮から中学を中退、一時は代用教員も勤めた若槻が、その後東京帝大・大蔵省を経て政党政治家に転進、ついに宰相の地位にまでのぼりつめてしまうというストーリーは、それ自体明治の立身出世主義の体現として面白い。政治史との絡みで特に興味深いのは、南満洲鉄道株式会社設立の経緯・桂太郎渡欧の狙い・第三次桂内閣総辞職の舞台裏・ロンドン軍縮会議の様子などについてそれぞれ回顧した部分だろうか。
解説で伊藤隆氏が指摘するように、若槻の文章は抽象性を排し実際的で飄々としたものなので非常に読みやすい。自らの若い頃についても衒うことなく若干のユーモアも漂わせながら率直に書き綴っていることに、多くの人が好感を持つのではないだろうか。ただ一方で、若槻は朝鮮統治や対外戦争がもった意味についてはほとんど無頓着なように見える。これを伊藤氏のように「戦後の価値観で戦前を見ようとしていない」と好意的に捉えるべきなのか、議論の分かれる点だろうが、とりあえずまずは多くの方に一読して頂きたい一冊。ちなみに内容の多くは、1949年から翌年にかけ、最晩年の若槻が雑誌に連載した文章が元になっている。
島根の下級武士の家に生まれ困窮から中学を中退、一時は代用教員も勤めた若槻が、その後東京帝大・大蔵省を経て政党政治家に転進、ついに宰相の地位にまでのぼりつめてしまうというストーリーは、それ自体明治の立身出世主義の体現として面白い。政治史との絡みで特に興味深いのは、南満洲鉄道株式会社設立の経緯・桂太郎渡欧の狙い・第三次桂内閣総辞職の舞台裏・ロンドン軍縮会議の様子などについてそれぞれ回顧した部分だろうか。
解説で伊藤隆氏が指摘するように、若槻の文章は抽象性を排し実際的で飄々としたものなので非常に読みやすい。自らの若い頃についても衒うことなく若干のユーモアも漂わせながら率直に書き綴っていることに、多くの人が好感を持つのではないだろうか。ただ一方で、若槻は朝鮮統治や対外戦争がもった意味についてはほとんど無頓着なように見える。これを伊藤氏のように「戦後の価値観で戦前を見ようとしていない」と好意的に捉えるべきなのか、議論の分かれる点だろうが、とりあえずまずは多くの方に一読して頂きたい一冊。ちなみに内容の多くは、1949年から翌年にかけ、最晩年の若槻が雑誌に連載した文章が元になっている。
2005年3月17日に日本でレビュー済み
若槻礼次郎といえば高校で、日本史を専攻した人ぐらいしか知らないだろう。しかし彼は、二度にわたり内閣総理大臣を務めた経歴を持つ。当時、超一流の政治家だった。そして彼によって書かれた本書もまた超一流の歴史資料である。あるいは純粋にサブタイトルにならい、回顧録ということもできる。要するに、どちらにとることもできるということは、それだけ若槻がすごい政治家ということの裏返しととれる。
「ばんざい」の由来から始まって、大隈重信、原敬、桂太郎、西園寺公望、浜口雄幸、吉田茂、鳩山一郎、近衛文麿、東条英機など。本書に出てくる人物は聞いたことはある人ばかりなのだが、肝心の若槻がもっともマイナーである。そういうちょっと影がうすい。しかし、超一流の政治家である彼の残した本書は、歴史の舞台裏を若槻が冷静に書いたまさに秘史録である。
戦前からのえらい人にしては珍しいことに、文体も現代的で非常に読みやすい。
「ばんざい」の由来から始まって、大隈重信、原敬、桂太郎、西園寺公望、浜口雄幸、吉田茂、鳩山一郎、近衛文麿、東条英機など。本書に出てくる人物は聞いたことはある人ばかりなのだが、肝心の若槻がもっともマイナーである。そういうちょっと影がうすい。しかし、超一流の政治家である彼の残した本書は、歴史の舞台裏を若槻が冷静に書いたまさに秘史録である。
戦前からのえらい人にしては珍しいことに、文体も現代的で非常に読みやすい。