太宰の作品はどれも読者への親切心がある。失脚しない作品というのは、やはり独特の色や味があると思う。
いつまでも咲き続ける花 という感覚だ。
「ハムレット」はシェイクスピアの書いたもので、悲劇となっている。
シェイクスピアの中でも常に上位にある「ハムレット」。私も一度は読んだことがあるが、まあすごい。すごく面白い。
一方の太宰の「親ハムレット」はその物語に沿って書き進めているのかと思いきや、まるっきり同じではなく、むしろ違った視点から物語に入り込むことができる。
これは傑作だ。
「人間失格」に劣ることなく、楽しめた。
そして太宰本人が作中で付言している通りに、もう一度シェイクスピアの「ハムレット」を読みたくなった。
読もうと思う。
そうして読んだら今度は、また太宰の作品に触れたくなるのだろうが。
とてもオススメの一冊だ。
と思います(^^)
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新ハムレット (新潮文庫) 文庫 – 1974/4/2
太宰 治
(著)
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購入オプションとあわせ買い
こんな小説を書いたあと、どういう小説が書けるのかと心配になるほどだ―奥野健男
太宰の生涯の中で、もっとも平穏な「中期」に書かれた5編。
西洋の古典や小説に材を得、換骨奪胎した作品群。豊饒な実り、文学的才能が大きく開花している。
デカダンス文学の旗手、太宰のもう一つの面、天稟の文学的才能を存分に発揮した知性的作品群の中から、西洋の古典や歴史に取材した作品を収める。
「ハムレット」の戯曲形式を踏みながら、そこに現代人の心理的葛藤と現代的悪の典型を描き込んだ表題作、全作品中もっとも技巧をこらした「女の決闘」、人生の本質的意味を数頁に結晶させた「待つ」ほか「古典風」「乞食学生」の全5編。
「新ハムレット」は昭和16年、太宰治32歳の時に刊行された最初の書下ろし長編小説。
目次
古典風
女の決闘
乞食学生
新ハムレット
待つ
解説 奥野健男
本書収録「女の決闘」より
第一
一回十五枚ずつで、六回だけ、私がやってみることにします。こんなのは、どうだろうかと思っている。たとえば、ここに、鷗外の全集があります。勿論、よそから借りて来たものである。私には、蔵書なんて、ありやしない。私は、世の学問というものを軽蔑して居ります。たいてい、たかが知れている。ことに可笑しいのは、全く無学文盲の徒に限って、この世の学問にあこがれ、「あの、鷗外先生のおっしゃいますることには、」などと、おちょぼ口して、いつ鷗外から弟子のゆるしを得たのか、先生、先生を連発し、「勉強いたして居ります。」と殊勝らしく、眼を伏せて、おそろしく自己を高尚に装い切ったと信じ込んで、澄ましている風景のなかなかに多く見受けられることである。
本書収録「新ハムレット」より
はしがき
こんなものが出来ました、というより他に仕様が無い。ただ、読者にお断りして置きたいのは、この作品が、沙翁の「ハムレット」の註釈書でもなし、または、新解釈の書でも決してないという事である。これは、やはり作者の勝手な、創造の遊戯に過ぎないのである。人物の名前と、だいたいの環境だけを、沙翁の「ハムレット」から拝借して、一つの不幸な家庭を書いた。それ以上の、学問的、または政治的な意味は、みじんも無い。狭い、心理の実験である。
本書「解説」より
太宰治が中期において彼の知的才能や文学的教養をもっとも自由奔放に発揮したのは、西洋の古典、に取材した作品である。(略)
読者は太宰治がいかに西洋の古典や文学を、自家薬籠中のものとして、完全に消化し、それらの文学とたのしく戯れながら、自分の空想を大きくはばたかせ、巧みに自己の作品と化さしめていることに驚きを感じるに違いない。と同時にそういう太宰に自分と同じ現代人のいきづかいを一層身近に感じるに違いない。
――奥野健男(文芸評論家)
太宰治(1909-1948)
青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。
太宰の生涯の中で、もっとも平穏な「中期」に書かれた5編。
西洋の古典や小説に材を得、換骨奪胎した作品群。豊饒な実り、文学的才能が大きく開花している。
デカダンス文学の旗手、太宰のもう一つの面、天稟の文学的才能を存分に発揮した知性的作品群の中から、西洋の古典や歴史に取材した作品を収める。
「ハムレット」の戯曲形式を踏みながら、そこに現代人の心理的葛藤と現代的悪の典型を描き込んだ表題作、全作品中もっとも技巧をこらした「女の決闘」、人生の本質的意味を数頁に結晶させた「待つ」ほか「古典風」「乞食学生」の全5編。
「新ハムレット」は昭和16年、太宰治32歳の時に刊行された最初の書下ろし長編小説。
目次
古典風
女の決闘
乞食学生
新ハムレット
待つ
解説 奥野健男
本書収録「女の決闘」より
第一
一回十五枚ずつで、六回だけ、私がやってみることにします。こんなのは、どうだろうかと思っている。たとえば、ここに、鷗外の全集があります。勿論、よそから借りて来たものである。私には、蔵書なんて、ありやしない。私は、世の学問というものを軽蔑して居ります。たいてい、たかが知れている。ことに可笑しいのは、全く無学文盲の徒に限って、この世の学問にあこがれ、「あの、鷗外先生のおっしゃいますることには、」などと、おちょぼ口して、いつ鷗外から弟子のゆるしを得たのか、先生、先生を連発し、「勉強いたして居ります。」と殊勝らしく、眼を伏せて、おそろしく自己を高尚に装い切ったと信じ込んで、澄ましている風景のなかなかに多く見受けられることである。
本書収録「新ハムレット」より
はしがき
こんなものが出来ました、というより他に仕様が無い。ただ、読者にお断りして置きたいのは、この作品が、沙翁の「ハムレット」の註釈書でもなし、または、新解釈の書でも決してないという事である。これは、やはり作者の勝手な、創造の遊戯に過ぎないのである。人物の名前と、だいたいの環境だけを、沙翁の「ハムレット」から拝借して、一つの不幸な家庭を書いた。それ以上の、学問的、または政治的な意味は、みじんも無い。狭い、心理の実験である。
本書「解説」より
太宰治が中期において彼の知的才能や文学的教養をもっとも自由奔放に発揮したのは、西洋の古典、に取材した作品である。(略)
読者は太宰治がいかに西洋の古典や文学を、自家薬籠中のものとして、完全に消化し、それらの文学とたのしく戯れながら、自分の空想を大きくはばたかせ、巧みに自己の作品と化さしめていることに驚きを感じるに違いない。と同時にそういう太宰に自分と同じ現代人のいきづかいを一層身近に感じるに違いない。
――奥野健男(文芸評論家)
太宰治(1909-1948)
青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。
- ISBN-104101006121
- ISBN-13978-4101006123
- 版改
- 出版社新潮社
- 発売日1974/4/2
- 言語日本語
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- 本の長さ368ページ
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出版社より
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晩年 | 斜陽 | ヴィヨンの妻 | 津軽 | 人間失格 | 走れメロス | |
カスタマーレビュー |
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価格 | ¥572¥572 | ¥374¥374 | ¥407¥407 | ¥539¥539 | ¥308¥308 | ¥440¥440 |
【新潮文庫】太宰治 作品 | 妻の裏切りを知らされ、共産主義運動から脱落し、心中から生き残った著者が、自殺を前提に遺書のつもりで書き綴った処女創作集。 | ”斜陽族”という言葉を生んだ名作。没落貴族の家庭を舞台に麻薬中毒で自滅していく直治など四人の人物による滅びの交響楽を奏でる。 | 新生への希望と、戦争の後も変らぬ現実への絶望感との間を揺れ動きながら、命をかけて新しい倫理を求めようとした文学的総決算。 | 著者が故郷の津軽を旅行したときに生れた本書は、旧家に生れた宿命を背負う自分の姿を凝視し、あるいは懐しく回想する異色の一巻。 | 生への意志を失い、廃人同様に生きる男が綴る手記を通して、自らの生涯の終りに臨んで、著者が内的真実のすべてを投げ出した小説。 | 人間の信頼と友情の美しさを、簡潔な文体で表現した「走れメロス」など、中期の安定した生活の中で、多彩な芸術的開花を示した9編。 |
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お伽草紙 | グッド・バイ | 二十世紀旗手 | 惜別 | パンドラの匣 | 新ハムレット | |
カスタマーレビュー |
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価格 | ¥737¥737 | ¥605¥605 | ¥649¥649 | ¥693¥693 | ¥572¥572 | ¥737¥737 |
昔話のユーモラスな口調の中に、人間宿命の深淵をとらえた表題作ほか「新釈諸国噺」「清貧譚」等5編。古典や民話に取材した作品集。 | 被災・疎開・敗戦という未曾有の極限状況下の経験を我が身を燃焼させつつ書き残した後期の短編集。「苦悩の年鑑」「眉山」等 16 編。 | 麻薬中毒と自殺未遂の地獄の日々──小市民のモラルと、既成の小説概念を否定し破壊せんとした前期作品集。「虚構の春」など7編。 | 仙台留学時代の若き魯迅と日本人学生との心あたたまる交友を描いた表題作と「右大臣実朝」──太宰文学の中期を代表する秀作 2 編。 | 風変りな結核療養所で闘病生活を送る少年を描く「パンドラの匣」。社会への門出に当って揺れ動く中学生の内面を綴る「正義と微笑」。 | 西洋の古典や歴史に取材した短編集。原典「ハムレット」の戯曲形式を生かし現代人の心理的葛藤を見事に描き込んだ表題作等5編。 |
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きりぎりす | もの思う葦 | 津軽通信 | 新樹の言葉 | ろまん燈籠 | 地図―初期作品集― | |
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価格 | ¥693¥693 | ¥539¥539 | ¥572¥572 | ¥737¥737 | ¥539¥539 | ¥605¥605 |
著者の最も得意とする、女性の告白体小説の手法を駆使して、破局を迎えた画家夫婦の内面を描く表題作など、秀作 14 編を収録する。 | 初期の「もの思う葦」から死の直前の「如是我聞」まで、短い苛烈な生涯の中で綴られた機知と諧謔に富んだアフォリズム・エッセイ。 | 疎開先の生家で書き綴られた表題作、『短篇集』としてくくられた中期の作品群に、”黄村先生”ものと各時期の連作作品を中心に収録。 | 地獄の日々から立ち直ろうと懸命の努力を重ねた中期の作品集。乳母の子供たちと異郷で思いがけない再会をした心温まる話など 15 編。 | 小説好きの五人兄妹が順々に書きついでいく物語のなかに五人の性格を浮彫りにするという野心的な構成をもった表題作など 16 編。 | 生誕百年記念出版。才気と野心の原点がここにある。中学生津島修治から作家太宰治へ、文豪の誕生を鮮やかに示す初期作品集。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社; 改版 (1974/4/2)
- 発売日 : 1974/4/2
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 368ページ
- ISBN-10 : 4101006121
- ISBN-13 : 978-4101006123
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 145,161位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1909-1948)青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。
在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。
イメージ付きのレビュー

5 星
ドイツ作家の短篇小説を材料にして、自分なら、もっと面白い小説にしてみせると、太宰治が力を込めて取り組んだ作品
『新ハムレット』(太宰治著、新潮文庫)に収められている『女の決闘』は、頗る興味深い短篇です。なぜかと言うと、ドイツの作家、ヘルベルト・オイレンベルクの『女の決闘』を森鴎外が訳したものを材料にして、自分なら、もっと面白い小説にしてみせると、太治宰が力を込めて取り組んだ作品だからです。オイレンベルクの原作は、自分の夫が付き合っている女学生に人妻が拳銃での決闘を申し入れ、女学生を殺してしまい、その後、人妻も絶食して死んでしまうという単純なストーリーなのだが、太宰は想像力を駆使して全く異なる作品に仕上げています。原作では、人妻の胸中しか表現されていないのに、女学生の気持ち、夫の思いまで拡大解釈して描写されています。さらに、この夫は著名な作家であり、原作の作者自身の経験が下敷きになっているとまで想像を逞しくしているのです。それぞれの心境が描かれることによって、確かに物語は膨らみを増しているが、文学作品として太宰の作品が原作を凌いでいるかは、別問題です。私は、原作のすっきりしたストーリー展開でも、いや、だからこそ、この人妻の恋愛を貫こうという強い意志がひしひしと伝わってくるのだと考えています。この作品によって、太宰が作家、芸術家というものをどう捉えていたかが明らかになっているのは、興味深いことです。「この男(夫)の、芸術家の通弊として避けられぬ弱点、すなわち好奇心、言葉を換えて言えば、誰も知らぬものを知ろうという虚栄、その珍らしいものを見事に表現してやろうという功名心、そんなものが、この男を、ふらふら此の決闘の現場まで引きずり込んで来たものと思われます。どうしても一匹、死なない虫がある。自身、愛慾に狂乱していながら、その狂乱の様をさえ描写しようと努めているのが、これら芸術家の宿命であります。本能であります。・・・まことに芸術家の、表現に対する貪婪、虚栄、喝采への渇望は、始末に困って、あわれなものであります。今、この白樺の幹の蔭に、雀を狙う黒い猫みたいに全身緊張させて構えている男の心境も、所詮は、初老の甘ったるい割り切れない『恋情』と、身中の虫、芸術家としての『虚栄』との葛藤である、と私には考えられるのであります」。芸術家・太宰の面目躍如の意欲的な取り組みと言えるでしょう。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2020年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2011年4月7日に日本でレビュー済み
自分はハムレットを読んだことが無く、予備知識無しで新ハムレットに挑戦した。
戯曲調で進む物語は、一度読んだだけでは、なかなか理解し難く、伝わって来なかった。
この小説の中で、最も良かったのは「待つ」。
4ページで切なく、しかし期待感も感じさせる良作で、4ページで無ければならない作品だろう。
戯曲調で進む物語は、一度読んだだけでは、なかなか理解し難く、伝わって来なかった。
この小説の中で、最も良かったのは「待つ」。
4ページで切なく、しかし期待感も感じさせる良作で、4ページで無ければならない作品だろう。
2019年5月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
"こんなものが出来ました、というより他に仕様が無い。ただ、読者にお断りして置きたいのは、この作品が、沙翁の『ハムレット』の注釈書でもなし、または、新解釈の書でも決してないという事である。"古典の姿を借りつつ当時の現代人心理が描かれた本書は、ユーモアと皮肉に満ちている。
個人的には、読書会の課題図書にした『ハムレット』周辺の本を探す中で、本書に出会ったわけですが。原作のプロットを崩すことなく(崩せなかった?)また随所にユーモアに満ちて展開される【著者初の書き下ろし長篇作品】である本書は、後の『人間失格』にも繋がるような、他者への断絶などが感じられて興味深かった。
また、多少脱線するかもしれませんが。ハムレットに限らず【古典的名作を読む楽しみ】は、こうした派生的な周辺作品と出会ったり、あるいは様々な論文とも出会える事にもあるのではないか?そんな事も本書を読みながらあらためて思ったり。
太宰ファンの誰かに、またハムレット好きな誰かにもオススメ。
個人的には、読書会の課題図書にした『ハムレット』周辺の本を探す中で、本書に出会ったわけですが。原作のプロットを崩すことなく(崩せなかった?)また随所にユーモアに満ちて展開される【著者初の書き下ろし長篇作品】である本書は、後の『人間失格』にも繋がるような、他者への断絶などが感じられて興味深かった。
また、多少脱線するかもしれませんが。ハムレットに限らず【古典的名作を読む楽しみ】は、こうした派生的な周辺作品と出会ったり、あるいは様々な論文とも出会える事にもあるのではないか?そんな事も本書を読みながらあらためて思ったり。
太宰ファンの誰かに、またハムレット好きな誰かにもオススメ。
2019年6月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
This book is now on my list of all time favorites. It is sometimes heartbreakingly brutal and other times as soft and soulful as one could imagine.
There are so many good things to say about this book, but the characterizations are truly wonderful.
There are so many good things to say about this book, but the characterizations are truly wonderful.
2023年2月17日に日本でレビュー済み
『新ハムレット』(太宰治著、新潮文庫)に収められている『女の決闘』は、頗る興味深い短篇です。なぜかと言うと、ドイツの作家、ヘルベルト・オイレンベルクの『女の決闘』を森鴎外が訳したものを材料にして、自分なら、もっと面白い小説にしてみせると、太治宰が力を込めて取り組んだ作品だからです。
オイレンベルクの原作は、自分の夫が付き合っている女学生に人妻が拳銃での決闘を申し入れ、女学生を殺してしまい、その後、人妻も絶食して死んでしまうという単純なストーリーなのだが、太宰は想像力を駆使して全く異なる作品に仕上げています。
原作では、人妻の胸中しか表現されていないのに、女学生の気持ち、夫の思いまで拡大解釈して描写されています。さらに、この夫は著名な作家であり、原作の作者自身の経験が下敷きになっているとまで想像を逞しくしているのです。
それぞれの心境が描かれることによって、確かに物語は膨らみを増しているが、文学作品として太宰の作品が原作を凌いでいるかは、別問題です。私は、原作のすっきりしたストーリー展開でも、いや、だからこそ、この人妻の恋愛を貫こうという強い意志がひしひしと伝わってくるのだと考えています。
この作品によって、太宰が作家、芸術家というものをどう捉えていたかが明らかになっているのは、興味深いことです。「この男(夫)の、芸術家の通弊として避けられぬ弱点、すなわち好奇心、言葉を換えて言えば、誰も知らぬものを知ろうという虚栄、その珍らしいものを見事に表現してやろうという功名心、そんなものが、この男を、ふらふら此の決闘の現場まで引きずり込んで来たものと思われます。どうしても一匹、死なない虫がある。自身、愛慾に狂乱していながら、その狂乱の様をさえ描写しようと努めているのが、これら芸術家の宿命であります。本能であります。・・・まことに芸術家の、表現に対する貪婪、虚栄、喝采への渇望は、始末に困って、あわれなものであります。今、この白樺の幹の蔭に、雀を狙う黒い猫みたいに全身緊張させて構えている男の心境も、所詮は、初老の甘ったるい割り切れない『恋情』と、身中の虫、芸術家としての『虚栄』との葛藤である、と私には考えられるのであります」。
芸術家・太宰の面目躍如の意欲的な取り組みと言えるでしょう。
オイレンベルクの原作は、自分の夫が付き合っている女学生に人妻が拳銃での決闘を申し入れ、女学生を殺してしまい、その後、人妻も絶食して死んでしまうという単純なストーリーなのだが、太宰は想像力を駆使して全く異なる作品に仕上げています。
原作では、人妻の胸中しか表現されていないのに、女学生の気持ち、夫の思いまで拡大解釈して描写されています。さらに、この夫は著名な作家であり、原作の作者自身の経験が下敷きになっているとまで想像を逞しくしているのです。
それぞれの心境が描かれることによって、確かに物語は膨らみを増しているが、文学作品として太宰の作品が原作を凌いでいるかは、別問題です。私は、原作のすっきりしたストーリー展開でも、いや、だからこそ、この人妻の恋愛を貫こうという強い意志がひしひしと伝わってくるのだと考えています。
この作品によって、太宰が作家、芸術家というものをどう捉えていたかが明らかになっているのは、興味深いことです。「この男(夫)の、芸術家の通弊として避けられぬ弱点、すなわち好奇心、言葉を換えて言えば、誰も知らぬものを知ろうという虚栄、その珍らしいものを見事に表現してやろうという功名心、そんなものが、この男を、ふらふら此の決闘の現場まで引きずり込んで来たものと思われます。どうしても一匹、死なない虫がある。自身、愛慾に狂乱していながら、その狂乱の様をさえ描写しようと努めているのが、これら芸術家の宿命であります。本能であります。・・・まことに芸術家の、表現に対する貪婪、虚栄、喝采への渇望は、始末に困って、あわれなものであります。今、この白樺の幹の蔭に、雀を狙う黒い猫みたいに全身緊張させて構えている男の心境も、所詮は、初老の甘ったるい割り切れない『恋情』と、身中の虫、芸術家としての『虚栄』との葛藤である、と私には考えられるのであります」。
芸術家・太宰の面目躍如の意欲的な取り組みと言えるでしょう。

『新ハムレット』(太宰治著、新潮文庫)に収められている『女の決闘』は、頗る興味深い短篇です。なぜかと言うと、ドイツの作家、ヘルベルト・オイレンベルクの『女の決闘』を森鴎外が訳したものを材料にして、自分なら、もっと面白い小説にしてみせると、太治宰が力を込めて取り組んだ作品だからです。
オイレンベルクの原作は、自分の夫が付き合っている女学生に人妻が拳銃での決闘を申し入れ、女学生を殺してしまい、その後、人妻も絶食して死んでしまうという単純なストーリーなのだが、太宰は想像力を駆使して全く異なる作品に仕上げています。
原作では、人妻の胸中しか表現されていないのに、女学生の気持ち、夫の思いまで拡大解釈して描写されています。さらに、この夫は著名な作家であり、原作の作者自身の経験が下敷きになっているとまで想像を逞しくしているのです。
それぞれの心境が描かれることによって、確かに物語は膨らみを増しているが、文学作品として太宰の作品が原作を凌いでいるかは、別問題です。私は、原作のすっきりしたストーリー展開でも、いや、だからこそ、この人妻の恋愛を貫こうという強い意志がひしひしと伝わってくるのだと考えています。
この作品によって、太宰が作家、芸術家というものをどう捉えていたかが明らかになっているのは、興味深いことです。「この男(夫)の、芸術家の通弊として避けられぬ弱点、すなわち好奇心、言葉を換えて言えば、誰も知らぬものを知ろうという虚栄、その珍らしいものを見事に表現してやろうという功名心、そんなものが、この男を、ふらふら此の決闘の現場まで引きずり込んで来たものと思われます。どうしても一匹、死なない虫がある。自身、愛慾に狂乱していながら、その狂乱の様をさえ描写しようと努めているのが、これら芸術家の宿命であります。本能であります。・・・まことに芸術家の、表現に対する貪婪、虚栄、喝采への渇望は、始末に困って、あわれなものであります。今、この白樺の幹の蔭に、雀を狙う黒い猫みたいに全身緊張させて構えている男の心境も、所詮は、初老の甘ったるい割り切れない『恋情』と、身中の虫、芸術家としての『虚栄』との葛藤である、と私には考えられるのであります」。
芸術家・太宰の面目躍如の意欲的な取り組みと言えるでしょう。
オイレンベルクの原作は、自分の夫が付き合っている女学生に人妻が拳銃での決闘を申し入れ、女学生を殺してしまい、その後、人妻も絶食して死んでしまうという単純なストーリーなのだが、太宰は想像力を駆使して全く異なる作品に仕上げています。
原作では、人妻の胸中しか表現されていないのに、女学生の気持ち、夫の思いまで拡大解釈して描写されています。さらに、この夫は著名な作家であり、原作の作者自身の経験が下敷きになっているとまで想像を逞しくしているのです。
それぞれの心境が描かれることによって、確かに物語は膨らみを増しているが、文学作品として太宰の作品が原作を凌いでいるかは、別問題です。私は、原作のすっきりしたストーリー展開でも、いや、だからこそ、この人妻の恋愛を貫こうという強い意志がひしひしと伝わってくるのだと考えています。
この作品によって、太宰が作家、芸術家というものをどう捉えていたかが明らかになっているのは、興味深いことです。「この男(夫)の、芸術家の通弊として避けられぬ弱点、すなわち好奇心、言葉を換えて言えば、誰も知らぬものを知ろうという虚栄、その珍らしいものを見事に表現してやろうという功名心、そんなものが、この男を、ふらふら此の決闘の現場まで引きずり込んで来たものと思われます。どうしても一匹、死なない虫がある。自身、愛慾に狂乱していながら、その狂乱の様をさえ描写しようと努めているのが、これら芸術家の宿命であります。本能であります。・・・まことに芸術家の、表現に対する貪婪、虚栄、喝采への渇望は、始末に困って、あわれなものであります。今、この白樺の幹の蔭に、雀を狙う黒い猫みたいに全身緊張させて構えている男の心境も、所詮は、初老の甘ったるい割り切れない『恋情』と、身中の虫、芸術家としての『虚栄』との葛藤である、と私には考えられるのであります」。
芸術家・太宰の面目躍如の意欲的な取り組みと言えるでしょう。
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2017年11月3日に日本でレビュー済み
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太宰は、ワンセンテンスが長めで、平成の若者には、はまらないかもしれません。これを心理描写で補っていると思えば、にんまりと懐古的になれます。皆様のレビュー通りだと思います。短編は入門として味わいがあるので、おすすめしたいです。
2016年2月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何度も読み返した作品。この時代の作品群は太宰の才能を最も感じる。