今までに「明治維新」というと、坂本竜馬、西郷隆盛など、
武士階級の活躍が多く取り上げられてきていた。
「征韓論」、「日清戦争」、「日露戦争」でも、
軍人や元勲たちの活躍しか取り上げられなかった。
が、維新の旗印となり、軍の最高責任者となった天皇は、
このとき、どう振舞っていたのだろうか。
これに対する答えを述べている本は、驚くほど少ない。
そういう空白領域に思考を向けるための、貴重な本である。
本編は、いたって簡潔に記述されていく。
原因があり、結果がある。ただそれだけのシンプルな内容。
歴史的根拠のある資料を裏づけとし、考察は最低限。
学者である著者が、事実をありのままに紹介してくれている。
リファレンスの紹介も多く、後で調べながら精読するのにも助かる。
素人にとってわかりやすいよう、話を整理してくれている点も良い。
同時期に進んでいる、複数の重要な政治問題を章ごとにわけ、
読者の思考に負担をかけないようになっている。
時代背景説明も丁寧だ。第1巻序盤では生誕前にまで話をさかのぼったり、
第4巻の終わりには崩御後に起こった乃木の殉死にまで触れてくれる。
この時代を総括して知るために必要な材料は、
この本の出現で、総て揃ったのではないだろうか。
あとはこの本と、お手持ちの武士階級、軍人たちの活躍を描いた本を読みながら、
この時代に思いを馳せるだけでよい。
これまでは得られなかった時代像が思い描けるのは、間違いない。
ただしこの手の歴史にかかわる本は、著者の主観がどうしても入る。
よって自身で反芻した上で解釈をする必要がある。
この本も例外ではないということを付け加えておく。

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明治天皇(一) (新潮文庫) 文庫 – 2007/2/28
日本を勃興へと導いた指導者の実像とは?
人物評伝の偉業 全4巻。毎日出版文化賞受賞。
1852(嘉永5)年9月22日、京都御所を取り巻く御苑の北の端、
板塀で仕切られた屋敷内の質素な家で産声が上がった。
皇子祐宮、のちの明治天皇の誕生である。
厳しい攘夷主義者の父・孝明天皇の崩御により、皇子は14歳で第122代天皇に即位。
開国・維新の動乱に立ち向かうことになる。
極東の小国を勃興へと導き、欧米列強に比肩する近代国家に押し上げた果断な指導者の実像に迫る記念碑的大作。
詳細な注釈付き。全四巻。第一巻は誕生、践祚、そして明治改元を描く。
著者の言葉
私がこれから試みようとするのは、
何世紀にもわたって西洋との接触をほとんどすべて拒否してきた国に生まれながら、
その国が世界の列強の一つへと変貌を遂げていくばかりでなく
国際社会を形成する一国として成長していく姿を生涯を通じて見守ってきた一人の人物
――明治天皇を発見することである。
(「序章」より)
目次より
序章
第一章 孝明天皇
第二章 祐宮誕生
第三章 開国必至
第四章 タウンゼント・ハリス
第五章 不忠之輩
第六章 與仁、履仁、睦仁
第七章 皇女和宮
第八章 「征夷大将軍!」
第九章 蛤御門
第十章 天皇呪詛
第十一章 策士 岩倉具視
第十二章 才媛 美子皇后
第十三章 最後の将軍慶喜
第十四章 遁走将軍
第十五章 睦仁輦行
第十六章 初めての凱旋
第十七章 反乱の宮
第十八章 東の都
第十九章 剛毅木訥仁ニ近シ
ドナルド・キーン
1922(大正11)年、ニューヨーク生れ。コロンビア大学名誉教授。日本文学の研究、海外への紹介などの功績によって1962(昭和37)年、菊池寛賞、1983年、山片蟠桃賞、1990(平成2)年、全米文芸評論家賞、1993年、勲二等旭日重光章を受章。2002年、文化功労者に選ばれる。2008年、文化勲章を受章。『百代の過客』(読売文学賞、日本文学大賞)『日本人の美意識』『日本の作家』『日本文学の歴史(全18巻)』『明治天皇』(毎日出版文化賞)『渡辺崋山』など著書多数。
角地幸男
『明治天皇』(新潮文庫)、『日本人の戦争』(文春文庫)、『ドナルド・キーン自伝』(中公文庫)など、日本文学研究家ドナルド・キーン氏の著作の翻訳者。1948(昭和23)年、東京神田生。早大仏文卒。ジャパンタイムズ編集局勤務を経て、現在、城西短期大学准教授。『明治天皇』の訳業で毎日出版文化賞受賞。
人物評伝の偉業 全4巻。毎日出版文化賞受賞。
1852(嘉永5)年9月22日、京都御所を取り巻く御苑の北の端、
板塀で仕切られた屋敷内の質素な家で産声が上がった。
皇子祐宮、のちの明治天皇の誕生である。
厳しい攘夷主義者の父・孝明天皇の崩御により、皇子は14歳で第122代天皇に即位。
開国・維新の動乱に立ち向かうことになる。
極東の小国を勃興へと導き、欧米列強に比肩する近代国家に押し上げた果断な指導者の実像に迫る記念碑的大作。
詳細な注釈付き。全四巻。第一巻は誕生、践祚、そして明治改元を描く。
著者の言葉
私がこれから試みようとするのは、
何世紀にもわたって西洋との接触をほとんどすべて拒否してきた国に生まれながら、
その国が世界の列強の一つへと変貌を遂げていくばかりでなく
国際社会を形成する一国として成長していく姿を生涯を通じて見守ってきた一人の人物
――明治天皇を発見することである。
(「序章」より)
目次より
序章
第一章 孝明天皇
第二章 祐宮誕生
第三章 開国必至
第四章 タウンゼント・ハリス
第五章 不忠之輩
第六章 與仁、履仁、睦仁
第七章 皇女和宮
第八章 「征夷大将軍!」
第九章 蛤御門
第十章 天皇呪詛
第十一章 策士 岩倉具視
第十二章 才媛 美子皇后
第十三章 最後の将軍慶喜
第十四章 遁走将軍
第十五章 睦仁輦行
第十六章 初めての凱旋
第十七章 反乱の宮
第十八章 東の都
第十九章 剛毅木訥仁ニ近シ
ドナルド・キーン
1922(大正11)年、ニューヨーク生れ。コロンビア大学名誉教授。日本文学の研究、海外への紹介などの功績によって1962(昭和37)年、菊池寛賞、1983年、山片蟠桃賞、1990(平成2)年、全米文芸評論家賞、1993年、勲二等旭日重光章を受章。2002年、文化功労者に選ばれる。2008年、文化勲章を受章。『百代の過客』(読売文学賞、日本文学大賞)『日本人の美意識』『日本の作家』『日本文学の歴史(全18巻)』『明治天皇』(毎日出版文化賞)『渡辺崋山』など著書多数。
角地幸男
『明治天皇』(新潮文庫)、『日本人の戦争』(文春文庫)、『ドナルド・キーン自伝』(中公文庫)など、日本文学研究家ドナルド・キーン氏の著作の翻訳者。1948(昭和23)年、東京神田生。早大仏文卒。ジャパンタイムズ編集局勤務を経て、現在、城西短期大学准教授。『明治天皇』の訳業で毎日出版文化賞受賞。
- 本の長さ471ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2007/2/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101313512
- ISBN-13978-4101313511
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年4月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2021年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
明治天皇の生涯にスポットを当てた貴重な歴史書です。
1巻は孝明天皇の幕末期から明治天皇の即位の例までの話です。一般にあまり知られていないような幕末から維新の出来事も事細かに描かれています。
内容は重厚ですが、馴染みのある人物も多数登場するので飽きずに読めると思います。
1巻は孝明天皇の幕末期から明治天皇の即位の例までの話です。一般にあまり知られていないような幕末から維新の出来事も事細かに描かれています。
内容は重厚ですが、馴染みのある人物も多数登場するので飽きずに読めると思います。
2008年10月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、明治天皇から見た明治史を描いた作品です。しかし、第一巻の主人公はどちらかというと父・孝明天皇です。
司馬遼太郎などの作品に慣れ親しんできた自分としては、ひたすら淡々と客観的に進んでいく話には少し慣れるまで時間がかかりました。特に一文が長い。カギカッコがないので一ページを読むのにも普通の小説よりも時間が掛かる。幕末、明治維新に興味がないとかなりきついです。
初心者が読む本ではありません。初心者から次のステップに進みたい方、中級者向けの作品と言えるでしょう。
司馬遼太郎などの作品に慣れ親しんできた自分としては、ひたすら淡々と客観的に進んでいく話には少し慣れるまで時間がかかりました。特に一文が長い。カギカッコがないので一ページを読むのにも普通の小説よりも時間が掛かる。幕末、明治維新に興味がないとかなりきついです。
初心者が読む本ではありません。初心者から次のステップに進みたい方、中級者向けの作品と言えるでしょう。
2007年4月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
(1)どんな本か
「明治天皇」のタイトルであるが、まだこの第1巻あたりでは、幕末から維新の頃の記述が中心であり、幼少であった明治天皇の存在感は薄い。むしろ、父であり先代天皇である孝明天皇の記述の方が多い。
著者は、天皇だけでなく、将軍や幕府重臣、諸大名、公家など多くの人々をとりあげ、それぞれの人物が歴史に果たした役割を淡々と記述している。西郷や大久保、竜馬、勝などのヒーローを中心に書くわけでなく、明治天皇に加重にスポットをあてて書いているわけでもない。
特定のヒーローだけが歴史を動かしたかのような歴史書・小説とは一線を画しており、乱や戦いの記述も非常に抑制がきいた記述にとどめている。その結果、まるでトルストイの「戦争と平和」のように、多くの人物が大河のように歴史を形作っていくことを記述した本になっている。
(2)おもしろいか
はっきり言って、ヒーローが活躍するような本ではないので、少したいくつかも知れない。しかし、幕府がどのようにして崩壊に向かい、大政奉還までしなければならなかったのかがよくわかる。
また、古い伝統の中で外界と隔離されていた皇室が、急速に、為政者として、現実に対応しなければならない立場になっていったことを知ることができる。
(3)まとめて言えば・・・・
やや忍耐を要するが、読む価値のある本。多くの人々の行為や時代そのものの流れる力が、大河の奔流のように歴史を形作っていくことのおもしろさを感じ取れる。
また、天皇のようなテーマを選定すること自体、外国人の著者でなければできにくい要素もあると思われ、貴重な本といえる。
「明治天皇」のタイトルであるが、まだこの第1巻あたりでは、幕末から維新の頃の記述が中心であり、幼少であった明治天皇の存在感は薄い。むしろ、父であり先代天皇である孝明天皇の記述の方が多い。
著者は、天皇だけでなく、将軍や幕府重臣、諸大名、公家など多くの人々をとりあげ、それぞれの人物が歴史に果たした役割を淡々と記述している。西郷や大久保、竜馬、勝などのヒーローを中心に書くわけでなく、明治天皇に加重にスポットをあてて書いているわけでもない。
特定のヒーローだけが歴史を動かしたかのような歴史書・小説とは一線を画しており、乱や戦いの記述も非常に抑制がきいた記述にとどめている。その結果、まるでトルストイの「戦争と平和」のように、多くの人物が大河のように歴史を形作っていくことを記述した本になっている。
(2)おもしろいか
はっきり言って、ヒーローが活躍するような本ではないので、少したいくつかも知れない。しかし、幕府がどのようにして崩壊に向かい、大政奉還までしなければならなかったのかがよくわかる。
また、古い伝統の中で外界と隔離されていた皇室が、急速に、為政者として、現実に対応しなければならない立場になっていったことを知ることができる。
(3)まとめて言えば・・・・
やや忍耐を要するが、読む価値のある本。多くの人々の行為や時代そのものの流れる力が、大河の奔流のように歴史を形作っていくことのおもしろさを感じ取れる。
また、天皇のようなテーマを選定すること自体、外国人の著者でなければできにくい要素もあると思われ、貴重な本といえる。