この本は、2001年出版のため、最近の中東情勢については触れられていませんが、「千一夜物語」のようにワクワクしながら最後まで読み通すことができました。有名なソロモン王とシバの女王の時代から香料は大切な貿易商品だったこと、ペルシャ帝国とローマ帝国との中間に位置して、東西交易の要衝であったパルミラ帝国の女王ゼノビアは、一時は「ローマ入城」を夢見て破れたこと…。
1 この本で興味深いのは、なんといってもアラブ=イスラム勢力の急速な勃興です。著者はその理由として、①ビザンツ帝国及びササン朝ペルシャ帝国が死闘を繰り返して共倒れ寸前だったこと。②メソポタミア、シリアの住民たちはアラブ軍の進出を同族セム人の到来、解放者の出現と見て歓迎したこと。③ムハンマドの後継者として良き政治家、武人を得たことを述べています。
また、アッバース朝時代には「バグダード・ルネサンス」とも呼びうる「文明の移転」が起こったとのこと。ギリシャ、ヘレニズム、インド、ペルシャの文献がアラビア語に翻訳されて、さらに融合発展してイスラーム文明となった。これらの文献は、後にスペイン及びシチリアでキリスト教徒によりラテン語に翻訳されて、ヨーロッパにおけるルネサンスを花開かせたとのことです!
2 いわゆる十字軍をムスリム側はどうとらえていたか?両者の知的・物質的水準からみて、まさしく「蛮族の侵入」でした。風雲児バイバルスが、当時無敵を誇ったモンゴル軍を撃退し、ついに十字軍諸国を追い払う場面は手に汗握る面白さです。
3 さしもの繁栄を誇ったアラブ世界も中世から近世へと時代が移り変わると、ポルトガルがインド洋に進出。エジプト、ヴェネツィア両国によるスパイス貿易の打破を狙い、インドのコチン、アデン、ホルムズを奪い紅海とペルシャ湾の入り口をふさいだ。そのため、アレクサンドリア及びベイルートに届くスパイスの量は激減、ほとんど無に帰してしまった。そのため、エジプトは経済的打撃から回復できないままオスマン・トルコに滅ぼされてしまう。スパイス貿易がいかに大きなものだったのか理解できました。
なお、余談ながら海洋帝国として16世紀に雄飛したスペインは、イベリア半島最後のムスリム王国グラナダを陥落させてから300万人ものムスリムを追放、処刑したという。当時のスペインの全人口900万人のなんと3分の1の規模だ…。これが、国内産業の崩壊を招き、イギリス、オランダの重商主義国に追い抜かれる原因となったとのこと。
4 最後にスエズ運河の章で幕を閉じているが、運河の原型は約4000年前の古代エジプトに存在した、との話が興味深かった。この本の著者が逝去された後、新スエズ運河は、2015年に完成したが、これがエジプト経済のみならず世界経済に今後どう影響していくのだろうか?「イラク戦争」「アラブの春」後の混乱が続く中東世界は、いまや欧米諸国と緊密に結びついており、毎日の新聞で記事がでない日はない。この本を読むことにより、現在の中東情勢を知る手助けになると信じています。
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物語中東の歴史: オリエント五〇〇〇年の光芒 (中公新書 1594) 新書 – 2001/6/1
牟田口 義郎
(著)
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- 本の長さ294ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2001/6/1
- ISBN-104121015940
- ISBN-13978-4121015945
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- 出版社 : 中央公論新社 (2001/6/1)
- 発売日 : 2001/6/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 294ページ
- ISBN-10 : 4121015940
- ISBN-13 : 978-4121015945
- Amazon 売れ筋ランキング: - 124,984位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 602位中公新書
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2019年8月12日に日本でレビュー済み
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2024年2月23日に日本でレビュー済み
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教科書ではなく、かといってフィクションでもない、まさに「物語」です。
歴史を知りたい、だけど山川のような本は読む気がしないという者にとっては「物語」であるだけに最適だと思います。
内容も興味津々の箇所が随所にあります。
評価として5にしなかったのは私にとってはかなり疲れる本だからです。
いちいち挙げているときりがないので一箇所だけ例を挙げておきます。
それは「第2話 女王の都パルミラ」の中にある53ページの終わり付近から始まる一節、
<ユダヤ人の伝説と廃墟の壮大な規模は、後世のアラブ人の作家たちの想像力をもかき立てた。ダビデとその子ソロモンは彼らに親しまれている預言者だから、パルミラは「ソロモンがジン(精霊)に命じて一夜でつくらせた都の跡」ということになってしまう。そしてソロモンと、彼の妻になったシバの女王ビルキスは、一時期をこの都ですごしたという話も生まれる。>という件です。
このくだりは一見して読み飛ばしてしまいそうな箇所ですが疑問が次々の浮かびます。
先ず「彼らに親しまれている」の「彼ら」とは?ユダヤ人?それとも「アラブ人の作家たち」?という疑問です。ユダヤ人にとってはダビデやソロモンは預言者ではないし「親しまれている」という表現はふさわしくない。むしろ「アラブ人の作家たち」に親しまれている、ということなら理解もできる。しかし続く段落からはユダヤ人かも知れないとも考えられ、またユダヤ人は律法で純血が厳しく求められており(実際には完全には守られなかったが)シバの女王との伝説はユダヤ人の伝説なのかそれともアラブ人の間での伝説なのかについても疑問が起こるのですがその辺りははっきりとは書かれていません。ユダヤ教徒がソロモンと異邦人の関係を伝説として語り継ぐものだろうか?それともアラブ人の間で受け継がれるようになった伝説なのだろうか?解りにくいです。
このほか読んでいて疲れる場所があります。解りにくいところがなければ5だったのですが4にしました。
歴史を知りたい、だけど山川のような本は読む気がしないという者にとっては「物語」であるだけに最適だと思います。
内容も興味津々の箇所が随所にあります。
評価として5にしなかったのは私にとってはかなり疲れる本だからです。
いちいち挙げているときりがないので一箇所だけ例を挙げておきます。
それは「第2話 女王の都パルミラ」の中にある53ページの終わり付近から始まる一節、
<ユダヤ人の伝説と廃墟の壮大な規模は、後世のアラブ人の作家たちの想像力をもかき立てた。ダビデとその子ソロモンは彼らに親しまれている預言者だから、パルミラは「ソロモンがジン(精霊)に命じて一夜でつくらせた都の跡」ということになってしまう。そしてソロモンと、彼の妻になったシバの女王ビルキスは、一時期をこの都ですごしたという話も生まれる。>という件です。
このくだりは一見して読み飛ばしてしまいそうな箇所ですが疑問が次々の浮かびます。
先ず「彼らに親しまれている」の「彼ら」とは?ユダヤ人?それとも「アラブ人の作家たち」?という疑問です。ユダヤ人にとってはダビデやソロモンは預言者ではないし「親しまれている」という表現はふさわしくない。むしろ「アラブ人の作家たち」に親しまれている、ということなら理解もできる。しかし続く段落からはユダヤ人かも知れないとも考えられ、またユダヤ人は律法で純血が厳しく求められており(実際には完全には守られなかったが)シバの女王との伝説はユダヤ人の伝説なのかそれともアラブ人の間での伝説なのかについても疑問が起こるのですがその辺りははっきりとは書かれていません。ユダヤ教徒がソロモンと異邦人の関係を伝説として語り継ぐものだろうか?それともアラブ人の間で受け継がれるようになった伝説なのだろうか?解りにくいです。
このほか読んでいて疲れる場所があります。解りにくいところがなければ5だったのですが4にしました。
2021年12月27日に日本でレビュー済み
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普段身近でない中東について、古代文明の変遷とともに分かりやすく解説されています。本当に物語を読んでいる感じがします。
2023年5月24日に日本でレビュー済み
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文章が拙いため、とてもわかりにくく読みにくい。
2011年5月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
非常に優れた書籍だと思うが、読み方には工夫がいる。
1)取り扱っている時代は、紀元前550年のアケメネス朝ペルシアの時代から、1980年代の「第二スエズ運河構想」まで、非常に幅広い。勢い濃淡がある。従って、通史についてある程度知識がないと、なかなか追いついていけないと思う。
別の本で通史を一回頭に入れてから読むことをお勧めしたい。そうすると、この書籍は、実に面白い視点を我々に示唆してくれる。
2)本書で特に力を入れて記述されているのは、6世紀のイスラム教の成立、それに続く爆発的なイスラム世界の拡大、そのイスラム世界が初期の精神を失い分裂した頃に始まった十字軍(第一回十字軍は1096年)、その十字軍にイスラム世界がいかに対抗したか、同時に行ったモンゴルの侵入の阻止、十字軍勢力の一掃(1291年)とモンゴル侵入阻止を成功させた後の、「オスマン・トルコ対西ヨーロッパ」という国際政治の舞台の確立と、ヨーロッパ人による大航海時代への突入(コロンブスのアメリカ大陸発見は1492年)までである。
この間のイスラム世界の拡大、性格の変貌は、その背景を含め、実によく書かれている。
「サラデイン」「バイバルス」といった英雄たちの実像も、実に生き生きと描かれており、小説を読むようにワクワクさせられる。
3)イスラムの側から見た「十字軍の時代」
特に、十字軍の時代をイスラムの側から捉えなおした部分は、通常の十字軍の歴史が西洋側から語られることが多い中、非常に新鮮。
4)イスラム世界の拡大と性格の変貌
類書ではなかなか納得いく解答がえられない、何故、イスラム世界は、成立直後からあのように爆発的に拡大したのか、という問いに、本書は、比較的よく答えてくれている。「正統カリフの時代」「ウマイヤ朝」「アッバス朝」「セルジューク朝」の性格の色分けも非常に分かりやすい。
5)結論
繰り返しになるが、一回通史を頭に入れて読むと、この本は実に面白く、今まで断片的であったイスラム世界の成立、拡大、変貌が非常によく理解できる。トライされることをお勧めする。
1)取り扱っている時代は、紀元前550年のアケメネス朝ペルシアの時代から、1980年代の「第二スエズ運河構想」まで、非常に幅広い。勢い濃淡がある。従って、通史についてある程度知識がないと、なかなか追いついていけないと思う。
別の本で通史を一回頭に入れてから読むことをお勧めしたい。そうすると、この書籍は、実に面白い視点を我々に示唆してくれる。
2)本書で特に力を入れて記述されているのは、6世紀のイスラム教の成立、それに続く爆発的なイスラム世界の拡大、そのイスラム世界が初期の精神を失い分裂した頃に始まった十字軍(第一回十字軍は1096年)、その十字軍にイスラム世界がいかに対抗したか、同時に行ったモンゴルの侵入の阻止、十字軍勢力の一掃(1291年)とモンゴル侵入阻止を成功させた後の、「オスマン・トルコ対西ヨーロッパ」という国際政治の舞台の確立と、ヨーロッパ人による大航海時代への突入(コロンブスのアメリカ大陸発見は1492年)までである。
この間のイスラム世界の拡大、性格の変貌は、その背景を含め、実によく書かれている。
「サラデイン」「バイバルス」といった英雄たちの実像も、実に生き生きと描かれており、小説を読むようにワクワクさせられる。
3)イスラムの側から見た「十字軍の時代」
特に、十字軍の時代をイスラムの側から捉えなおした部分は、通常の十字軍の歴史が西洋側から語られることが多い中、非常に新鮮。
4)イスラム世界の拡大と性格の変貌
類書ではなかなか納得いく解答がえられない、何故、イスラム世界は、成立直後からあのように爆発的に拡大したのか、という問いに、本書は、比較的よく答えてくれている。「正統カリフの時代」「ウマイヤ朝」「アッバス朝」「セルジューク朝」の性格の色分けも非常に分かりやすい。
5)結論
繰り返しになるが、一回通史を頭に入れて読むと、この本は実に面白く、今まで断片的であったイスラム世界の成立、拡大、変貌が非常によく理解できる。トライされることをお勧めする。
2015年5月25日に日本でレビュー済み
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突発的な物事だけではを野存在自体を知ることは難しいと思います。流れの中でこそ出来事です。
2019年11月15日に日本でレビュー済み
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古代の歴史が殆ど全くない。
2015年1月19日に日本でレビュー済み
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注文通りで問題ありませんでした。固有名詞が多くて読みづらい本ではありましたが。