"はじめに"で、既刊の「シリコンバレーから将棋を観る」及び「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?」を合体して文庫化したとの自己紹介(?)があるが、それを遥かに超えた豊穣な内容を含んだ快著。「知のオープン化」と「勝つ事(差別化)」を両立させているビジョナリー羽生を中心とした現代棋士(将棋界)の姿が活写されている。著者の立場から、所謂オープン・ソフトウェアとITの進歩とを羽生の姿勢に重ね合わせている様に思えた。「量が質に転化する」瞬間がある筈で、その時に重要なのは"創造力"という言葉が印象的で、将棋にもITにも、そして一般のビジネスにも通用する原理であろう。
本書には、羽生が「変わりゆく現代将棋」を執筆した理由(相当の加筆)、佐藤、深浦及び渡辺とのタイトル戦の臨場感溢れる観戦記(再録中心)、羽生と著者との対談(再録)等が収められている。この中で、佐藤との対局のリアルタイム観戦記の後にある、「将棋を観る楽しみ(大幅な加筆)」が本書の意匠を明確に表していて、非常に印象深い。将棋が強くなくても、「将棋を観て楽しむ人」は多い筈だし、そうした人を更に増やす事によって将棋の裾野が広がり、より多くの人が将棋の魅力を味わえる。著者はその先達として活動したいとの趣旨が良く伝わって来た。まさしくその先達である故金子金五郎を紹介している点も(再録とは言え)貴重である。
佐藤、深浦及び渡辺(特に世代的に特異な立場にある渡辺)の個性の捉え方も的確で、逆に彼らの羽生に対する想いも丹念に綴られている。また、木村、山崎、三浦についても言及されているが、ここは再録(ただし、早く投げた山崎を勝った羽生が叱ったというエピソードはやはり面白い)。全体として、「将棋の魅力=将棋の奥深さ+人間の可能性」という図式が自然と刷り込まれた。著者が"dog year"と例える急激な進化を遂げ続ける現代将棋を"楽しむ"ための道標として格好の書と言えるのではないか。
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羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくる (中公文庫 う 32-1) 文庫 – 2013/2/23
梅田 望夫
(著)
なぜ彼は四十代でもなお最強棋士でいられるのか。ルールを知らずとも将棋に惹かれる全ての人に贈る、渾身の羽生善治論。羽生三冠との最新対談収録!
- 本の長さ450ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2013/2/23
- 寸法10.8 x 2 x 15.2 cm
- ISBN-104122057590
- ISBN-13978-4122057593
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2013/2/23)
- 発売日 : 2013/2/23
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 450ページ
- ISBN-10 : 4122057590
- ISBN-13 : 978-4122057593
- 寸法 : 10.8 x 2 x 15.2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 953,786位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,692位中公文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年2月28日に日本でレビュー済み
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2016年7月20日に日本でレビュー済み
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内容はとても面白く、将棋を指さない自分でも急かされるように先を読みました。
ただ…羽生善治という棋士を語るときに、「森内俊之」という棋士は他のどの棋士よりも重要と思うのです(個人的な見解です)が、関連の文章が、というか「森内」という名前が全く出てこないことに違和感がありました。ので☆ひとつマイナスです。大人の事情があったのかなぁ…。
ただ…羽生善治という棋士を語るときに、「森内俊之」という棋士は他のどの棋士よりも重要と思うのです(個人的な見解です)が、関連の文章が、というか「森内」という名前が全く出てこないことに違和感がありました。ので☆ひとつマイナスです。大人の事情があったのかなぁ…。
2014年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
KINDLE版で読んでます。ぴったりです。内容も充実。
こうした企画を是非。KINDLE版として、観戦記に加筆して
どんどん出してくれないかな。単行本だと難しいところも、
KINDLE版なら安く出せるのでは。
各タイトル戦はすべてこうした形で出版できないかなあ。
新聞に掲載されて原稿はあるのですから、それに存分加筆して
出版を。また、タイトル対戦者の戦後記もあればと。
こうした企画を是非。KINDLE版として、観戦記に加筆して
どんどん出してくれないかな。単行本だと難しいところも、
KINDLE版なら安く出せるのでは。
各タイトル戦はすべてこうした形で出版できないかなあ。
新聞に掲載されて原稿はあるのですから、それに存分加筆して
出版を。また、タイトル対戦者の戦後記もあればと。
2013年5月3日に日本でレビュー済み
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梅田氏は棋士という職業人、特にその先頭を走る羽生氏その他のトッププロの哲学、将棋という奥深いゲームに取り組む現代の棋士のアプローチに他分野に共通する時代性を見いだし、一つの解釈を与えようとしている。棋士は人間対人間の人格を掛け合う勝負師から、2人ゼロ和完全情報ゲームの解を求める数理科学者に変貌しつつあるのか。この対極にある、川口老師の将棋観、棋士観と対照して読まれるのも面白いと思う。
2014年11月11日に日本でレビュー済み
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何度も読み返していますが、読みやすい文章で、棋士の方々がすごく身近に感じられます。
こんな本をもっと読みたいです。
こんな本をもっと読みたいです。
2016年4月8日に日本でレビュー済み
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アマゾンは便利です。時間のある休日に、この本を熟読しました。素晴らしいの一語
2013年2月26日に日本でレビュー済み
この本は、既刊2冊の加筆修正に著者と羽生の対談を新たに加えたものであるが、改めて読んでみると現代将棋というものの性格が
明瞭に浮かび上がってくる。
羽生に羽生流と名付けられた戦法はない。それは、新戦法の開発でなく現代将棋の全体に関わっていこうとしたからである。
そして、「70代でなお現役」という未来をイメージする羽生は、現代将棋の進化に寄り添っていく覚悟である。
現代将棋は、進化が速く高速道路理論からバサロ泳法、研究のコモデティ化まで至ってしまった。
しかし、研究をいくら徹底的にやっても「本質的理解」に辿りつけるわけではない。現時点では、「その方向性が正しいか、どうしたものか」というところである。
アイディア、技術といったものは素材に過ぎない。それ自体に価値はない。調理して始めて価値が生まれる。
棋士は、皆研究時間が足りなくなっている。特に、四段クラスの若手の研究は凄まじく目が離せなくなっている。勝負師、芸術家という側面より研究家という面が際立ってきている。
そしてこの、「言葉だけの研究」は実戦で考えることとは明らかに異なり中途半端な研究なら、しない方がいい。
「負ける」という恐怖がある対局時と気楽な観戦時では、考える手や感じ方が全然違ってくるので仮に実戦より優る手が見えたところで、あまり意味を持たない。という渡辺明の言葉がある。
羽生は、第57期王座戦第二局、山崎の突然の投了を、「この将棋は、難解なまままだまだ続くはずであった。そして、形勢は自分の方が少し悪かった」という意味のことをかなり強い口調で指摘した。勝利を喜ぶでなく怒っているようだった。
行方の言葉がある。「大山は人と戦っていたけれど、羽生は将棋そのものと戦っている。難しくなることを厭わず、より複雑な局面になることを喜ぶ」。これが、羽生という棋士の哲学である。
渡辺について羽生は、渡辺は普通に強い。非常な僅差であるが見切りの良さ、攻守のバランスの良さ、手の見え方、内心の綾などの際どさの中で、こっちにズレあっちにズレたりしていると思う。普通に強いということは、たくさん対戦しなければ分らない。
そして、現代将棋の行き着く先は、まだわからない。全体の大きな流れは中々変えられないが一方で、本当にそれでいいのかとも感じている。現在は、そういう場面なのかと思っている。
最近の渡辺戦では、異なるステージへ抜け出たような印象があるがとの問いに、これから先も一局一局大変なんだろうという感覚は大いに持っているという答えである。
「現代将棋は少しも進歩なんかしていません、知識が増えているだけです」という郷田真隆の言葉もある。
現代将棋の内在的論理と相俟って魅力ある棋士たちが活写されている。羽生とも良くかみ合っている。
将棋への愛情に溢れていて気持ちのいい仕上がりとなっている。
明瞭に浮かび上がってくる。
羽生に羽生流と名付けられた戦法はない。それは、新戦法の開発でなく現代将棋の全体に関わっていこうとしたからである。
そして、「70代でなお現役」という未来をイメージする羽生は、現代将棋の進化に寄り添っていく覚悟である。
現代将棋は、進化が速く高速道路理論からバサロ泳法、研究のコモデティ化まで至ってしまった。
しかし、研究をいくら徹底的にやっても「本質的理解」に辿りつけるわけではない。現時点では、「その方向性が正しいか、どうしたものか」というところである。
アイディア、技術といったものは素材に過ぎない。それ自体に価値はない。調理して始めて価値が生まれる。
棋士は、皆研究時間が足りなくなっている。特に、四段クラスの若手の研究は凄まじく目が離せなくなっている。勝負師、芸術家という側面より研究家という面が際立ってきている。
そしてこの、「言葉だけの研究」は実戦で考えることとは明らかに異なり中途半端な研究なら、しない方がいい。
「負ける」という恐怖がある対局時と気楽な観戦時では、考える手や感じ方が全然違ってくるので仮に実戦より優る手が見えたところで、あまり意味を持たない。という渡辺明の言葉がある。
羽生は、第57期王座戦第二局、山崎の突然の投了を、「この将棋は、難解なまままだまだ続くはずであった。そして、形勢は自分の方が少し悪かった」という意味のことをかなり強い口調で指摘した。勝利を喜ぶでなく怒っているようだった。
行方の言葉がある。「大山は人と戦っていたけれど、羽生は将棋そのものと戦っている。難しくなることを厭わず、より複雑な局面になることを喜ぶ」。これが、羽生という棋士の哲学である。
渡辺について羽生は、渡辺は普通に強い。非常な僅差であるが見切りの良さ、攻守のバランスの良さ、手の見え方、内心の綾などの際どさの中で、こっちにズレあっちにズレたりしていると思う。普通に強いということは、たくさん対戦しなければ分らない。
そして、現代将棋の行き着く先は、まだわからない。全体の大きな流れは中々変えられないが一方で、本当にそれでいいのかとも感じている。現在は、そういう場面なのかと思っている。
最近の渡辺戦では、異なるステージへ抜け出たような印象があるがとの問いに、これから先も一局一局大変なんだろうという感覚は大いに持っているという答えである。
「現代将棋は少しも進歩なんかしていません、知識が増えているだけです」という郷田真隆の言葉もある。
現代将棋の内在的論理と相俟って魅力ある棋士たちが活写されている。羽生とも良くかみ合っている。
将棋への愛情に溢れていて気持ちのいい仕上がりとなっている。
2013年11月5日に日本でレビュー済み
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シリコンバレーが書いた本。
この人は、本書の至る所で、偉そうにシリコンバレーやそこで仕事をする人たちについて語っているが、シリコンバレーでいったい何をしている人なのだろうか。
先端技術の開発でもしている特別な成功者なのだろうか。
経歴からは、ただの小っちゃい自営会社のコンサルタント(虚業)のようなのだが。
シリコンバレーには、各国のナンバー1の学生が集まるだとか、渡辺明をそこの理系の学生になぞらえたり、将棋ファンにとって、不愉快極まりない文章が多く、途中で、本書を破り捨てたくなった。彼の人生観によれば、成功のためのチャンスは人生に1度くるかこないからしく、渡辺明は見事それをつかんだ成功者だそうだ。
所々に巧妙に挿入してある著者の自慢話にも辟易する。
一流棋士との交流や彼のスピーチの話などは、もっと他の書き方があると思う。
将棋界の人も、このような人間と交流するのはやめてもらいたい。
ウェブ観戦記だって、たいしたものが書けているとは到底思えない。
とにかく本書は、彼の人間性が垣間見える本となっている。
この人は、本書の至る所で、偉そうにシリコンバレーやそこで仕事をする人たちについて語っているが、シリコンバレーでいったい何をしている人なのだろうか。
先端技術の開発でもしている特別な成功者なのだろうか。
経歴からは、ただの小っちゃい自営会社のコンサルタント(虚業)のようなのだが。
シリコンバレーには、各国のナンバー1の学生が集まるだとか、渡辺明をそこの理系の学生になぞらえたり、将棋ファンにとって、不愉快極まりない文章が多く、途中で、本書を破り捨てたくなった。彼の人生観によれば、成功のためのチャンスは人生に1度くるかこないからしく、渡辺明は見事それをつかんだ成功者だそうだ。
所々に巧妙に挿入してある著者の自慢話にも辟易する。
一流棋士との交流や彼のスピーチの話などは、もっと他の書き方があると思う。
将棋界の人も、このような人間と交流するのはやめてもらいたい。
ウェブ観戦記だって、たいしたものが書けているとは到底思えない。
とにかく本書は、彼の人間性が垣間見える本となっている。