文春新書377「竹島は日韓どちらのものか」は、日韓問題、なかでも竹島の帰属に絞ってその問題点を整理し、簡潔に記述した入門書で、この問題の概略を知る上で好適である。
難点は簡潔であるゆえに、注意して読み進む必要のあることだ。
特に「竹島」の名称は、複数の島に使用され、問題の島である「竹島」の名称も歴史的に異なっているため、注意しないと混乱する恐れがある。実は、今日の竹島問題を引き起こした最大の原因は、「竹島」が複数の島を指すことであり、しかもこのことを恣意的に利用すれば、都合のよい結論を導くことができるのであるが、本書ではその手法についても明らかにしている。
また、韓国側が竹島の自国帰属の根拠としている史料に内在する矛盾点を指摘している部分では、古文書の名称が似通って紛らわしいため、さらにじっくりと読み込む必要がある。
このような簡潔な記述のなかで、竹島の韓国帰属の確立に活躍したとされる安龍福(アンヨンボク)については、史料を引用しつつ、客観的に人物像を浮き彫りにしているが、これこそ著者がこの本でもっとも伝えたかったことではないだろうか。数百年前の安龍福の安易な言動が、今日の国際問題を引き起こす重要な要素となっていることに、改めて驚かされる。これに日本側の対応の不備が加わり、竹島問題は解決のメドさえつかない状況が続いている。
このように竹島問題を考える上で示唆に富む本書であるが、竹島問題ばかりではなく、朝鮮半島全般、さらに東アジアに潜在するといわれる日本への誤解の根源がどこにあるのかを探る上でも、非常に重要なヒントを提示しているように思われる。
その意味から、本書は数年前に出版されているにもかかわらず、決して内容的に過去のものではなく、むしろ今日的であり、これからも機会あるごとに広く読まれるべき書籍であろう。以上
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竹島は日韓どちらのものか 新書 – 2004/4/21
下條 正男
(著)
- 本の長さ188ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2004/4/21
- ISBN-104166603779
- ISBN-13978-4166603770
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2004/4/21)
- 発売日 : 2004/4/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 188ページ
- ISBN-10 : 4166603779
- ISBN-13 : 978-4166603770
- Amazon 売れ筋ランキング: - 938,049位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 242位アジア・アフリカのエリアスタディ
- - 1,507位文春新書
- - 3,454位アジア史
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年10月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年6月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
近現代の国際法的な視点ではなく、歴史書や古い地図などをベースにした追跡や、各時代の両国の認識の変遷などを負う場合は、この本があるととても便利です。古書の漢字原文はないものの、どの書物から引用されたのか出典は追えるようになっています。ただ戦後のGHQやアメリカが絡む処理については、サンフランシスコ条約の英文の草案をあたっておらず、他著の引用に終わっており、戦後部分の時系列にそった竹島の扱いの変化の様子の描写もあまり細かくありません。ですので逆に、安龍福が問題を引き起こす前後の時代から1905年までの経緯を追う目的なら、この本はおすすめです。
2006年6月4日に日本でレビュー済み
最近の教科書でも「韓国の不法占拠」と書かれるようになった竹島。
日韓関係の最大の問題である竹島はどちらの国が領有すべきか。
主に歴史的な領有関係を中心に論を進めた書である。
竹島は飲み水も確保できない絶海の無人島である。
そんな島なので近代になるまで日本・韓国のどちらも関心が殆どなかったのは当然といえば当然である。
まず複雑なのは島の名称。時代によって「于山島」「松島」「竹島」それぞれの名称と島の対応が錯綜する。史料を読むにもどの名称がどの島を指しているか慎重に読まなければならない。そこに鬱陵島やその附属する岩礁、架空の島が出てきてかなり難しい。
さらに近代になると日韓の政治的な問題も絡んでくる。
1905年の日本の島根県編入宣言。1952年の李承晩ライン。
無人島であっただけに、近代以前の所属関係を明確にすることは難しいであろう。
だが、実際に竹島問題を複雑にしているのは歴史的な問題でなく、政治的な問題、さらにいえば感情の領域の問題である。
韓国の主張には根拠がない。
日本は韓国に無関心である。
この両国の姿勢が問題であると著者は主張している。
私も基本的に賛成である。歴史的に根拠があれば領有を認めるというわけではないが、韓国の主張はあまりにも我田引水である。
日本政府も最近は竹島問題を国民にアピールするようになってきたが、それまでは問題が存在しないかのように振る舞ってきた。
日本に北方領土を除けば領土問題はないといわれてきた。
それは極力隠されてきただけであり、竹島問題・尖閣諸島問題とシーレーンや資源開発と関連して近年注目を集めるようになった。
感情的にならず、しっかりとした議論が進められることを期待している。
日韓関係の最大の問題である竹島はどちらの国が領有すべきか。
主に歴史的な領有関係を中心に論を進めた書である。
竹島は飲み水も確保できない絶海の無人島である。
そんな島なので近代になるまで日本・韓国のどちらも関心が殆どなかったのは当然といえば当然である。
まず複雑なのは島の名称。時代によって「于山島」「松島」「竹島」それぞれの名称と島の対応が錯綜する。史料を読むにもどの名称がどの島を指しているか慎重に読まなければならない。そこに鬱陵島やその附属する岩礁、架空の島が出てきてかなり難しい。
さらに近代になると日韓の政治的な問題も絡んでくる。
1905年の日本の島根県編入宣言。1952年の李承晩ライン。
無人島であっただけに、近代以前の所属関係を明確にすることは難しいであろう。
だが、実際に竹島問題を複雑にしているのは歴史的な問題でなく、政治的な問題、さらにいえば感情の領域の問題である。
韓国の主張には根拠がない。
日本は韓国に無関心である。
この両国の姿勢が問題であると著者は主張している。
私も基本的に賛成である。歴史的に根拠があれば領有を認めるというわけではないが、韓国の主張はあまりにも我田引水である。
日本政府も最近は竹島問題を国民にアピールするようになってきたが、それまでは問題が存在しないかのように振る舞ってきた。
日本に北方領土を除けば領土問題はないといわれてきた。
それは極力隠されてきただけであり、竹島問題・尖閣諸島問題とシーレーンや資源開発と関連して近年注目を集めるようになった。
感情的にならず、しっかりとした議論が進められることを期待している。
2012年10月3日に日本でレビュー済み
私はここに書かれていることの正誤を論じる能力を持っていませんが、内藤氏、東郷氏らの著作と合わせて読むと、やはり1905年の日本への(島根県へのではなく)編入と、それを中央の官報に載せなかったこと、内務省はその併合に反対していたこと、またただちに日本海海戦に備えて軍事施設を竹島に建設したことなどが、問題の焦点かと思います。明治初期に島根県の照会に答えて、明治政府が2年間の調査の末に竹島は日本領ではない、と結論を出したという主張にもきちんと反論していません。島の名前に色々あったので間違えたという反論は、間違えるような島を領有していたといえるのかと反論されそう。サンフランシスコ条約では第5次草案までは竹島は韓国領であり、次に日本領と書かれましたが、最終的には竹島の文字は削除されており、日韓双方とも、竹島の領有の主張は認められなかったように思えます。ラスク書簡なども、当時のアメリカの見解を示していますが、ブッシュ大統領の肝いりで地名委員会が独島を韓国領に含めてしまったことからも分かるように、米国は多分にご都合主義的なところがあります。李承晩ラインも、それ以前のマッカーサーラインで竹島を韓国サイドに含めていたことの踏襲とも言えます。総じて、こうした微妙な問題の機微にしっかりと触れていないところに不満があります。伝統的なアジア外交で領有権の合意が成立していたところに、近代国際法の無住先占の理念を急に持ち出して登記したという、法的慣習の断絶に生じた問題。韓国側からすればそこに日本がつけ込んで植民地化に踏み出した、ということでしょう。竹島を日本領土だと思って気勢を上げたい人には向いている本。韓国を説き伏せるための論拠にするには弱い本と思います。
2006年7月22日に日本でレビュー済み
いま話題の竹島。日韓がその領有を巡って争っている。韓国側は軍を動員して、領有権を誇示しているのに対し、日本は事務レベルで対応している。本書はこの竹島を巡る江戸期からの外交史を古文書をもとに解説している。読み進むうちに日本は250年余前から如何に外交がへたくそであったかがよくわかった。当時の幕府は竹島が日本の領土であろうがなかろうがどうでもよかったわけで、竹島の領有は鳥取藩の問題だった。そんな状況下に付けこまれて、朝鮮側にあっさりと領土宣言されてしまう。これは現代の状況とそっくりではないか!すでに日本は負けているのである。竹島を日本の領土と言うならば、侵犯された時点で自衛隊を派遣、取り返すべきではなかったか?弱腰外交の熟れの果てと思う。本書は竹島について学ぶには良い1冊である。しかし、歴史の羅列と文献比較に終始しており、タイトルについての著者の結論が見えない点が惜しい。
2005年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
竹島問題は、なかなかややこしい問題です。関係する島々の名称は、日韓双方で呼び名が異なりますし、また時代とともに度々入れ替わったり変化しています。これを頭に入れるだけでも一苦労ですが、さらに朝鮮時代から継続して行われてきた偽証、資料の意図的な読み違え、不利な資料の無視・読み落とし、資料や証言の改ざん、論点のすり替えなどについても知っておかなければ、韓国側の主張にきちんと反証することはできません。
ただでさえ入り組んだ問題を扱っているのですから、文中に登場する人名、地名、古文書名、役職名などには、フリガナを徹底して欲しいものです。「金ナントカという人が東ナントカという古文書の中で言っているナントカは実はナントカ島のことだ」では、頭への入り方・残り方が違います。
この点に不満がありますが、竹島問題を考え始める最初の一冊としてはよい入門書だと思います。このような手軽な入門書がもっと増え、質も高まっていってほしいものです。
複雑に見えがちな竹島問題ですが、日本が竹島を自国領と見なしていた最古の古文書と日本の実効支配の歴史を軸にして整理すれば、意外に単純に日本の領有権に分があると言えることが、この本を通じて学べました。結局竹島問題とは、韓国人の歴史認識、反日感情の問題であり、韓国国民の対日認識が変わらない限り、竹島問題も永久に解決しない。これが、本書読了後に得た結論です。
本書で論じられている古文書や古地図を自分自身で確認したわけではないこと、この本がもちろん日本側の立場で書かれていることなども念頭に置きつつ、批判的な視点を忘れずに読んでください。
ただでさえ入り組んだ問題を扱っているのですから、文中に登場する人名、地名、古文書名、役職名などには、フリガナを徹底して欲しいものです。「金ナントカという人が東ナントカという古文書の中で言っているナントカは実はナントカ島のことだ」では、頭への入り方・残り方が違います。
この点に不満がありますが、竹島問題を考え始める最初の一冊としてはよい入門書だと思います。このような手軽な入門書がもっと増え、質も高まっていってほしいものです。
複雑に見えがちな竹島問題ですが、日本が竹島を自国領と見なしていた最古の古文書と日本の実効支配の歴史を軸にして整理すれば、意外に単純に日本の領有権に分があると言えることが、この本を通じて学べました。結局竹島問題とは、韓国人の歴史認識、反日感情の問題であり、韓国国民の対日認識が変わらない限り、竹島問題も永久に解決しない。これが、本書読了後に得た結論です。
本書で論じられている古文書や古地図を自分自身で確認したわけではないこと、この本がもちろん日本側の立場で書かれていることなども念頭に置きつつ、批判的な視点を忘れずに読んでください。
2009年12月17日に日本でレビュー済み
現在の国際法では領有権の問題は、元来、歴史的経緯など関係ありません
そんなものを論じていれば、世界中の国家の領有権が怪しくなる。
例えば、歴史的経緯を言えば欧州の大部分はローマ帝国の領土だった時代もあるのだから、欧州はイタリアの領土とか。
そもそも歴史的には朝鮮半島は中国の領土であった時代の方がずっと長いのだから、朝鮮半島は中国の領土との主張も成り立ちます。
韓国側が竹島問題を歴史問題だと言い放つ時点で、実のところ、国際法の上での韓国の領有権の論拠は乏しいと認めているようなものです。
韓国は竹島の領有権を主張するたびに、李朝時代の地図など持ち出しますが。
李朝時代は朝鮮半島は、中国の一地方政権でしたから、その地図が現在でも有効とすれば朝鮮半島は中国領土との主張も成り立ちます。
ですから国際法の上で重要なのは、もっとも新しい取り決めであり、竹島問題の場合は明治期の日本の島根県編入の有効性とそれを認めたサンフランシスコ講和条約のみになります。
下條氏も、本書の中で再三に渡り、同様の旨を述べています。
そして竹島の領有権は歴史やイデオロギーなど、本来無関係の事が絡まり難しくしていると言明しています。
その上で韓国側の主張する歴史的な領有権の論拠となる、地図や文献についての矛盾点を追求を本書で行っています。
最終的には、サンフランシスコ講和条約と日韓基本条約への言及の上で、下條氏は、竹島の領有権は最終的に日本のものだと定まったと結論づけています。
田嶋陽子氏がテレビ番組で、韓国を騙して日本の領土としたと言及していますが、これは彼女の不勉強が為せる事に過ぎません
こうした経緯をこの本で理解してください
なお、マイナス点は、読んでいて色々と捕捉したいところも多かったからです。
例えば、1904年の島根県の編入過程では、当時の記録から編入を申し込んだ人物が、当初は朝鮮の領土と考え、その旨を外務省に問い合わせたところ、
外務省はどこの国の領有権とも看做せないとの返答を寄こした事実です。
韓国側はこの問題の前半部分だけを取上げ、日本は朝鮮の領土と知りながら領有権を強奪したと主張していますから
こうした点なども書いて欲しかった。
そんなものを論じていれば、世界中の国家の領有権が怪しくなる。
例えば、歴史的経緯を言えば欧州の大部分はローマ帝国の領土だった時代もあるのだから、欧州はイタリアの領土とか。
そもそも歴史的には朝鮮半島は中国の領土であった時代の方がずっと長いのだから、朝鮮半島は中国の領土との主張も成り立ちます。
韓国側が竹島問題を歴史問題だと言い放つ時点で、実のところ、国際法の上での韓国の領有権の論拠は乏しいと認めているようなものです。
韓国は竹島の領有権を主張するたびに、李朝時代の地図など持ち出しますが。
李朝時代は朝鮮半島は、中国の一地方政権でしたから、その地図が現在でも有効とすれば朝鮮半島は中国領土との主張も成り立ちます。
ですから国際法の上で重要なのは、もっとも新しい取り決めであり、竹島問題の場合は明治期の日本の島根県編入の有効性とそれを認めたサンフランシスコ講和条約のみになります。
下條氏も、本書の中で再三に渡り、同様の旨を述べています。
そして竹島の領有権は歴史やイデオロギーなど、本来無関係の事が絡まり難しくしていると言明しています。
その上で韓国側の主張する歴史的な領有権の論拠となる、地図や文献についての矛盾点を追求を本書で行っています。
最終的には、サンフランシスコ講和条約と日韓基本条約への言及の上で、下條氏は、竹島の領有権は最終的に日本のものだと定まったと結論づけています。
田嶋陽子氏がテレビ番組で、韓国を騙して日本の領土としたと言及していますが、これは彼女の不勉強が為せる事に過ぎません
こうした経緯をこの本で理解してください
なお、マイナス点は、読んでいて色々と捕捉したいところも多かったからです。
例えば、1904年の島根県の編入過程では、当時の記録から編入を申し込んだ人物が、当初は朝鮮の領土と考え、その旨を外務省に問い合わせたところ、
外務省はどこの国の領有権とも看做せないとの返答を寄こした事実です。
韓国側はこの問題の前半部分だけを取上げ、日本は朝鮮の領土と知りながら領有権を強奪したと主張していますから
こうした点なども書いて欲しかった。
2017年3月7日に日本でレビュー済み
竹島問題を詳しくは知らなかったが、この本は歴史に詳しくない人にも、大変よくわかるように、その経緯を時代を追って丁寧に書かれている。正に目に鱗の如く、心にすとんと落ち着いた。日本人、韓国人、の大勢の方に読んで欲しい書物です。