本書は実在した可能性が高いと考えられる第十代崇神天皇について『日本書紀』を手がかりとしながらその時代背景等について論じた書である。
日本には「皇國史観」という歴史観がある。これは、我が国の歴史は万世一系の天皇を中心として展開されてきたとする。倫理的には、それによって天皇に忠義を尽くすことが美徳であるとされる。明治時代から第二次世界大戦に至るまで、日本が大日本帝國であった時代には、皇國史観は政府公認の歴史観・道徳観であった。一方、「自虐史観」といって、第二次世界大戦で敗戦したことを「終戦」と呼ぶ蟠(わだかま)りの中で、皇國史観を徹底的に否定する。そのために、さしあたり『古事記』(和銅五年 712年 日本最古の歴史書)と『日本書紀』(養老四年 720年 日本最古の正史で「六國史」のひとつ)の内容を否定する。あるいは、古代の天皇の存在を否定する。特に神武天皇の実在性について神話の一部として頭から否定する。更に「闕史(けっし)八代」といって第二代から第九代までの天皇の存在を科学的な証拠もないのに完全に否定する。考古学者の中には『記紀』を絶対に読まないことを主義とする人たちが少なからずいる。そのような、極端に偏って感じられる歴史観もある。
著者・肥後和夫(1899-1981)は、昭和十八年(1943年)に東京文理科大学(後の東京教育大学)の教授の地位にあったが、昭和二十一年(1946年)に公職追放され、昭和二十七年(1952年)に東京教育大学教授に復職した経歴をもつ。日本古代史の重鎮であった。
著者は、『日本書紀』には特に年代記について作為が目立つとして、これを「伝承文学」とはしながらも、やはり貴重な史料であるとしている。著者は、そのように自由に表現できる時代になったことに感謝してこの本を著したのに相違ない。
日本古代史については過去五十年間様ざまな人びとによって様ざまな研究が行われてきたが、本書はそれ以前に上梓された第十代崇神天皇に関する書籍として貴重である。

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崇神天皇 (天皇紀シリーズ) ペーパーバック – 1974/8/1
肥後 和男
(著)
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社秋田書店
- 発売日1974/8/1
- ISBN-10425300248X
- ISBN-13978-4253002486
登録情報
- 出版社 : 秋田書店 (1974/8/1)
- 発売日 : 1974/8/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 244ページ
- ISBN-10 : 425300248X
- ISBN-13 : 978-4253002486
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,480,061位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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