その昔、あすかコミックス他で出版された名作たちが次々と蘇ります!
十年程前に手放してしまったのを後悔していましたので、本当に嬉しい。
●月読●天照大御神の弟で須佐之男命の兄、月読命。その劣等感を利用する姉…。
(1986) 『私も肉を口にすれば 須佐之男のように赤銅色の肌になれようか』
日本神話の三神の愛憎劇ですが、須佐之男の高天原からの追放の理由を、
ここまで裏読みする山岸先生は凄いですね。肉(体)ある故の欲…という煩悩の世界です。
●肥長比売●肥の河の巫女の娘・肥長比売が、男を愛し憎んだ故に堕ちた地獄。
(1993) 『本牟智和気が訪れぬ夜は背中の模様が燃え 比売を苦しめた』
娘道明寺でしたか、清姫が蛇に化けて男を獲り殺すお話。アレに似てます。
しかし亡き男と恋人を比較し続け、ひいては男に依存し過ぎる女の執念は凄まじい。
●天沼矛 夜桜●孤独に耐えられず創り出した少女にも疎まれた蛇神の決心とは。
(1986) 『それを見て神さまは初めて己が姿を恥じ 花霞の帳の中へ身を隠してしまわれた』
こちらは男性が蛇神ですが、自身の犠牲を厭わない愛情が切ない。
●天沼矛 緋桜●離婚歴がある男と結婚し新居の為に切り倒す桜を見に来た女に蘇る記憶。
(1986) 『だけど あたしが桜というとね イメージするのは丑の刻参り』
この作品を読んでから、私の丑の刻参りのイメージが決定されました。
●天沼矛 薄桜●結核のため家族と離れて入院生活を送る少年が得た友人は…。
(1986) 『人魂を見たらここじゃ一人前なんだと これからここに長く居着くことになるってこと』
今だったらBLとか言われるんでしょうか。小品だけど良作です。
●黄泉比良坂●闇の中で目覚めた女。腕も脚もなく、目も見えず耳も聞こえず声も出せない…。
(1983) 『ああ…どうしよう わたしは自分が誰なのかわからない!』
私が10歳の時に読んで「こんな死後の世界だけは嫌だ!」と思った作品。
昔、高河ゆん氏の作品でも「死の瞬間に最悪な感情は“怒り”」とありました。
●海底より●目を患い都落ちしたアイドル歌手。海の底から彼女を呼ぶ声が聞こえる。
(1983) 『知ってるだろ ここは平家が滅亡した町なんだから その霊を祀ってあるんだよ』
これも『汐の声』や『鬼』と同じで、死者と同じ立場にある者が感応する… という作品。
「盲目」という共通点で、耳無し芳一と繋がってしまう女性のお話です。
●夜叉御前●山深い一軒家に越してきた家族。家の中で長女に付き纏う「鬼」の正体とは。
(1982) 『わたしは後ろを振り向きませんでした 振り向けばそこにあるのがわかったからです』
読み進むうちに長女の周りに起きる異変と、鬼の正体が明らかになるという、
閉じられた世界の中での狂気を描いた作品です。
●海の魚鱗宮●一人娘を連れて郷里の法事に帰る主婦。何度も脳裏に蘇るあの子は誰?
(1985) 『わたしあの子を知ってるわ あの子は確か… でもまさか だってあの子は…』
これも山岸先生の「パイドパイパー」を連想する作品。
先生はたまに幼女が犠牲になる犯罪を描かれますが、それが時代に先行しているのが凄い。
●神かくし●幼い頃に弟を神隠しで無くした武士。ある日亡き母に似た少年と出会うが…。
(1985) 『遺体が出てこない…ゆえに弟はどこかで生きているかもしれない…これがおまえの病気だ』
この作品は非常に綿密なストーリー構成で描かれており、
まるで時代物の映画を一本視たような感覚になります。ラストの救いが胸に染みます。
●神入山●『神かくし』の舞台となった山に、現代の若者たちが禁を破って立ち入る。
(1986) 『落ち着けよ UFOなんてそう簡単に出てこないよ あそこはいつも旅客機の通る所だよ』
昔からの言い伝えや禁域には従った方がよい…という感想です。
天狗・カラス天狗・天狐などの共通点に着目し、その正体は…というオチが効いてます。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
神かくし (秋田文庫 19-2) 文庫 – 1998/8/1
山岸 凉子
(著)
神かくし (秋田文庫)
- 本の長さ271ページ
- 言語日本語
- 出版社秋田書店
- 発売日1998/8/1
- ISBN-104253172466
- ISBN-13978-4253172462
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2010年11月23日に日本でレビュー済み
2011年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ずっーと昔にあすかで読んだ作品です!!
とても懐かしいです!!
名作揃いでオススメです♪
とても懐かしいです!!
名作揃いでオススメです♪
2013年3月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
こんな作品があるのはしらなかったまだよんでいないので楽しみです。
2013年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「神かくし」は、約100ページの物語の中に、起承転結が見事に納まったドラマが描かれていて、著名な作家の時代小説を読み終えた後のような、清々しい余韻が残りました。
「神入山」は、「神かくしPART.2」と副題が付いていることから、「神かくし」と繋がる話なのかと思いきや、同じ山が舞台というだけで、全くの別世界の様相に唖然としました。
コメディ的なノリの短編です。
「負の暗示」は、昭和13年に実際に起きた事件を、作者なりの視点で、犯人の人生を追う形で描いた物。
現代にも起こり得る、普遍的な物として突き付けられます。
「黄泉比良坂」は、もの悲しさが漂いますが、個人的にはあまり良さが分かりませんでした。
「夜の虹」は、作者の経験した気象体験が紹介されたエッセイ漫画。
「負の暗示」も丁寧に描かれていて読ませますが、何より私が気に入ったのは表題作の「神かくし」でした。
一つ気になったのは巻末の解説。
ほとんどが、ここに収録されていない別の作品の感想であり、収録作品では唯一「神かくし」が取り上げられていますが、いきなり「私の苦手な時代物」とあり、しかも作品の重要なネタバレがあっさりと全て書かれています。
山岸先生をお嫌いな方に解説を依頼したのかと思う程です。
新鮮な気持ちで読みたい方は、解説を読まずに先に作品を読むことをお勧めします。
「神入山」は、「神かくしPART.2」と副題が付いていることから、「神かくし」と繋がる話なのかと思いきや、同じ山が舞台というだけで、全くの別世界の様相に唖然としました。
コメディ的なノリの短編です。
「負の暗示」は、昭和13年に実際に起きた事件を、作者なりの視点で、犯人の人生を追う形で描いた物。
現代にも起こり得る、普遍的な物として突き付けられます。
「黄泉比良坂」は、もの悲しさが漂いますが、個人的にはあまり良さが分かりませんでした。
「夜の虹」は、作者の経験した気象体験が紹介されたエッセイ漫画。
「負の暗示」も丁寧に描かれていて読ませますが、何より私が気に入ったのは表題作の「神かくし」でした。
一つ気になったのは巻末の解説。
ほとんどが、ここに収録されていない別の作品の感想であり、収録作品では唯一「神かくし」が取り上げられていますが、いきなり「私の苦手な時代物」とあり、しかも作品の重要なネタバレがあっさりと全て書かれています。
山岸先生をお嫌いな方に解説を依頼したのかと思う程です。
新鮮な気持ちで読みたい方は、解説を読まずに先に作品を読むことをお勧めします。
2010年9月25日に日本でレビュー済み
山岸凉子さんの作品の中で日本神話を題材にした漫画が特に好きです。話が面白くて絵が美しいです。「月読」が読みたくて購入しました。
「黄泉比良坂」から「海の魚鱗宮」は山岸凉子さんワールド全開とでも言うのでしょうか、彼女の人の闇を見る目は赤外線仕様とでも言いましょうか、薄々気がついている人間の仄暗い悪意を人は見ようとしませんが、彼女の目にははっきりとストーリーとして浮かび上がらせてしまいます。
嫉妬、恨み、そしてそれらによって自分自身ががんじがらめになるような話、人を恨むという行為は自分自身の中の闇を見る事によって他人の闇を感じて病んで行くのでは無いだろうか?人が病んで行く過程というのは意外にも簡単で危うい事なのだと、そしてそれは他人事ではないんだなと言う事。恨むという事自体が病みの一歩なのだなと思いました。本当に怖いのは人間だといつも彼女の作品を読むと思ってしまいます。ですが、その闇を見つめる勇気が本当の希望になると言う事も同時に思います。
本の名前になっている「神かくし」は怖い話かな?と思っていたので、少し拍子抜けしましたが、終始凛とした空気があり、悲しい話ではありましたが、その中にも暖かみなどもあり希望が持てる話でした。
【もくじ】・月読(つくよみ)・肥長比売(ひながひめ)・天沼矛(あめのぬぼこ)・黄泉比良坂(よもつひらさか)・海底(おぞこ)より・夜叉御前・海(わだつみ)の魚鱗宮(いろこのみや)・神かくし・神入山(神かくし Part.2)
「黄泉比良坂」から「海の魚鱗宮」は山岸凉子さんワールド全開とでも言うのでしょうか、彼女の人の闇を見る目は赤外線仕様とでも言いましょうか、薄々気がついている人間の仄暗い悪意を人は見ようとしませんが、彼女の目にははっきりとストーリーとして浮かび上がらせてしまいます。
嫉妬、恨み、そしてそれらによって自分自身ががんじがらめになるような話、人を恨むという行為は自分自身の中の闇を見る事によって他人の闇を感じて病んで行くのでは無いだろうか?人が病んで行く過程というのは意外にも簡単で危うい事なのだと、そしてそれは他人事ではないんだなと言う事。恨むという事自体が病みの一歩なのだなと思いました。本当に怖いのは人間だといつも彼女の作品を読むと思ってしまいます。ですが、その闇を見つめる勇気が本当の希望になると言う事も同時に思います。
本の名前になっている「神かくし」は怖い話かな?と思っていたので、少し拍子抜けしましたが、終始凛とした空気があり、悲しい話ではありましたが、その中にも暖かみなどもあり希望が持てる話でした。
【もくじ】・月読(つくよみ)・肥長比売(ひながひめ)・天沼矛(あめのぬぼこ)・黄泉比良坂(よもつひらさか)・海底(おぞこ)より・夜叉御前・海(わだつみ)の魚鱗宮(いろこのみや)・神かくし・神入山(神かくし Part.2)
2014年3月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何が理由かわかりませんが…
本を受け取る事が出来ていません。
ごめんなさい。
もう信用出来ないので利用しません。
本を受け取る事が出来ていません。
ごめんなさい。
もう信用出来ないので利用しません。
2012年2月12日に日本でレビュー済み
どの作品も本当に本当に素晴らしいのですが、
10代の頃に読んで、「黄泉比良坂」が一番印象に残っています。
だれにでも不幸にとりつかれる瞬間はあるということ、
その瞬間がどこなのかがわかって幼いながらにぞっとしました。
人間が不幸になるメカニズムがよくわかります。
それさえわかっていれば、幸せは見つけやすいということをいつも
山岸先生の作品は教えてくれるような気がします。
10代の頃に読んで、「黄泉比良坂」が一番印象に残っています。
だれにでも不幸にとりつかれる瞬間はあるということ、
その瞬間がどこなのかがわかって幼いながらにぞっとしました。
人間が不幸になるメカニズムがよくわかります。
それさえわかっていれば、幸せは見つけやすいということをいつも
山岸先生の作品は教えてくれるような気がします。