学生時代に物理を学んだものとして、ここの書評に触発され図書館から借りて一気に読みました。
科学的方法論としてのヒモ理論に疑問を投げかける立場が一環して貫かれており、それなりに説得力があります。
ヒモ理論の一般書のみが氾濫し、一般相対論と量子論の統合に向けたヒモ理論以外のアプローチの解説本がほとんど見当たらない中で、
この本は大変貴重であると思います。
理論物理を目指す大学生や院生にぜひ読んでほしい一冊だと思いました。
出版2007年から10年が経った今日、この著者によるその後の10年の進捗(停滞)をぜひ書いてほしいと思います。

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迷走する物理学 単行本(ソフトカバー) – 2007/12/13
ストリング理論に先はない!
物理学停滞30年からの出口
理論的枠組みだけではなく、現在の物理学界の政治的な状況、
硬直化した研究体制にもメスを入れ、科学への信頼回復をめざす提言の書。
物理学停滞30年からの出口
理論的枠組みだけではなく、現在の物理学界の政治的な状況、
硬直化した研究体制にもメスを入れ、科学への信頼回復をめざす提言の書。
- 本の長さ472ページ
- 言語日本語
- 出版社武田ランダムハウスジャパン
- 発売日2007/12/13
- ISBN-104270002921
- ISBN-13978-4270002926
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商品の説明
著者について
リー・スモーリン
1955年ニューヨーク生まれ。
1979年ハーヴァード大学大学院で理論物理学の博士号取得。
その後、プリンストン高等研究所をはじめ、全米各地の研究所に参加し、さらに英国やイタリアの大学で客員教授も勤める。
2001年にカナダに移り、ペリメーター理論物理学研究所の設立に参画、現在に至る。
専門は量子重力理論だが、ストリング理論を含む現代物理学の諸相にも通じ、著作の中では哲学的な見地から直面する問題を論じている。
【著作】
『量子宇宙への3つの道』(草思社)』、『宇宙は自ら進化した―ダーウィンから量子重力理論へ―』(日本放送出版協会)
1955年ニューヨーク生まれ。
1979年ハーヴァード大学大学院で理論物理学の博士号取得。
その後、プリンストン高等研究所をはじめ、全米各地の研究所に参加し、さらに英国やイタリアの大学で客員教授も勤める。
2001年にカナダに移り、ペリメーター理論物理学研究所の設立に参画、現在に至る。
専門は量子重力理論だが、ストリング理論を含む現代物理学の諸相にも通じ、著作の中では哲学的な見地から直面する問題を論じている。
【著作】
『量子宇宙への3つの道』(草思社)』、『宇宙は自ら進化した―ダーウィンから量子重力理論へ―』(日本放送出版協会)
登録情報
- 出版社 : 武田ランダムハウスジャパン (2007/12/13)
- 発売日 : 2007/12/13
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 472ページ
- ISBN-10 : 4270002921
- ISBN-13 : 978-4270002926
- Amazon 売れ筋ランキング: - 549,646位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 639位物理学一般関連書籍
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年1月22日に日本でレビュー済み
2011年5月29日に日本でレビュー済み
ストリング理論(超ひも理論、以下、ス論)の基盤がここまで空疎とは。
ある理論が趨勢を極め、それを支持する学者が学会を支配する状況は
アメリカの学界でも、それも理系の物理学界でも同じなんですね。
自由な批判の雰囲気もなく、明らかな事実でもそれを言えない空気があり、
ス論の研究者が学界の人事を支配し、それ以外の分野の物理学者が可哀想
なほどに冷遇されるという例を「これでもか」と書きなぐります。
ス論が正しいのであれば、それもやむを得ないとも言えそうですが、実は
ス論には解の有限性が証明されていないという根本的な問題があります。
つまり、ス論に基づく独創的で美しい多くの理論が、ある日「ご破算」に
なる可能性が存在するということです。
ス論の学者はこの事実を拒否し、軽視し、無視します。
「正しいが証明されていない理論」とまで議論の前提を固守します。
たしかに魅力的で美しい理論が百花繚乱のごとくに咲き乱れているよう
ですが、それはあたかも天動説に基づく、美しい数学理論を構築していた
状況であると後に判明するかもしれません。
著者は、学者の集団心理の視点、科学者倫理の視点、科学哲学の視点から
この状況を批判します。この後半部分がもっとも面白いと感じました。
序盤・中盤は基礎知識が必要ですので、つまらないと感じた方は7章のス論の
部分や、16章の学界政治の部分から読むことをお勧めします。
科学哲学では過激とされるファイヤーアーベントとの交流も見ものです。
とにかく面白い本です。著者の人柄の素晴しさが随所に見られます。
ある理論が趨勢を極め、それを支持する学者が学会を支配する状況は
アメリカの学界でも、それも理系の物理学界でも同じなんですね。
自由な批判の雰囲気もなく、明らかな事実でもそれを言えない空気があり、
ス論の研究者が学界の人事を支配し、それ以外の分野の物理学者が可哀想
なほどに冷遇されるという例を「これでもか」と書きなぐります。
ス論が正しいのであれば、それもやむを得ないとも言えそうですが、実は
ス論には解の有限性が証明されていないという根本的な問題があります。
つまり、ス論に基づく独創的で美しい多くの理論が、ある日「ご破算」に
なる可能性が存在するということです。
ス論の学者はこの事実を拒否し、軽視し、無視します。
「正しいが証明されていない理論」とまで議論の前提を固守します。
たしかに魅力的で美しい理論が百花繚乱のごとくに咲き乱れているよう
ですが、それはあたかも天動説に基づく、美しい数学理論を構築していた
状況であると後に判明するかもしれません。
著者は、学者の集団心理の視点、科学者倫理の視点、科学哲学の視点から
この状況を批判します。この後半部分がもっとも面白いと感じました。
序盤・中盤は基礎知識が必要ですので、つまらないと感じた方は7章のス論の
部分や、16章の学界政治の部分から読むことをお勧めします。
科学哲学では過激とされるファイヤーアーベントとの交流も見ものです。
とにかく面白い本です。著者の人柄の素晴しさが随所に見られます。
2008年4月8日に日本でレビュー済み
超ひも理論の問題点を指摘し、打開策を探る本。
超ひもの問題点がさまざまに指摘されているが、超ひもを全否定しようとする本ではない。
本書の意図は「本当の問題は、ストリング理論に多大なエネルギーがかけられた理由ではなく、それ以外の取り扱い方に十分と言えるほど手間をかけてこなかった理由の方である」(p445)に集約されているだろう。
超ひもは、理論が現実からどんどん乖離している。
理論において数学的美しさを推し進めてはいるが、それが現実と合致しているかはあまり重要視されず、ひたすらモデル分析に終始している。
例えば超対象性の美しさを求めるため、見つかっていないがあるはずのペアの粒子を大量に仮定する。
理論を先行させ、現実には見つかっていない粒子が置かれるのだ。
超ひもは、変数が余りにも多く、実験がどんな結果を出してもそれを取り込めてしまう。
しかしこれでは、実験が反証としての役目を果たせない。
超ひも理論がなぜこのような方程式なのかと言われても、実験結果にあわせるため、としか答えられなくなる。
結果、30年たっても、超ひも理論は有効な予言を何一つ出せずにいる。
超ひも理論は、理論ではなく仮説止まりだ。
しかし本書を読んで目が留まったのは、超ひもの話よりも、物理学会の問題の方であった。
既存の理論に異論を挟むことは許されず、ひたすらシステムに従って計算していくだけの科学が、学生のうちから叩き込まれる。
教授のポストや研究費の関係から、自分が信ずる道よりも、流行り誉めそやされているだけの研究をせざるを得ない状況がある。
こうして、数稼ぎの論文だけが大量生産され、流行が去れば忘れられる。
今は超ひもが幅を利かせており、超ひもをやらないものは一段低く見る風潮さえあるそうだ。
超ひもでないと職につくのも大変な時代になっている。
そのため、超ひもをやらないと職にも就けず、結果、超ひも以外の有望な研究はほとんど進んでいない。
ギトギトした教授選定の裏話などは、なんとなくがっかりさせられてしまう現実である。
一方で、「科学知らずの科学哲学者」ではなかったファイヤアーベントと著者との友好の話などは心を和ませてくれる。
能力が活かせるか否かは、運の要素も大きそうだ。
私が仕事をするころには、学会(物理に限らず)の閉塞性も打破されていてほしい。
超ひもの問題点がさまざまに指摘されているが、超ひもを全否定しようとする本ではない。
本書の意図は「本当の問題は、ストリング理論に多大なエネルギーがかけられた理由ではなく、それ以外の取り扱い方に十分と言えるほど手間をかけてこなかった理由の方である」(p445)に集約されているだろう。
超ひもは、理論が現実からどんどん乖離している。
理論において数学的美しさを推し進めてはいるが、それが現実と合致しているかはあまり重要視されず、ひたすらモデル分析に終始している。
例えば超対象性の美しさを求めるため、見つかっていないがあるはずのペアの粒子を大量に仮定する。
理論を先行させ、現実には見つかっていない粒子が置かれるのだ。
超ひもは、変数が余りにも多く、実験がどんな結果を出してもそれを取り込めてしまう。
しかしこれでは、実験が反証としての役目を果たせない。
超ひも理論がなぜこのような方程式なのかと言われても、実験結果にあわせるため、としか答えられなくなる。
結果、30年たっても、超ひも理論は有効な予言を何一つ出せずにいる。
超ひも理論は、理論ではなく仮説止まりだ。
しかし本書を読んで目が留まったのは、超ひもの話よりも、物理学会の問題の方であった。
既存の理論に異論を挟むことは許されず、ひたすらシステムに従って計算していくだけの科学が、学生のうちから叩き込まれる。
教授のポストや研究費の関係から、自分が信ずる道よりも、流行り誉めそやされているだけの研究をせざるを得ない状況がある。
こうして、数稼ぎの論文だけが大量生産され、流行が去れば忘れられる。
今は超ひもが幅を利かせており、超ひもをやらないものは一段低く見る風潮さえあるそうだ。
超ひもでないと職につくのも大変な時代になっている。
そのため、超ひもをやらないと職にも就けず、結果、超ひも以外の有望な研究はほとんど進んでいない。
ギトギトした教授選定の裏話などは、なんとなくがっかりさせられてしまう現実である。
一方で、「科学知らずの科学哲学者」ではなかったファイヤアーベントと著者との友好の話などは心を和ませてくれる。
能力が活かせるか否かは、運の要素も大きそうだ。
私が仕事をするころには、学会(物理に限らず)の閉塞性も打破されていてほしい。
2008年6月30日に日本でレビュー済み
ストリング理論の研究が実績を挙げていないにも拘らず、大学などで優遇され他の理論の成長を妨げていると厳しく主張しています。特に大学や研究機関に対して基礎物理学の健全な進展を促すための提言を多く述べており、本書はこれら機関に向けて書いたのではないかと推測します。しかし、ストリング理論が検証可能な理論として上手くいっていない事や、現在の基礎物理学が大変迷走している事について詳しく解説されており、物理学科の3年生位の知識があれば興味を持って読めると思います。特にストリング理論は究極理論と謳われながらも背景独立ではない(相対性理論は独立なのに)という批判は興味深かったです。本書から基礎物理研究の最前線について知り、人類が量子論と相対論の奥にある統一理論を手にするには、まだ時期尚早であると感じました。しかし、それは自然が深遠であるからで、自然に対してより神秘的に感じるようになりました。
本書の内容は素晴らしく、星5つの評価にしたいところです。しかし、前著書『量子宇宙への3つの道』では、ストリング理論を評価しており、基礎物理学の将来に対して楽観視していたことから、何故これほど見解が変わったのか理由を書いておらず、主張に一貫性が無いことから星4つとさせて頂きました。
本書の内容は素晴らしく、星5つの評価にしたいところです。しかし、前著書『量子宇宙への3つの道』では、ストリング理論を評価しており、基礎物理学の将来に対して楽観視していたことから、何故これほど見解が変わったのか理由を書いておらず、主張に一貫性が無いことから星4つとさせて頂きました。
2010年2月11日に日本でレビュー済み
私は理論物理は門外漢ですが、たいへん興味深く読みました。
原書は2006年に書かれていますので、ほぼ最先端の理論物理学の現状がわかります。著者はストリング理論には批判的ですが(著者の専門はループ量子重力)、なぜそのように思うに至ったのかが、非常に詳しく、説得力を持って説明されており、一般の方にも科学に興味があれば、面白い内容と思います。
著者は、科学研究の進め方や、その体制にも疑問を持っており、一種の告発本のような様相を呈していますが、記述は丁寧であり、ストリング理論家にもきちんと敬意を払っています。ですから、読後感は悪くありません。ただ、そのあと、かなり紛糾したようですね。
原書は2006年に書かれていますので、ほぼ最先端の理論物理学の現状がわかります。著者はストリング理論には批判的ですが(著者の専門はループ量子重力)、なぜそのように思うに至ったのかが、非常に詳しく、説得力を持って説明されており、一般の方にも科学に興味があれば、面白い内容と思います。
著者は、科学研究の進め方や、その体制にも疑問を持っており、一種の告発本のような様相を呈していますが、記述は丁寧であり、ストリング理論家にもきちんと敬意を払っています。ですから、読後感は悪くありません。ただ、そのあと、かなり紛糾したようですね。
2008年3月12日に日本でレビュー済み
重力子が理論から自動的に出てきて、しかも数学的に無矛盾という奇跡。学界を湧かせたストリング理論が今日あまりに難渋しているというのは疑いない事実でしょう。20年以上ですからね! 世界の最優秀の頭脳を結集してなお理論を完成させられないでいるというのはやはり異様な事態です。スモーリンは言います。ストリング理論がいっこうに成功しないのは、革命科学を通常科学のやり方でやり通そうとする矛盾からの必然的帰結なのだ、と。素粒子物理学の標準モデルを産み出し、そしてストリング理論もその延長上にある研究スタイルこそクーンのいわゆる「通常科学」のそれであり、時空や実在の見方に根本的な変更を迫った相対論と量子論のごときいわゆる「革命科学」とは全く異なるのだ、と。
しかも驚くべきことに、ストリング理論は実験的に確立したわけでも確立しそうな予感があるわけでもないのに既に学界のパラダイムと化し、全米の理論物理学のポストのほとんどをストリング理論家が占め、ストリング理論以外の理論研究を締め出す結果となった。何の実験的支えも持たない理論がパラダイムとして支配する。そんな状態の科学は前代未聞です。成功していないにもかかわらずストリング理論の支配体制が確立してしまった理由は、スモーリンによれば、短期間で結果を求める(すなわち解き方の型の定まった「通常科学」における)今日の研究ポスト争いの激化が根本問題への独自の長期的取り組みを阻害しているためだという。
これは単なる紹介本ではなくそれ自体科学を推進する仕事、それも実に大きな仕事なんじゃないか。それほど本質的と思える著作の中で、現代科学の体制への元気がなくなるくらい詳細な告発が少なからぬウェイトを占めているというのは悲しいことですが、しかし、スモーリンの慧眼はそうした科学の研究体制の構造的問題こそが現在の危機の本質なのだということを見抜いたわけです。本書は科学界の現状を冷静に分析した科学社会学書としても非常に優れたものだと思います。
2021年追記:本書では、成立条件が特殊すぎて一般化できる見通しがないとされたマルダセナのゲージ重力対応予想は確かに依然として一般化に成功していない。それでも対応は本物らしい傍証は積み上がっているようだし、何と言っても量子もつれが一般相対論のワームホールに対応しているらしいという近年の発見には深淵を覗き見たような感覚を覚えます。対応がちゃんと証明されれば、相対論と量子論の最大の矛盾であった非局所相関の謎が実に衝撃的な形で解かれるわけですから、期待せずにはおれません。
しかも驚くべきことに、ストリング理論は実験的に確立したわけでも確立しそうな予感があるわけでもないのに既に学界のパラダイムと化し、全米の理論物理学のポストのほとんどをストリング理論家が占め、ストリング理論以外の理論研究を締め出す結果となった。何の実験的支えも持たない理論がパラダイムとして支配する。そんな状態の科学は前代未聞です。成功していないにもかかわらずストリング理論の支配体制が確立してしまった理由は、スモーリンによれば、短期間で結果を求める(すなわち解き方の型の定まった「通常科学」における)今日の研究ポスト争いの激化が根本問題への独自の長期的取り組みを阻害しているためだという。
これは単なる紹介本ではなくそれ自体科学を推進する仕事、それも実に大きな仕事なんじゃないか。それほど本質的と思える著作の中で、現代科学の体制への元気がなくなるくらい詳細な告発が少なからぬウェイトを占めているというのは悲しいことですが、しかし、スモーリンの慧眼はそうした科学の研究体制の構造的問題こそが現在の危機の本質なのだということを見抜いたわけです。本書は科学界の現状を冷静に分析した科学社会学書としても非常に優れたものだと思います。
2021年追記:本書では、成立条件が特殊すぎて一般化できる見通しがないとされたマルダセナのゲージ重力対応予想は確かに依然として一般化に成功していない。それでも対応は本物らしい傍証は積み上がっているようだし、何と言っても量子もつれが一般相対論のワームホールに対応しているらしいという近年の発見には深淵を覗き見たような感覚を覚えます。対応がちゃんと証明されれば、相対論と量子論の最大の矛盾であった非局所相関の謎が実に衝撃的な形で解かれるわけですから、期待せずにはおれません。