明治・大正・昭和の三つの時代に活躍された「半七捕物帳」で有名な岡本綺堂氏の編訳による世界古典怪談名作集です。本書を読んで感じたのはやっぱり怪談噺は古風な作品に昔の風情や情緒や趣があって今の時代でも十分に面白くて楽しめるなあという想いですね。それから作家によってそれぞれ持ち味が違い唯単に怖がらせるだけではない幽霊や化け物に対する様々なアプローチの仕方があってとても興味深かったですし、何よりどの作品にもそこはかとなく滲み出ている格調の高い文学性を感じましたね。
『貸家』リットン著:ロンドンの市中に化け物屋敷があるとの話を聞いた私は持ち主に許可を得て雇い人Fと勇敢な犬を連れていざ乗り込んだのだが・・・・。本編で意外だったのは甚だ理解は難しい物の化け物屋敷の解決策が呈示されている点で、この「かなり怪しい科学」は日本の初期ミステリー作家(例えば小栗虫太郎氏)に影響を与えたのではと思いましたね。『スペードの女王』プーシキン著:ロシアに帰化したドイツ人の青年ヘルマンは控え目な節約家だったが、伝説の伯爵夫人の「三枚の必勝骨牌」の話を聞いて人生で初めて強引な勝負に出るのだった。欲に狂って人でなしになった青年が最後の最後に味わう倍返しの報いが真に凄まじく人は誠実に生きなければいけないと改めて思い知らされましたね。『妖物(ダムドシング)』ビヤース著:森の中で狩猟をしている最中に獰猛な野獣に襲われて死んだと思しき男に陪審官はマウンテン・ライオンによる死と評決を下したが・・・・。得体の知れぬ恐ろしい物に用いる「怪物」と言う言葉は一般的ですが、この「妖物」の語は響きが好まれなかったのか日本語として全く定着しませんでしたね。『クラリモンド』ゴーチェ著:僧侶を目指す真面目な男が美しい若い女を知ってから世界が一変し強い恋情にのめり込んでしまうが実は女の正体はこの世の者ならぬ魔性の者なのだった。本編ではくれぐれも妖しい女怪に迷ってはいけないと一応正道を説いてはいますが、何処か快楽に対する未練と一抹の寂しさを感じさせる男の複雑な思いが込められていますね。『信号手』ディッケンズ著:私が偶然に知り合った実直な信号手の男は何処か不吉な気配を感じさせ打ち明け話によれば奇怪な幻を何度も見て苦悩しているらしかったが、やがて遂に不幸な運命に見舞われる。うーん、これはとても巧妙に仕組まれた完成度の高い秀作で、ぞっとして鳥肌が立つ程の戦慄を感じましたし読んで暫くは「おぅい、下にいる人!」という声が耳を離れなかったですね。『ヴィール夫人の亡霊』デフォー著:ある婦人が正午丁度の時間にドア口に立っていた長年の友人ヴィール夫人と本当に久々の再会を果すのだが・・・・。本編は幽霊の怖さなんかは二の次にしてとにかく彼らの確実な存在と邪悪ではない誠実さを描こうとした真面目その物の話であまりにも健全過ぎて調子が狂っちゃいますが、まあ偶にはこんなのも良いですね。『ラッパチーニの娘』ホーソーン著:イタリアの故郷の地を遠く離れて新しい土地の下宿に来たばかりの青年が、綺麗だが何故か怪しい恐怖を覚えた庭園とそこを通り掛かった美しい花々に負けない美女と出会う。本編は若い男女のロマンティックな純愛物語なのですが、同時に非常に残酷な悲恋物語でもあるのですね。容姿の美しさだけでなく健気でピュアな心情を持ちながら実の父によって実験台にされ悪魔の如き怪物と化した娘の不幸な境遇が誠に可哀そうで仕方なく、逆に自己満足の為だけに科学を悪用した人でなしの男が憎く強烈な憤りを感じましたね。
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世界怪談名作集 上 新装版 (河出文庫 お 2-2) 文庫 – 2002/6/1
テオフィル・ゴーチエ
(著),
チャールズ・ディケンズ
(著),
ナサニエル・ホーソーン
(著),
プーシキン
(著),
ダニエル・デフォー
(Bagpipes),
岡本 綺堂
(翻訳)
&
3
その他
- 本の長さ300ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2002/6/1
- ISBN-104309462227
- ISBN-13978-4309462226
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2002/6/1)
- 発売日 : 2002/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 300ページ
- ISBN-10 : 4309462227
- ISBN-13 : 978-4309462226
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,161,308位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,777位こどものSF・ファンタジー
- - 3,325位河出文庫
- - 3,838位全集・選書 (本)
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2014年10月26日に日本でレビュー済み
2006年7月11日に日本でレビュー済み
1929年に改造社の「世界大衆文学全集」の一冊として出た『世界怪談名作集』の復刻。収められている作品はどれもお馴染みで珍しくないが、岡本綺堂による訳というところに価値がある。
柔らかい語り口なのだが、時に文語調になったり、時代がかった言い回しが出てきたりと、「怪談」の薄暗い雰囲気が伝わってくるようだ。
しかし、良く知っている作品を岡本綺堂の訳で、という感覚は現代人のものでしかない。1929年の読者にとっては、これが初めて出会う怪奇小説だったのだ。なんと幸せなことかと思う。
柔らかい語り口なのだが、時に文語調になったり、時代がかった言い回しが出てきたりと、「怪談」の薄暗い雰囲気が伝わってくるようだ。
しかし、良く知っている作品を岡本綺堂の訳で、という感覚は現代人のものでしかない。1929年の読者にとっては、これが初めて出会う怪奇小説だったのだ。なんと幸せなことかと思う。
2003年9月14日に日本でレビュー済み
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2003年12月10日に日本でレビュー済み
岡本綺堂の文章は,美しい。
なんといっても,この本の売りは岡本綺堂が訳を手がけていることだと思う。
収録作品は,ホーソ-ンやディケンズなど,怪奇小説の定番となった作品が多い。怪奇小説ファンなら,一度は読んだことがあるような作品ばかりだ。それでも僕はこの本をオススメする。日本語が美しいからだ。
翻訳小説にありがちな直訳的な表現はほとんどなく,岡本綺堂らしい文章を交えながら,流れるような日本語に変身させている。
あんまり岡本綺堂らしさが出すぎて,思わず彼の作品を読んでいるような気分になるくらいだ。
一度読んだことのある作品も,また違った趣で見ることができるだろう。
これだけ素敵な文章を書く訳者はちょっといない。
なんといっても,この本の売りは岡本綺堂が訳を手がけていることだと思う。
収録作品は,ホーソ-ンやディケンズなど,怪奇小説の定番となった作品が多い。怪奇小説ファンなら,一度は読んだことがあるような作品ばかりだ。それでも僕はこの本をオススメする。日本語が美しいからだ。
翻訳小説にありがちな直訳的な表現はほとんどなく,岡本綺堂らしい文章を交えながら,流れるような日本語に変身させている。
あんまり岡本綺堂らしさが出すぎて,思わず彼の作品を読んでいるような気分になるくらいだ。
一度読んだことのある作品も,また違った趣で見ることができるだろう。
これだけ素敵な文章を書く訳者はちょっといない。