本書の副題には『ヘンな「呼び名」のおかしな由来』とあるが、取り上げられている「呼び名」は言うほどに「ヘン」ではない。意外性のある、または巷間知られていない言葉の由来・起源の解説であり、雑学書と言って良い。編著者がこの類のトリビア・雑学書籍にしばしば観られるような匿名(素朴な疑問研究会)であるところ、右名称からアマゾンで検索すると幾つか同様の雑学・トリビア系書籍がヒットするが、(“ーー研究会”との名称は多く観られるので)同一かどうかは不明である。匿名性のある編著者に依る場合、文責が曖昧になりやすいので、本書のトピックについて辞書やネットに依り裏付け調査を行ったが、概ね一般的解釈、通説などと一致するようである。トピックによっては複数の説を取り上げており、各説の優劣の当否は別論として、各辞典や当該語彙に関わる専門サイト等の解釈と大きく異なることはないように思われる。
但し私の調査に当たって幾つか気付いた点があるので指摘しておきたい。まず77〜8ページの「鉄火巻き」のトピックだが、本書では「賭博場」と関連付け、「博打好きの……江戸時代のファストフード」と結論する。しかし『語源由来辞典』(WEBサイト)では、「鉄火」(真っ赤に熱した鉄)はマグロ身の赤色とワサビの辛さの比喩であり、他に“鉄火丼”や“鉄火味噌”の例を挙げて本書の採る説(賭博場の食物説)を否定している。ちなみに本書では右の比喩説の言及はないが、『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』(WEB版)では本書の賭博場説を採っている。私見では、“鉄火丼”や“鉄火味噌”を斟酌する『語源由来辞典』に説得力があると思う。次に96〜7ページの「ラン」(花)の由来だが、本文では「ラン」自体が「恥ずかしい言葉」を意味するような筆致だが、「恥ずかしい言葉」を意味するのはギリシャ語名の「オルキス(orchis)」であって、「ラン」(蘭)自体がその根茎の物理的形状を表象または意味するものではない。「蘭」(ラン)自体は孔子の書(BC6世紀頃)に(香り高い花として)現れているようである。更に204〜5ページの「丹前」のトピックで、本書では町風呂の「湯 女」(勝山という人物)が着ていた着物を起源とするが、『日本文化いろは辞典』(WEBサイト)では、当該「湯 女」の気を引くため集まる男たちの派手な着物・服装を起源としている。本書では右説に言及していない。ちなみに「男の着物大全」公式サイトも右説を採っており、井原西鶴の『
好 色 一 代 男 (岩波文庫)
』の「巻一『煩悩の垢かき』」での描写を指摘している。
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ちゃぶ台のちゃぶって何だ?: ヘンな「呼び名」のおかしな由来 (KAWADE夢文庫 1003) 文庫 – 2014/8/12
素朴な疑問探究会
(編集)
- 本の長さ220ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2014/8/12
- ISBN-104309499031
- ISBN-13978-4309499031
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2014/8/12)
- 発売日 : 2014/8/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 220ページ
- ISBN-10 : 4309499031
- ISBN-13 : 978-4309499031
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