自然界の、あるいはある程度人工的な環境内に置かれた生物のマクロサイクル(個体数の増殖とか、あるエリアに対する流出入とか)を、
交差連立微分方程式系(ロトカ=ボルテラ系)などを用いて、理解しようとする親切な、定評ある教科書です。
扱っているテーマじたいは、いわゆる複雑系だと思います。いわば、連鎖する2本のロジスティック曲線の連立ですが、
このシステムは、ある二元値の周りに解が漸近すると、局所安定均衡解などと呼ばれ、大域安定への条件となりますが、
大域安定は必ずしも局所安定を結果しないでしょう。いずれにせよ、分子生物学や一般の生物学に比べ、
メカニックあるいはサイバネティックな物理生物学、また理論生物学(やや前に一世を風靡した!)に近い立場で、
その延長線上にはカオスやフラクタルも出てくるわけで、例えばナキウサギとオオカミの個体数変動曲線など。
全体は三部構成で、1.人口論、2.適応戦略、3.共存原理、となっていて、まずは生態系をなすある種類と関係する他の種類について、
内部と外部効果に分けた議論が進められます。伝染病の流行で餌が減ったとか、その結果各集団の年齢構成が乱れたとか、
樹木の高伸び競争、密度効果と空間的すみわけ、といった小テーマには、力学系や統計学的手法を用いており、特に本論となる2.では、
同一の環境収容力K値に対して、各種類がどんな内部競争や外部との競合を行った結果、どんな分布に変わるかを確率的に問い、
ゲーム理論や行動生態学的手法で、スケジュールのタイムリーな変動や性の進化、集団遺伝、文化進化をトレースしています。
まとめとなる3.では、ミクロ、マクロからセミマクロ、メゾスコピックな視点で、生物群集の安定や共存を確率過程として捉えており、
いろんな方法を小テーマごとにくみあわせ、動的平衡点を模索するコンティンジェントなアプローチといえましょう。
トータルとして、従来博物学的色彩の濃かった生物学に数理的方法を持ち込むことによって、議論の方向性がクリアーになったことで、
いかに生物界が野生、人工を問わず、ダイナミックなものであるかがよく分かる標準テキストです。
(野生のほうが、かなり複雑な系となることでしょう)
各章末に、やや難度の高い考察的演習問題と参考文献の追加(巻末にまとめてあるものへの)、
さらに付録A〜Dで、それぞれ力学系の一般解、離散力学系の局所安定解、フォッカー=プランク方程式の解法、量的遺伝の基本式について、
別途解説があり、利用価値があります。
生物・生命科学系に関心のある向きには、理論的なアプローチを習得する機縁として、充実の内容満載でおすすめです。
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数理生物学入門―生物社会のダイナミックスを探る 単行本 – 1998/3/1
巌佐 庸
(著)
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生物学とその周辺分野を学ぶ人たちのために,具体的な例を通して数学的概念と技法を紹介し,数学モデルを用いて生命現象をとらえることのおもしろさと,こういったモデルを理解し解析するテクニックの基礎を提供する。
- ISBN-104320054857
- ISBN-13978-4320054851
- 版改装
- 出版社共立出版
- 発売日1998/3/1
- 言語日本語
- 本の長さ368ページ
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内容(「MARC」データベースより)
生物学とその周辺分野を学ぶ人のために、具体的な例を通して数学的概念と技法を紹介。数学モデルを用いて生命現象をとらえることのおもしろさと、解析のテクニックを提供する。1990年刊の改装版。
登録情報
- 出版社 : 共立出版; 改装版 (1998/3/1)
- 発売日 : 1998/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 368ページ
- ISBN-10 : 4320054857
- ISBN-13 : 978-4320054851
- Amazon 売れ筋ランキング: - 149,036位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 213位生物学 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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大阪市生まれ、京都大学理学部卒、同大学院修了のあと、スタンフォード大学・コーネル大学で研究員、九州大学理学部助手、九州大学大学院理学研究院教授、九州大学高等研究院長などを経て。現在関西学院大学理工学部教授
数理生物学。生物学や生命科学の様々な現象に数理モデルによる理論解析を行う。
Journal of Theoretical Biology編集委員長、ほか約12誌の編集委員。
「生物の適応戦略」(サイエンス車)
「数理生物学入門」(共立出版)
「生命の数理」(共立出版)、すべて単著
「生態学事典」(共編、共立出版)など
英文原著論文は310編以上
第1回日本生態学会賞、第3回木村資生記念学術賞, アメリカ数理生物学会(SMB) Akira-Okubo prize、アメリカ芸術科学アカデミー外国人名誉会員。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年8月31日に日本でレビュー済み
2011年6月22日に日本でレビュー済み
本書は、生物学を数理モデルで理解しようと刷る、つまり理論生物学の教科書である。対称と刷る数学は、常備分方程式系、離散力学、偏微分方程式、動的最適化、ゲーム、ダイナミックゲーム、確率過程、マルコフチュエインなどであるが、後ろには多種共存や生態系の章もついている、対称としては、生態学と動物行動学に集中している。発生生物学や細胞生物学などの他分野については、同じ著者の続編「生命の数理」を読むと良い。本書はもともと著者の大学で生物学科の学生に対して数学を教えるという授業の教材をもとにふくらしたものらしい。この本は、聞くところによると社会科学、経済学などの大学院生の間でかなり呼ばれているらしい。さらには、数年前に韓国語に翻訳されたそうだ。数学の教科書は、ほとんどが物理学や工学を学ぶために書かれているので、生物学や農学、医学、そして社会科学の学生には必ずしも分かりやすくできていない。それらの数学では、何のために数学モデルがあるのか、数学を使うことでどのように分かりやすくなるのかなどということは教えない。もうすぐに定義と定理と証明、計算方法に入るのが普通である。そのため生物学や生命科学の学生は何のために数学を学ぶのか分からないままに必修なので仕方なく授業に出てくる。本書を用いれば、その点数学を用いることの意味が非常に明確に丁寧に書かれているので、格段に改善されるだろう。本書において数学を学ぶことで様々な現象がどのように理解できるようになるのかが、とても分かりやすく書かれている。その意味では数学を学ぶときに本書を例題として読まれると、数学のもっている現実の現象を把握し理解して行く力が良く身に付く。生物学関連の学生、経済学/社会科学の学生、そして数学/工学の学生にとってぜひ進めたい本である。
2008年5月4日に日本でレビュー済み
生物の増殖,共存,広がり,適応、性比などの話題をとりあげ、さまざまな数学がどのように使われるかを解説した教科書。準備としては大学1年生の数学で(というか高校の数学で)十分。数学に興味のない人は文章と図だけをみても、生物学(とくに生態学)が何するかよくわかるでしょう。これは一押しです。
2006年5月17日に日本でレビュー済み
入門書としては、解説が少なく理解しづらい部分がありました。数学が苦手な私にとって、本書が入門書としてはあまり適さないと感じました。ある程度基礎ができている方でしたら問題ないと思います。