大戦後間もない1948年(昭和23年)に発表され、横溝正史の『本陣殺人事件』や角田喜久雄の『高木家の惨劇』などと共に日本の長編本格探偵小説隆盛の幕開けを告げた記念碑的作品。
占者の勧めで筆を執り、僅か三週間で書き上げた初稿を一面識もなかった乱歩に送りつけたところ激賞され、物資の乏しかった時代にいきなり単行本扱い(「宝石」別冊として刊行)の破格のデビューを果たしたエピソードなど振り返れば神話的ですらある。
怪奇的でケレン味たっぷりの作風と濃厚な不可能興味は『本陣』と共にその後の和製本格ミステリ、現代の新本格に至るまでの潮流を左右した。その影響力は大きい。
完成度では後の『人形はなぜ殺される』(1955年)にはやや及ばないが機械的な密室トリックと巧妙に仕掛けられた心理トリックの相乗効果が素晴らしく、さらに作中における刺青への偏愛も単なる装飾に留まらず物語と有機的に結合した魅力となっている。
新版を機に約30年ぶりに再読したが初読の際の興奮が全く失われる事なく、探偵小説を読む醍醐味を再確認することが出来た。
次は新興宗教内での連続殺人を描いた傑作『呪縛の家』(1954年)や密室トリックが秀逸な『死を開く扉』(1957年)の新版を期待したい。

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刺青殺人事件 新装版 (光文社文庫) 文庫 – 2005/10/12
高木 彬光
(著)
- 本の長さ552ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2005/10/12
- ISBN-104334739601
- ISBN-13978-4334739607
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2005/10/12)
- 発売日 : 2005/10/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 552ページ
- ISBN-10 : 4334739601
- ISBN-13 : 978-4334739607
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,000,859位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2009年5月30日に日本でレビュー済み
浴室でバラバラ死体が発見されるところから物語は始まる。
このバラバラ死体には、胴体だけがなかった。
殺された女には、大蛇の刺青が背中いっぱいに彫られていた。
犯人が刺青の入った胴体だけを持ち去ったのはなぜか?
この作品が「顔のない死体」の変形である「顔だけの死体」であることがわかれば、犯人は容易にわかる。
「顔のない死体」作品では、犯人当てよりも、その煙幕に力点か置かれる。
冒頭に出てくる密室はおとりであり、密室を解くことが目的ではない。
著者の弁によれば、本陣殺人事件のトリックを組み替えたとのこと。
密室殺人にすることによって、仕掛けられた心理トリックの説明を読み落として、密室殺人を論じても意味はない。
江戸川乱歩が文章がヘタだと評価したのは、この作品ではなく、この作品の初稿版である。
その後改稿され、およそ2倍の長さとなったのが、この光文社版である。
初稿版は、扶桑社文庫から、刊行されているので、比べてみるのも面白い。
このバラバラ死体には、胴体だけがなかった。
殺された女には、大蛇の刺青が背中いっぱいに彫られていた。
犯人が刺青の入った胴体だけを持ち去ったのはなぜか?
この作品が「顔のない死体」の変形である「顔だけの死体」であることがわかれば、犯人は容易にわかる。
「顔のない死体」作品では、犯人当てよりも、その煙幕に力点か置かれる。
冒頭に出てくる密室はおとりであり、密室を解くことが目的ではない。
著者の弁によれば、本陣殺人事件のトリックを組み替えたとのこと。
密室殺人にすることによって、仕掛けられた心理トリックの説明を読み落として、密室殺人を論じても意味はない。
江戸川乱歩が文章がヘタだと評価したのは、この作品ではなく、この作品の初稿版である。
その後改稿され、およそ2倍の長さとなったのが、この光文社版である。
初稿版は、扶桑社文庫から、刊行されているので、比べてみるのも面白い。
2013年10月14日に日本でレビュー済み
前のやつは確か裸の女の人だった気がしますが、今回は若い世代受けを狙ったカバーであろうか。気に入りましたので刺青殺人事件3冊目に買いました。
密室トリックは本陣殺人事件を改良し、本質的なところはヴァンダイン作品を参考にしているこの作品。
いや、でも時代を感じるとはいえ個人的には面白い作品です。
刺青の歴史のところなんかは刺青とか不良の物だろとか思ってる私でも熱心に読んでしまいます。
神津恭介作品は、傑作が多いので古き良き推理小説を探してる方は一読してはいかがだろう。トリックが現代の小説にも引けを取らない、人形はなぜ殺されるという大作品がこのあとに残ってますよ。
それ以外の高木彬光作品なら、白昼の死角や能面殺人事件もおすすめです。
密室トリックは本陣殺人事件を改良し、本質的なところはヴァンダイン作品を参考にしているこの作品。
いや、でも時代を感じるとはいえ個人的には面白い作品です。
刺青の歴史のところなんかは刺青とか不良の物だろとか思ってる私でも熱心に読んでしまいます。
神津恭介作品は、傑作が多いので古き良き推理小説を探してる方は一読してはいかがだろう。トリックが現代の小説にも引けを取らない、人形はなぜ殺されるという大作品がこのあとに残ってますよ。
それ以外の高木彬光作品なら、白昼の死角や能面殺人事件もおすすめです。
2011年3月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
当然ですが、何もかもがかなり古いです。
トリックや真相も予想できる展開です。
近頃の多重人格やら快楽殺人やらの本よりは
理由も殺害方法も安心納得です。
文章も古いながらも読みやすく
苦にはなりません。
決して悪くはないんですが
とにかく古き良きものを読んでおこう!
という姿勢でないと、少なからずがっかりします。
トリックや真相も予想できる展開です。
近頃の多重人格やら快楽殺人やらの本よりは
理由も殺害方法も安心納得です。
文章も古いながらも読みやすく
苦にはなりません。
決して悪くはないんですが
とにかく古き良きものを読んでおこう!
という姿勢でないと、少なからずがっかりします。
2013年7月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最近、高木彬光ファンになった友人へ代表作を読んでもらうために購入したのです。ちなみに、神津恭介ファンクラブの面々に私が選択した作品について賛同を得てます。
刺青殺人事件は高木先生の処女作であり、その熱気が伝わってくることに感動します。是非とも多くの方に読んで頂きたいものです
刺青殺人事件は高木先生の処女作であり、その熱気が伝わってくることに感動します。是非とも多くの方に読んで頂きたいものです
2021年5月19日に日本でレビュー済み
とにかく冗長です。
導入からクドクドクドクド刺青の話し。
刺青の説明とバーのマダムと教授の話しをまとめて短く説明できなかったものか。
その後の事件発生までも長いし、発生してからもトロトロトロトロ話が進み、眠くなります。
日本三大探偵に神津恭介が仕方なく入っていますが、明智小五郎と金田一耕助に比べて圧倒的に知名度が低いのも頷けます。
勿体ぶってる割には、探偵が大したことない。
そう思ってしまうのは、文章がかっこつけてるだけで話がもたついているから。
話がもたついているから、探偵のすごさが伝わってきません。残念。
導入からクドクドクドクド刺青の話し。
刺青の説明とバーのマダムと教授の話しをまとめて短く説明できなかったものか。
その後の事件発生までも長いし、発生してからもトロトロトロトロ話が進み、眠くなります。
日本三大探偵に神津恭介が仕方なく入っていますが、明智小五郎と金田一耕助に比べて圧倒的に知名度が低いのも頷けます。
勿体ぶってる割には、探偵が大したことない。
そう思ってしまうのは、文章がかっこつけてるだけで話がもたついているから。
話がもたついているから、探偵のすごさが伝わってきません。残念。
2019年8月24日に日本でレビュー済み
日本の古典的本格ミステリーを選ぶと、横溝正史の獄門島、鮎川哲也の黒いトランク、坂口安吾の不連続殺人事件、そして本作は、必ずランクインする。
で、4作品で唯一未読だった本作をようやく読んでみた。
う~ん、ミステリーを読みまくっ後に読んだので、双子が出てくる時点で犯人がわかってしまう。まさか名作の誉が高いのに、そんなくだらないトリックと解決のはずがないと思い、もっと複雑に考えたりもした。
でも、そのくだらないのが解決だった。しかも、犯人がわざわざ密室を構築する理由が納得できない。水を流しっぱなしすれば、それでよくね?
再読は、ないな。
で、4作品で唯一未読だった本作をようやく読んでみた。
う~ん、ミステリーを読みまくっ後に読んだので、双子が出てくる時点で犯人がわかってしまう。まさか名作の誉が高いのに、そんなくだらないトリックと解決のはずがないと思い、もっと複雑に考えたりもした。
でも、そのくだらないのが解決だった。しかも、犯人がわざわざ密室を構築する理由が納得できない。水を流しっぱなしすれば、それでよくね?
再読は、ないな。
2020年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これを読まずして、戦後の探偵小説を語ることなかれ!
私は今回、三度目の通読だが、またまた楽しめた。
すぐれた探偵小説は再読、三読に耐えるもの。
私は今回、三度目の通読だが、またまた楽しめた。
すぐれた探偵小説は再読、三読に耐えるもの。