別にリベラルという「概念」は悪くない。
それは単に、より良い社会を目指した、人類の知恵の結実の一つなのだから。
問題なのは、リベラルという看板に群がる「運動家」や「活動家」が悪いのである。
丸山真男でさえ、過激派学生に吊し上げられた時代があった事をケロッと忘れられても困る。
サヨクが社会から信用を失ったのは、香山氏が分析する様に、ネトウヨの誹謗中傷や
サヨクが純粋無垢だったからだけではない。
リベラルの大義に胡坐をかき、言動が過激化するばかりで、現実へのアプローチが
どんどん粗雑になり、終いにはテロや内部粛清まで始めてしまった時代があった。
この時代に、リベラルの看板を背負っただけの独裁国家を盲目的に信奉したり
目的と手段が入れ替わってしまうような錯誤が生まれ、自己満足や独善的な活動が蔓延り
今日的にもそれを引きずっている人間は多い。
ウヨクの中傷とサヨクの純粋性が問題…という香山氏の分析は、自分の都合の良い周辺だけを切り取って
全体的な問題点や、そこに至った経緯を正しく分析・理解ができていないのではないだろうか。
熱に浮かされた様な活動をして過激化していったのは、ウヨクもサヨクも似たり寄ったりだったのである。
たぶんに司馬遼太郎が嫌ったようにに、イデオロギーに酩酊するような人間は
ウヨクもサヨクも、いつしかバランス感覚や現実感覚が狂い
末期にはカルト化して自滅していくのが、この国の世の常である。
そこには香山氏が指摘するように、運動姿勢に対する疑問も、組織批判も許されず
正しい大義と、負けないと言い張る理想論があるのみになる。
だからダメなんだ、と。
また、香山氏のいうような部分的イシューでも団結し、打倒自民党を計る…という方法論は
民主党がすでにやっていて、一時的には成功したが、所詮は寄せ集めにすぎず自壊した。
この新書では、巻き返しに躍起になるばかりで、民主党と同じく共通の行動原理やビジョンが希薄である。
本気で誰かと組む気ならば、リベラル思想ばかりを主張するのではなく、相手の主義・主張を理解する姿勢や度量が必要だが
そういったスケールのある人物を、香山氏を含めて今のリベラル派から見出すのは難しい。
昔ならば、中江兆民だろうか。
健全なリベラリズムとナショナリズムが拮抗しあう事で、共同体としての纏まりと個人への配慮が保たれる。
独善的に自己主張ばかりするウヨクサヨクは、結局のところ、互いに憎しみ潰し合い、過激化するばかりで
バランスというものをちっとも考えない。
愛国心はダメ、リベラルはダメ…などと互いに言い出し、相手側の概念そのものも葬り去ろうとする。
ムラ意識が強過ぎて、熱に浮かされたウヨクサヨクの「運動・活動」と、「概念」としてのナショナリズムやリベラリズムが混同されてしまう。
普通に考えれば、どちらも適度に必要です。
本書は、いまひとつ独善的な見解や自己弁護が気になるが、
それでも自分の属するリベラル派への批判や違和感が書かれている点は、変化の契機になり得ると思う。
その点は、非常に珍しい事例なので香山氏に驚かされた。
願わくば、その努力を、勢力拡大や話題作りといった目先の勢いに向けたものではなく
もっと巨視観的な、全体的なバランスの取れた言論空間の創出などに費やして欲しい。
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リベラルじゃダメですか?(祥伝社新書) (祥伝社新書 375) 新書 – 2014/8/2
香山リカ
(著)
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購入オプションとあわせ買い
昨今、ネット上では中国・韓国を批判する書き込みが目立ち、排外的なヘイトスピーチも問題となった。加えて安倍政権による集団的自衛権の行使容認が決まり、一連の動きを日本の「右傾化」と見る向きは多い。
その背景には、単に「保守派」「タカ派」の影響力が増しているだけでなく、リベラル派の衰退がある。彼らの影が薄くなった要因は、他ならぬリベラル派自身にあるのではないだろうか。端的に言えば、リベラル派は「嫌われている」のだ。
「自由・平等・公平」の実現を目指すリベラル派が、なぜ支持を集めることができないのか。リベラル派を自認する著者が、自戒を込めてその理由と対策を探る。
その背景には、単に「保守派」「タカ派」の影響力が増しているだけでなく、リベラル派の衰退がある。彼らの影が薄くなった要因は、他ならぬリベラル派自身にあるのではないだろうか。端的に言えば、リベラル派は「嫌われている」のだ。
「自由・平等・公平」の実現を目指すリベラル派が、なぜ支持を集めることができないのか。リベラル派を自認する著者が、自戒を込めてその理由と対策を探る。
- 本の長さ202ページ
- 言語日本語
- 出版社祥伝社
- 発売日2014/8/2
- ISBN-104396113757
- ISBN-13978-4396113759
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商品の説明
著者について
1960年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。精神科医、立教大学現代心理学部教授。学生時代より雑誌等に寄稿。その後も臨床経験を生かして、各メディアで社会批評、文化批評、書評 など幅広く活躍、現代人の“心の病"について洞察を続けている。著書に『弱者はもう救われないのか』(幻冬舎新書)、『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』(朝日新書)、『「看取り」の作法』『新型出生前診断と「命の選択」』(祥伝社新書)など。
登録情報
- 出版社 : 祥伝社 (2014/8/2)
- 発売日 : 2014/8/2
- 言語 : 日本語
- 新書 : 202ページ
- ISBN-10 : 4396113757
- ISBN-13 : 978-4396113759
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,272,964位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 854位祥伝社新書
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年8月17日に日本でレビュー済み
2014年9月13日に日本でレビュー済み
自分はどちらかと言えば保守系の考え方と思いますが、日本にも健全なリベラル勢力が出てきてほしいと考えています。
ですから期待して読みましたが、リベラル批判の底の浅さにがっかりしました。
物事にはすべてメリット・デメリットが裏表で存在しているのですが、日本のいわゆるリベラル(左翼)は相手の主張のメリット面を
まったく見ようとしていません。自分たちが完全に正しいという意識に占拠されていて、一種宗教化しています。
この本で、小泉郵政選挙圧勝の分析をしていますが、巷で言われている俗説の域を出るものではありません。
結局、相手側の宣伝がうまく、バカであまり物事を考えてない多くの国民がそれに乗せられただけという、以前からの左翼の主張の
繰り返しに過ぎません。
リベラルとは何かということに対しての考察も、歴史背景も、他の主義者との差異も(一方的に自分の都合よい比較はあるが)なく、
目を開かせるような意見は皆無です。
左翼系の方が自己満足を感じるために読むのならお勧めしますが、真面目に社会学的な本を読みたい方にとっては、
時間とお金が無駄になります。
香山さん、ちなみに私も原発反対です。リベラルの方々が二酸化炭素排出反対と叫んでいた3.11のずっと以前から。
ですから期待して読みましたが、リベラル批判の底の浅さにがっかりしました。
物事にはすべてメリット・デメリットが裏表で存在しているのですが、日本のいわゆるリベラル(左翼)は相手の主張のメリット面を
まったく見ようとしていません。自分たちが完全に正しいという意識に占拠されていて、一種宗教化しています。
この本で、小泉郵政選挙圧勝の分析をしていますが、巷で言われている俗説の域を出るものではありません。
結局、相手側の宣伝がうまく、バカであまり物事を考えてない多くの国民がそれに乗せられただけという、以前からの左翼の主張の
繰り返しに過ぎません。
リベラルとは何かということに対しての考察も、歴史背景も、他の主義者との差異も(一方的に自分の都合よい比較はあるが)なく、
目を開かせるような意見は皆無です。
左翼系の方が自己満足を感じるために読むのならお勧めしますが、真面目に社会学的な本を読みたい方にとっては、
時間とお金が無駄になります。
香山さん、ちなみに私も原発反対です。リベラルの方々が二酸化炭素排出反対と叫んでいた3.11のずっと以前から。
2015年9月9日に日本でレビュー済み
*
先ず、私自身は、「右」でも「左」でもない支持政党無しの無党派市民であることを申し上げておきます。その上で、この本の感想を申し上げると、香山さんのお考えが良く分からなかった、と言ふのが私の読後感でした。
そこで、香山リカさんについてではなく、日本で「リベラル」と呼ばれて居る、或いは「リベラル」を自称して居る方達についての私の気持ちを申し上げる事にします。
私は、日本の(自称)「リベラル」はおかしいと思ひます。
例えば、日本の自称「リベラル」の皆さんは、過去に二度、北朝鮮で権力の世襲が行なはれた時、その事(権力の世襲)を全く批判しませんでした。私は、この事で、日本の自称「リベラル」の皆さんに深く失望しました。だって、そうでしょう。権力の世襲ですよ。日本の世襲議員は選挙を経て居ます。そして、日本では、その事を自由に批判する事が出来ます。ところが、北朝鮮では、最高権力の座が当然の様に世襲されるのです。そしてそれを批判すれば処刑される事は明らかです。ところが、日本の自称「リベラル」の皆さんは、北朝鮮におけるこうした権力の世襲を全く批判しませんでした。
これが、リベラルなのですか?
権力の世襲を批判しない事を「リベラル」と言ふのですか。
リベラルなら、権力の世襲など、容認する筈が有りません。それなのに、北朝鮮における権力の批判を何故批判できないのでしょうか?
ですから、私は、日本で自分を「リベラル」と呼んで居る人々が本来の意味におけるリベラルだとは思って居ません。北朝鮮では、民衆が飢餓に苦しみ、収容所で罪の無い人々が拷問を受け、女性が看守にレイプされ、そこから逃亡すれば、更に激しい暴力にさらされ、或いは処刑されると伝えられて居ます。それなのに、その北朝鮮の状況を批判せず、その国における権力の世襲も批判しない日本の自称「リベラル」は、本来の意味のリベラルでは有り得ません。
次に、原発について述べます。
私は、反原発派です。
1987年以来、自ら「過激派」を名乗るほどの反原発派です。1980年代から、反原発デモにも参加して来ましたし、英字新聞で日本の原発についての投書を何度投稿し、掲載されたかわかりません。その反原発派として申し上げますが、香山さんは、福島第一原発事故以前に原発に反対する記事や本をお書きに成った事が有ったでしょうか?
率直に言ひましょう。香山さんには、活字媒体やテレビ番組で原発について警鐘を鳴らす機会がいくらでも有った筈です。しかし、香山さんは、そうした御自身の立場をなぜ、原発事故が起きる前に活用しなかったのでしょうか?私に言はせて頂ければ、香山さんは、どうでもいい様なサブカルチュアの話などをするばかりで、原子力発電の問題を取り上げようとはして来られなかったと、思ふのですが、違って居るでしょうか?
私は、20年以上前から、メディアで発言する方達の原発に対する姿勢を注意して見て来ましたが、福島第一原発事故以前に、香山さんが原発について書いておられるのを目にした記憶が有りません。この本の中で、香山さんは、脱原発派の立場をとっておられます。1980年代から一貫して反原発派の立場をとってきた者の一人として、私は、香山さんが反原発の側に加わって下さった事を歓迎しますが、矢張り、御自分のこれまでの原発に対する姿勢について総括する必要は有るのではないか?と、思ひます。
又、香山さんは、「リベラル」は脱原発派であり、「保守」は皆原発支持派であるかの様な錯覚を持っておられないでしょうか?
例えば、日本共産党は、かつては原発その物は否定しないと言ふ政策を取って居ました。又、大江健三郎氏なども、昔は原発を肯定して居たと読んで居ます。一方、「保守」と見なされる言論人の中にも、藤井厳喜氏や馬野周二氏の様に、1980年代から反原発の立場をとる論者が居ました。福島第一原発事故後は、竹田恒泰氏や小林よしのり氏、それに西尾幹二氏などが脱原発の立場から発言をしており、この方達の原発についての発言は、失礼ですが、香山さんのこの本における原発論よりも遥かに深い物です。例えば、これをお読みください。
-------------------
西尾「日本の保守はちょっとおかしいね。」
竹田「国土が汚染されても構わないという発想で発言し始めたら、それはもはや保守ではないです。」
西尾「七万人もの人達が故郷を奪われて嘆き悲しんでいるのに、一言も同情も涙もなくして強硬なことを言う櫻井よしこさんや渡部昇一さんのような考え方も私には理解できない。」
竹田「おそらく、そういった保守の原発推進派の人達の根底にあるのは、放射能は体にいいっていう知識だと思うんですよ。」
西尾「それを信じてね。」
(西尾幹二 (著), 竹田恒泰 (著)『女系天皇問題と脱原発』(飛鳥新社・2012年)288ページ )
-------------------
-------------------
また、私が信頼している人から直接聞いた話であるが、東京のがんセンターにある子供の病棟に茨城出身者が多く、東海村事故のせいとの観測が関係者の間で囁かれている。ドイツでは政府が公表し、日本では隠匿されている。今後、こうした問題は公開の場で討議されるべきである。
(西尾幹二「平和主義ではない『脱原発』」(文芸春秋・2011年) 110ページ)
--------------------
これでも、保守は皆、原発支持派でしょうか?
又、月刊WiLLは保守派の雑誌ですが、福島第一原発事故について次の様な記事を掲載して居ます。
---------------
ここで食い止めなければ事故の規模はどのくらいになったのか、と私が最初に質問すると、吉田さんは「チェルノブイリの10倍です」と、答えた。
「福島第一には、六基の原子炉があります。ひとつの原子炉が暴走を始めたら、もうこれを制御する人間が近づくことはできません。そのために次々と原子炉が暴発して、当然、(10キロ南にある)福島第二原発にもいられなくなります。ここにも四基の原子炉がありますから、これもやられて十基の原子炉がすべて暴走を始めたでしょう。(想定される事態は)チェルノブイリ事故の10倍と見てもらえばいいと思います」
もちろんチェルノブイリは黒鉛炉で、福島は軽水炉だから原子炉の型が違う。しかし、十基の原子炉がすべて暴走する事態を想像したら、誰もが背筋が寒くなるだろう。(中略)
当然、東京にも住めなくなるわけで、事故の拡大を防げなかったら、日本の首都は「大阪」になっていたことになる。吉田さんのその言葉で、吉田さんを含め現場の人間がどういう被害規模を想定して闘ったのかが、私にはわかった。
のちに原子力安全委員会の斑目(まだらめ)春樹委員長(当時)は、筆者にこう答えている。
「あの時、もし事故の拡大を止められなかったら、福島第一と第二だけでなく、茨城にある東海第二発電所もやられますから、(被害規模は)吉田さんの言う“チェルノブイリの十倍”よりももっと大きくなったと思います。私は、日本は無事な北海道と西日本、そして汚染によって住めなくなった“東日本”の三つに“分割”されていた、と思います」
それは、日本が“三分割”されるか否かの闘いだったのである。
(門田隆将「日本を救った男『吉田昌郎』の遺言」(月刊Will(ウィル) 2013年 9月号30~39ページ )同誌同号33~34ページ)
---------------
こう言ふ本や記事に香山さんは目を通しておられるのでしょうか?
反原発派の一人として申し上げます。原発を巡る議論は、「保守」と「リベラル」と言ふ対立の枠組みとは無関係の物です。それを「保守」対「リベラル」、或いは「左右」の対立事項にして来たのは、産経新聞をはじめとする原発支持派のメディアです。
彼らは、本来は「左右」の問題ではない原発問題を「左右」の問題にすり替え、「左翼」が嫌ひな日本の保守層を原発支持派につなぎ留めて来ました。
それが、福島第一原発事故を契機に変化し、保守層の中に、原発問題は「左右」の対立事項ではないのではないか?と言ふ気持ちが芽生えたのが、同事故後の日本の世論の変化でした。永年の反原発派である私はそれを感じ、原発問題を「左右」の枠から解き放つ事に微力ながら努力して来ました。
ところが、香山さんは、その原発問題を、再び「左右」対立の問題に戻そうとして居るのです。
率直に言はせて頂きます。この本における香山さんのこうした言説は、反原発運動にとって迷惑千万です。香山さんは、原発問題を「保守とリベラル」と言ふ、原発問題とは本来全く無関係な枠組みにこの問題を戻そうとして居ますが、これほど、原発推進派を喜ばす物は有りません。それが分からないのだとしたら、香山さんは、原発問題について、余りにも不勉強な方なのだと思はざるを得ません。
こうした事を理解した上で、香山さんが、原発について発言されることを期待致します。
(厳しい事を書いてすみませんでした)
(西岡昌紀・内科医)
*
先ず、私自身は、「右」でも「左」でもない支持政党無しの無党派市民であることを申し上げておきます。その上で、この本の感想を申し上げると、香山さんのお考えが良く分からなかった、と言ふのが私の読後感でした。
そこで、香山リカさんについてではなく、日本で「リベラル」と呼ばれて居る、或いは「リベラル」を自称して居る方達についての私の気持ちを申し上げる事にします。
私は、日本の(自称)「リベラル」はおかしいと思ひます。
例えば、日本の自称「リベラル」の皆さんは、過去に二度、北朝鮮で権力の世襲が行なはれた時、その事(権力の世襲)を全く批判しませんでした。私は、この事で、日本の自称「リベラル」の皆さんに深く失望しました。だって、そうでしょう。権力の世襲ですよ。日本の世襲議員は選挙を経て居ます。そして、日本では、その事を自由に批判する事が出来ます。ところが、北朝鮮では、最高権力の座が当然の様に世襲されるのです。そしてそれを批判すれば処刑される事は明らかです。ところが、日本の自称「リベラル」の皆さんは、北朝鮮におけるこうした権力の世襲を全く批判しませんでした。
これが、リベラルなのですか?
権力の世襲を批判しない事を「リベラル」と言ふのですか。
リベラルなら、権力の世襲など、容認する筈が有りません。それなのに、北朝鮮における権力の批判を何故批判できないのでしょうか?
ですから、私は、日本で自分を「リベラル」と呼んで居る人々が本来の意味におけるリベラルだとは思って居ません。北朝鮮では、民衆が飢餓に苦しみ、収容所で罪の無い人々が拷問を受け、女性が看守にレイプされ、そこから逃亡すれば、更に激しい暴力にさらされ、或いは処刑されると伝えられて居ます。それなのに、その北朝鮮の状況を批判せず、その国における権力の世襲も批判しない日本の自称「リベラル」は、本来の意味のリベラルでは有り得ません。
次に、原発について述べます。
私は、反原発派です。
1987年以来、自ら「過激派」を名乗るほどの反原発派です。1980年代から、反原発デモにも参加して来ましたし、英字新聞で日本の原発についての投書を何度投稿し、掲載されたかわかりません。その反原発派として申し上げますが、香山さんは、福島第一原発事故以前に原発に反対する記事や本をお書きに成った事が有ったでしょうか?
率直に言ひましょう。香山さんには、活字媒体やテレビ番組で原発について警鐘を鳴らす機会がいくらでも有った筈です。しかし、香山さんは、そうした御自身の立場をなぜ、原発事故が起きる前に活用しなかったのでしょうか?私に言はせて頂ければ、香山さんは、どうでもいい様なサブカルチュアの話などをするばかりで、原子力発電の問題を取り上げようとはして来られなかったと、思ふのですが、違って居るでしょうか?
私は、20年以上前から、メディアで発言する方達の原発に対する姿勢を注意して見て来ましたが、福島第一原発事故以前に、香山さんが原発について書いておられるのを目にした記憶が有りません。この本の中で、香山さんは、脱原発派の立場をとっておられます。1980年代から一貫して反原発派の立場をとってきた者の一人として、私は、香山さんが反原発の側に加わって下さった事を歓迎しますが、矢張り、御自分のこれまでの原発に対する姿勢について総括する必要は有るのではないか?と、思ひます。
又、香山さんは、「リベラル」は脱原発派であり、「保守」は皆原発支持派であるかの様な錯覚を持っておられないでしょうか?
例えば、日本共産党は、かつては原発その物は否定しないと言ふ政策を取って居ました。又、大江健三郎氏なども、昔は原発を肯定して居たと読んで居ます。一方、「保守」と見なされる言論人の中にも、藤井厳喜氏や馬野周二氏の様に、1980年代から反原発の立場をとる論者が居ました。福島第一原発事故後は、竹田恒泰氏や小林よしのり氏、それに西尾幹二氏などが脱原発の立場から発言をしており、この方達の原発についての発言は、失礼ですが、香山さんのこの本における原発論よりも遥かに深い物です。例えば、これをお読みください。
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西尾「日本の保守はちょっとおかしいね。」
竹田「国土が汚染されても構わないという発想で発言し始めたら、それはもはや保守ではないです。」
西尾「七万人もの人達が故郷を奪われて嘆き悲しんでいるのに、一言も同情も涙もなくして強硬なことを言う櫻井よしこさんや渡部昇一さんのような考え方も私には理解できない。」
竹田「おそらく、そういった保守の原発推進派の人達の根底にあるのは、放射能は体にいいっていう知識だと思うんですよ。」
西尾「それを信じてね。」
(西尾幹二 (著), 竹田恒泰 (著)『女系天皇問題と脱原発』(飛鳥新社・2012年)288ページ )
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また、私が信頼している人から直接聞いた話であるが、東京のがんセンターにある子供の病棟に茨城出身者が多く、東海村事故のせいとの観測が関係者の間で囁かれている。ドイツでは政府が公表し、日本では隠匿されている。今後、こうした問題は公開の場で討議されるべきである。
(西尾幹二「平和主義ではない『脱原発』」(文芸春秋・2011年) 110ページ)
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これでも、保守は皆、原発支持派でしょうか?
又、月刊WiLLは保守派の雑誌ですが、福島第一原発事故について次の様な記事を掲載して居ます。
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ここで食い止めなければ事故の規模はどのくらいになったのか、と私が最初に質問すると、吉田さんは「チェルノブイリの10倍です」と、答えた。
「福島第一には、六基の原子炉があります。ひとつの原子炉が暴走を始めたら、もうこれを制御する人間が近づくことはできません。そのために次々と原子炉が暴発して、当然、(10キロ南にある)福島第二原発にもいられなくなります。ここにも四基の原子炉がありますから、これもやられて十基の原子炉がすべて暴走を始めたでしょう。(想定される事態は)チェルノブイリ事故の10倍と見てもらえばいいと思います」
もちろんチェルノブイリは黒鉛炉で、福島は軽水炉だから原子炉の型が違う。しかし、十基の原子炉がすべて暴走する事態を想像したら、誰もが背筋が寒くなるだろう。(中略)
当然、東京にも住めなくなるわけで、事故の拡大を防げなかったら、日本の首都は「大阪」になっていたことになる。吉田さんのその言葉で、吉田さんを含め現場の人間がどういう被害規模を想定して闘ったのかが、私にはわかった。
のちに原子力安全委員会の斑目(まだらめ)春樹委員長(当時)は、筆者にこう答えている。
「あの時、もし事故の拡大を止められなかったら、福島第一と第二だけでなく、茨城にある東海第二発電所もやられますから、(被害規模は)吉田さんの言う“チェルノブイリの十倍”よりももっと大きくなったと思います。私は、日本は無事な北海道と西日本、そして汚染によって住めなくなった“東日本”の三つに“分割”されていた、と思います」
それは、日本が“三分割”されるか否かの闘いだったのである。
(門田隆将「日本を救った男『吉田昌郎』の遺言」(月刊Will(ウィル) 2013年 9月号30~39ページ )同誌同号33~34ページ)
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こう言ふ本や記事に香山さんは目を通しておられるのでしょうか?
反原発派の一人として申し上げます。原発を巡る議論は、「保守」と「リベラル」と言ふ対立の枠組みとは無関係の物です。それを「保守」対「リベラル」、或いは「左右」の対立事項にして来たのは、産経新聞をはじめとする原発支持派のメディアです。
彼らは、本来は「左右」の問題ではない原発問題を「左右」の問題にすり替え、「左翼」が嫌ひな日本の保守層を原発支持派につなぎ留めて来ました。
それが、福島第一原発事故を契機に変化し、保守層の中に、原発問題は「左右」の対立事項ではないのではないか?と言ふ気持ちが芽生えたのが、同事故後の日本の世論の変化でした。永年の反原発派である私はそれを感じ、原発問題を「左右」の枠から解き放つ事に微力ながら努力して来ました。
ところが、香山さんは、その原発問題を、再び「左右」対立の問題に戻そうとして居るのです。
率直に言はせて頂きます。この本における香山さんのこうした言説は、反原発運動にとって迷惑千万です。香山さんは、原発問題を「保守とリベラル」と言ふ、原発問題とは本来全く無関係な枠組みにこの問題を戻そうとして居ますが、これほど、原発推進派を喜ばす物は有りません。それが分からないのだとしたら、香山さんは、原発問題について、余りにも不勉強な方なのだと思はざるを得ません。
こうした事を理解した上で、香山さんが、原発について発言されることを期待致します。
(厳しい事を書いてすみませんでした)
(西岡昌紀・内科医)
*
2014年8月6日に日本でレビュー済み
自分のしたいようにしたい。
歌いたいように歌いたい。
安倍ちゃんの指図で戦争なんかに行きたくない。
好きな時に好きなところで好きな事をして
人には迷惑をかけず、
自分の稼ぎで生活をしたい。
子どもに十分な教育をつけて
人並みに年老いた親の世話も出来なくちゃ。
病の人や、親の無い子ども
弱い人たちも笑って暮らせて
失敗した人もやり直せる世の中が好きだ。
中国、韓国、朝日新聞は好きだし
鈴木邦男も大好き。
日教組のどこが悪いのかわからない。
そうか。
香山さん、僕も立派な「リベラル」です。
本心では、別に嫌われたって構わない。
国の行く末を多数決で決められる不安は確かにあるが
「マイナスの連帯」がナショナリズム(by佐藤優)ならば、
「リベラル」には、群れずに一人でいるのが向いているんではないかな?
(以前の投稿を加筆修正しました。)
歌いたいように歌いたい。
安倍ちゃんの指図で戦争なんかに行きたくない。
好きな時に好きなところで好きな事をして
人には迷惑をかけず、
自分の稼ぎで生活をしたい。
子どもに十分な教育をつけて
人並みに年老いた親の世話も出来なくちゃ。
病の人や、親の無い子ども
弱い人たちも笑って暮らせて
失敗した人もやり直せる世の中が好きだ。
中国、韓国、朝日新聞は好きだし
鈴木邦男も大好き。
日教組のどこが悪いのかわからない。
そうか。
香山さん、僕も立派な「リベラル」です。
本心では、別に嫌われたって構わない。
国の行く末を多数決で決められる不安は確かにあるが
「マイナスの連帯」がナショナリズム(by佐藤優)ならば、
「リベラル」には、群れずに一人でいるのが向いているんではないかな?
(以前の投稿を加筆修正しました。)
2014年10月13日に日本でレビュー済み
とても精力的に本を書かれている著者だな、と、かねてから思っていましたが、
この本では、日本の社会や将来について、大変真面目に、危機感を持って考察されていて、ほぼ共感しました。
某大阪市長の感性の粗雑さには私も辟易していましたので、著者の人物評にまったく同感です(大笑)
でも、基本的に性の合わない人物でも、意見が一致する時は、手を結ばなければならないこともある、という現実的社会的意見にも、そうですよね〜、と思いました。
”リベラル” と、”新自由主義” の、相違点/類似点 についても考察されていて、
「新自由主義の根底にあるのは、思想信条というより市場原理、つまり ”儲けてナンボ” という現実的な損得勘定だ」
には、な〜るほど〜☆ でした。
”「努力が足りない人が苦しむのも当然」という弱肉強食の新自由主義” という文もあり、これにも納得しました。
リベラルとネオリベラリズムに関連して、他ソースの文を引用します:
”ブッシュさんが好きな自由が「freedom」、ブッシュさんが嫌いな自由が「liberty」。
自由の女神の自由は「liberty」、圧制からの解放による自由の意味。社民主義は「リベラル勢力」と言われる。
「freedom」は社会主義=統制と対比するとき好んで使われる。”
上手い!と思いましたが、いかがでしょうか。
この本では、日本の社会や将来について、大変真面目に、危機感を持って考察されていて、ほぼ共感しました。
某大阪市長の感性の粗雑さには私も辟易していましたので、著者の人物評にまったく同感です(大笑)
でも、基本的に性の合わない人物でも、意見が一致する時は、手を結ばなければならないこともある、という現実的社会的意見にも、そうですよね〜、と思いました。
”リベラル” と、”新自由主義” の、相違点/類似点 についても考察されていて、
「新自由主義の根底にあるのは、思想信条というより市場原理、つまり ”儲けてナンボ” という現実的な損得勘定だ」
には、な〜るほど〜☆ でした。
”「努力が足りない人が苦しむのも当然」という弱肉強食の新自由主義” という文もあり、これにも納得しました。
リベラルとネオリベラリズムに関連して、他ソースの文を引用します:
”ブッシュさんが好きな自由が「freedom」、ブッシュさんが嫌いな自由が「liberty」。
自由の女神の自由は「liberty」、圧制からの解放による自由の意味。社民主義は「リベラル勢力」と言われる。
「freedom」は社会主義=統制と対比するとき好んで使われる。”
上手い!と思いましたが、いかがでしょうか。