安藤健二氏の封印作品第2弾。今度も文庫化にあたって図版が大幅に増え、かなり加筆されてます。
本書では作品が丸ごと封印されている封印作品の真相が判明します。
本書の作品の中で「キャンディキャンディ」が原作者と漫画家の間で裁判になってたのは知ってましたが、読んでみて想像以上に大変な問題なのだと知りました。「世界名作劇場」で有名な日本アニメーションが漫画家のいがらし氏と絡んで「キャンディキャンディ」のリメイクを製作するため暗躍してるのは驚きでした。また、本書で暴露されているいがらし氏の金の亡者ぶりもすごいです。原作者の水木氏が激怒するのも当然かと。
以前、2ちゃんねるのいがらし板で、日本アニメ関係者が「いがらし氏は日本アニメ社長の本橋氏と懇意で、日本アニメの名作枠で「キャンディキャンディ」のリメイクを作ろうとしていた。日本アニメはいがらし氏に契約金などを払った結果莫大な損失を出し、さらにいがらし氏の騒動に嫌気がさした製作スタッフ多数が退社し、日本アニメは実質的に崩壊した」と書いてましたが、本書でその内部告発が事実だったことを知りました。
こういうアニメ製作サイドの裏事情はアニメ誌とかでは取り上げないので貴重です。
他にも、長らく理由不明で封印されていた「ジャングル黒べえ」が、どうも黒人差別批判を恐れて封印されたらしいということも書かれてます。それを調べるために著者が実際に出版関係者にアポを取ってるのも感心します。そして、封印の遠因となった70年代〜80年代の部落解放同盟によるメディアへの差別表現批判がものすごいものだったというのは衝撃でした。現在、漫画やアニメの表現規制が問題になってますが、当時のバッシングの凄さはそんなレベルではなかったとは。
著者は数年前に亡くなった出崎統氏へのインタビューも行ってます。これも、現在ではもう不可能なので貴重です。
加筆された部分では、長年「オバケのQ太郎」が封印されていた本当の理由が追加取材によって判明してます。かなり救いようのない理由ですが。
なお、本書出版後「オバQ」と「黒べえ」の封印が解除され再版されたことを追記しておきます。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで (だいわ文庫) (だいわ文庫 F 66-2) 文庫 – 2007/9/10
安藤 健二
(著)
- 本の長さ339ページ
- 言語日本語
- 出版社大和書房
- 発売日2007/9/10
- ISBN-104479301283
- ISBN-13978-4479301288
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 大和書房 (2007/9/10)
- 発売日 : 2007/9/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 339ページ
- ISBN-10 : 4479301283
- ISBN-13 : 978-4479301288
- Amazon 売れ筋ランキング: - 887,800位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 896位だいわ文庫
- - 5,366位漫画・アニメ・BL(イラスト集・オフィシャルブック)
- - 5,562位演劇 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
1976年埼玉県さいたま市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、産経新聞東京本社に入社。デジタルメディア局や、さいたま総局に勤務。2004年に退社して以降は、ノンフィクション・ライターとして活動中。主にサブカルチャーの裏を暴くルポルタージュを発表している。代表作は、「封印作品の謎」(大田出版)を初めとした封印作品シリーズ。同シリーズでは、「キャンディ・キャンディ」などの名作が公表されなくなった謎を追っている。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2011年9月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『
謎
』より先に読んだ。ウワサ通り面白かったのだけど、気にかかった点だけ書かせてもらいます。
今更の指摘だろうけど、これって探偵小説そのものですよね。「ルポルタージュ」って大体そんな感じなんだけど、発端に事件(作品の封印)があって、探偵(著者)がさまざまな障害を乗り越えながら隠された真相(封印の理由)と犯人(封印の責任者)を探っていくわけです。
しかし探偵小説で最後に明かされる真相や犯人って、少なくともオーソドックスな作品では読者に「アリエネェ〜w」と嘲笑されないような、金銭欲や怨恨、身近な誰かといった範囲に収まっているのが普通で、だからそれ自体に大した意外性はない。じゃあ何で読むのかって言えば(私はあんまり読まないが……)、謎解きのプロセスが愉しいんでしょうね。
で、本書ですが、構成はまったく探偵小説ではあるものの、扱われた4つの事件(封印作品)のいずれについても「真相」は結局のところ暗示されるだけで「闇」の彼方に留まるのですから、ある意味では探索のプロセスしかないとも言えます。起・承・転・転・転・転……みたいな、「結」が先延ばしされて宙吊り状態に置かれ、著者が「あーでもない、こーでもない」と右往左往する姿を追うことで作品を構成していることになります。だって結局「真相」が明らかになっていないのに、これらの文章が発表されているということは、それらの文章の価値が「真相」そのものにはない、ということでしょうから。一般に小説というものは概ねそういう仕組みになっているという説もありますが、探偵小説のジャンルで考えるならある種のリミットかもしれません。
もっとも、ひとつの作品である以上、この宙吊り状態を永遠に続けるわけにはいきませんから、一時的ではあれ、どこかで作品は停止します。それは探索がそれ以上前へ進められない暗礁に乗り上げたとか、単純に締切があるからとか、いろいろなケースがあるでしょう。オバQを扱った章については、改めて明らかになった新事実に基づいて、文庫版には新章を追加していますが、それでもすべてが明らかになったわけではありません。
ただ、著者が本書における探索行為を正当化するため、躊躇しながらではあれ随処で「正義」に縋ろうとするところは、いただけない気がした。十分な討論もない、事なかれ主義による作品封印に対して著者は疑問を投げかけるが、私には著者が本気でそういう問題を掘り下げようとしているようには思えなかった。どこかで「正義」のモノサシがないと不安になるのは、新聞記者的な感性かもしれない。
今更の指摘だろうけど、これって探偵小説そのものですよね。「ルポルタージュ」って大体そんな感じなんだけど、発端に事件(作品の封印)があって、探偵(著者)がさまざまな障害を乗り越えながら隠された真相(封印の理由)と犯人(封印の責任者)を探っていくわけです。
しかし探偵小説で最後に明かされる真相や犯人って、少なくともオーソドックスな作品では読者に「アリエネェ〜w」と嘲笑されないような、金銭欲や怨恨、身近な誰かといった範囲に収まっているのが普通で、だからそれ自体に大した意外性はない。じゃあ何で読むのかって言えば(私はあんまり読まないが……)、謎解きのプロセスが愉しいんでしょうね。
で、本書ですが、構成はまったく探偵小説ではあるものの、扱われた4つの事件(封印作品)のいずれについても「真相」は結局のところ暗示されるだけで「闇」の彼方に留まるのですから、ある意味では探索のプロセスしかないとも言えます。起・承・転・転・転・転……みたいな、「結」が先延ばしされて宙吊り状態に置かれ、著者が「あーでもない、こーでもない」と右往左往する姿を追うことで作品を構成していることになります。だって結局「真相」が明らかになっていないのに、これらの文章が発表されているということは、それらの文章の価値が「真相」そのものにはない、ということでしょうから。一般に小説というものは概ねそういう仕組みになっているという説もありますが、探偵小説のジャンルで考えるならある種のリミットかもしれません。
もっとも、ひとつの作品である以上、この宙吊り状態を永遠に続けるわけにはいきませんから、一時的ではあれ、どこかで作品は停止します。それは探索がそれ以上前へ進められない暗礁に乗り上げたとか、単純に締切があるからとか、いろいろなケースがあるでしょう。オバQを扱った章については、改めて明らかになった新事実に基づいて、文庫版には新章を追加していますが、それでもすべてが明らかになったわけではありません。
ただ、著者が本書における探索行為を正当化するため、躊躇しながらではあれ随処で「正義」に縋ろうとするところは、いただけない気がした。十分な討論もない、事なかれ主義による作品封印に対して著者は疑問を投げかけるが、私には著者が本気でそういう問題を掘り下げようとしているようには思えなかった。どこかで「正義」のモノサシがないと不安になるのは、新聞記者的な感性かもしれない。
2010年9月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本作では『オバQ』や『キャンディ・キャンディ』というメジャー作品の封印が採り上げられており、読者の目を引きつける。ただ、これら2作品は原因を追っていくと、究極的には人間関係のトラブルに起因することがわかってきて、どうしてもゴシップぽくなってしまい、結果として良質なルポルタージュとなっているとは言い難い。
しかし、私にとっては残り2話『サンダーマスク』と『ジャングル黒べえ』が大きな収穫だった。
『サンダーマスク』は手塚治虫の周辺が、苦しい手塚プロの台所事情を何とかしようと、一世を風靡したウルトラマンにあやかって<手塚治虫+特撮もの>のコラボによってヒット作を低予算で作ろうと挑んだ作品だ。
しかし、結果から言えば、視聴率的にはウルトラマンほどヒットせず、しかも、権利関係のトラブルから作品は封印されることになってしまう。この「トラブル」が具体的にどういうトラブルだったのかが本作の肝なので、是非一読してほしい。
視聴率的には振るわなかったが、リアルタイムで見ていた世代に聞くと、等身大のまま変身して戦うところなどが、ウルトラマンよりもごっこ遊びに向いていて、身近に感じられるヒーローとして人気だったという。
子どもに夢を与えていた作品が、業界の闇の部分により封印に追い込まれた真相を明らかにしていったという意味で、前作にも劣らぬ快作である。
『ジャングル黒べえ』では、「黒人差別をなくす会」の実体がどういうものかを克明に描き出して、実質組織とも言えない「個人」に大会社の幾多の作品が回収・絶版を余儀なくされていった現実を赤裸々に描いていく。
そして、今我々が「手塚治虫全集」の巻末で目にするあの文章「現在の価値観からすると差別に当たる表現がありますが…云々」あの文章がどのような苦闘の元に作られ、誰のどういう熱意によって作品が救われたかを描いていく。
あらゆる「コンテンツ」を愛する人に読んで、そして考えてほしい一冊である。
しかし、私にとっては残り2話『サンダーマスク』と『ジャングル黒べえ』が大きな収穫だった。
『サンダーマスク』は手塚治虫の周辺が、苦しい手塚プロの台所事情を何とかしようと、一世を風靡したウルトラマンにあやかって<手塚治虫+特撮もの>のコラボによってヒット作を低予算で作ろうと挑んだ作品だ。
しかし、結果から言えば、視聴率的にはウルトラマンほどヒットせず、しかも、権利関係のトラブルから作品は封印されることになってしまう。この「トラブル」が具体的にどういうトラブルだったのかが本作の肝なので、是非一読してほしい。
視聴率的には振るわなかったが、リアルタイムで見ていた世代に聞くと、等身大のまま変身して戦うところなどが、ウルトラマンよりもごっこ遊びに向いていて、身近に感じられるヒーローとして人気だったという。
子どもに夢を与えていた作品が、業界の闇の部分により封印に追い込まれた真相を明らかにしていったという意味で、前作にも劣らぬ快作である。
『ジャングル黒べえ』では、「黒人差別をなくす会」の実体がどういうものかを克明に描き出して、実質組織とも言えない「個人」に大会社の幾多の作品が回収・絶版を余儀なくされていった現実を赤裸々に描いていく。
そして、今我々が「手塚治虫全集」の巻末で目にするあの文章「現在の価値観からすると差別に当たる表現がありますが…云々」あの文章がどのような苦闘の元に作られ、誰のどういう熱意によって作品が救われたかを描いていく。
あらゆる「コンテンツ」を愛する人に読んで、そして考えてほしい一冊である。
2011年11月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安藤さんの取材により、だいたいこういうことがあったんだ、ということは理解できます。今となっては相当むかしのことでしょうから、関係者にあたるだけでもたいへんだったと思われますが、いろいろな人に取材されたことがわかります。昭和30年〜40年代の著作権管理のいいかげんさとか、著作権者同士の争いとか、子ども向け商品の裏側がこんな腹黒いことになっていたとは・・・。オバQはリアルでテレビアニメ見た記憶があり、バケラッタというセリフはよく覚えてますし、かわいいキャラだったと思います。原作者が別々に活動したことで、著作権管理者の意向もあり、復活がままならないというのが、真相のようです。悲しいですがいつの日か、封印が解け、みれるようになればうれしいです。
2010年1月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
暇つぶしに読むには十分面白かったです。そういう事情もあるんだなあって。藤子不二雄の作者両人ではなく親族の確執は、遣る瀬ねぇ話だなと思いました。
2012年9月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
取材・執筆の苦労を考えると、古本で購入したことがどうにも執筆者に申し訳なく、新刊で買いなおした次第です。
著者の鬼気迫る執念を心からねぎらいたい。
著者の鬼気迫る執念を心からねぎらいたい。
2012年12月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最近海賊版サンダーマスクのDVD入手してみましたが作者同様の感想を持ちました。いわゆる「大人の事情」で見られない事に憤り、もどかしさを感じます。
2009年4月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
封印作品が封印されるに至った過程に迫る第二弾。前作より1点少ない、四点の作品についてそれぞれがいつ、誰によって、どのような理由から封印されてしまったのかが解き明かされます。
収録されているのは、「キャンディ・キャンディ」、「サンダーマスク」、「ジャングル黒べえ」、「オバケのQ太郎」。
前作より、理由の核心に触れているものが多いように思いました。
今回取り上げられたものは、簡単に言ってしまえば版権に問題があって市場に出なくなってしまったものがほとんどですが、そこにはまた、簡単には片付けられない関係者の心の問題があるようです。
当事者は語りたがらない、しかし多くのファンはその「なぜ」を知りたい・・・。
その微妙な部分に、作者は誠実な態度で光を当てています。
読み終わってなんともやるせない気持ちになりました。
収録されているのは、「キャンディ・キャンディ」、「サンダーマスク」、「ジャングル黒べえ」、「オバケのQ太郎」。
前作より、理由の核心に触れているものが多いように思いました。
今回取り上げられたものは、簡単に言ってしまえば版権に問題があって市場に出なくなってしまったものがほとんどですが、そこにはまた、簡単には片付けられない関係者の心の問題があるようです。
当事者は語りたがらない、しかし多くのファンはその「なぜ」を知りたい・・・。
その微妙な部分に、作者は誠実な態度で光を当てています。
読み終わってなんともやるせない気持ちになりました。