聾者の老シェークスピア俳優、ドルリー・レーンを探偵役とした「レーン四部作」の第一作。エラリー・クイーン(バーナビー・ロスというべきか?)の記念碑的作品です。
満員電車の中で株式仲買人が殺害される。凶器はポケットに入れられた毒針のついたコルク玉。犯人は誰か?第二の殺人に続き、容疑者と目された同僚もまた殺される。彼が残した左手のサインの意味は?
正直、現代のスレた読者にはすぐ犯人の見当はついてしまうでしょう。ダイイングメッセージも肩すかし気味ではあります。
しかし、すべての事実がつながり犯人が特定される論理の展開は今読んでもあざやか。謎解きのカタルシスは十分すぎるほど味わえます。
良い古典は現代においてもその価値は揺るぎません。本作は推理小説を語る上で必ず押さえておかなければならない一作であります。
なお、本作はあくまで「レーン四部作」の第一作です。これを読んだ後は必ず残りの「
Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)
」「
Zの悲劇 (創元推理文庫)
」「
レーン最後の事件 (創元推理文庫 104-4)
」も読まなくてはなりません。順番通りに読むことも必ずです。
「レーン四部作」をすべて読み終えたとき、エラリー・クイーンの謎解きの末の意外な犯人という推理小説の「型」への狂おしいまでの執念に感動することでしょう。本作はまだその幕開けなのです。

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Xの悲劇 (創元推理文庫) (創元推理文庫 104-1) 文庫 – 1960/2/7
ニューヨークの電車の中で起きた奇怪な殺人事件。おそるべきニコチン毒をぬったコルク玉という新手の凶器が使われたのだ。この密室犯罪の容疑者は大勢いるが、聾者の探偵、かつての名優ドルリー・レーンの捜査は、着々とあざやかに進められる。“読者よ、すべての手がかりは与えられた。犯人は誰か?”と有名な挑戦をする、本格中の本格。
- 本の長さ429ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日1960/2/7
- ISBN-104488104010
- ISBN-13978-4488104016
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (1960/2/7)
- 発売日 : 1960/2/7
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 429ページ
- ISBN-10 : 4488104010
- ISBN-13 : 978-4488104016
- Amazon 売れ筋ランキング: - 265,159位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,022位創元推理文庫
- - 1,669位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- - 3,442位英米文学
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年5月30日に日本でレビュー済み
本四部作はどれをとっても本格ミステリのお手本のような作品だが、そのトップを飾る本書はのクイーンの気合いの入れ方は、ただごとではない。
まさに傑作であり、しかも「Y〜」よりも町中が舞台の、広い範囲から容疑者を絞り込んで行く、というのちの「九尾の猫」にも似た設定がすばらしい。
はたして、犯人が特定できるのか?という興味もさることながら、その鉄板ロジックは見事!の一言であり、そして犯人が指摘されたときの「えっえっ???」という意外性は、本格ミステリのまさに醍醐味である。
ミステリを読みなれた、あるいみすれたマニアにとっては、それほど意外な犯人でも奇抜なロジックでもないだろう。
だからこそ、ミステリの入門にはピッタリのカッチリとした、本格ミステリというのはこういうスタイルのものだという刷り込みには、最も適した作品だといえるだろう。
そして、あのダイイング・メッセージだ。
簡単でいて意外な、のちのクイーンの妙にこねくり回したようなものとは違って、とても分かり易いし良い。
まさにシンプル・イズ・ベストである。
歴史的名作であり、必読の作品である。
まさに傑作であり、しかも「Y〜」よりも町中が舞台の、広い範囲から容疑者を絞り込んで行く、というのちの「九尾の猫」にも似た設定がすばらしい。
はたして、犯人が特定できるのか?という興味もさることながら、その鉄板ロジックは見事!の一言であり、そして犯人が指摘されたときの「えっえっ???」という意外性は、本格ミステリのまさに醍醐味である。
ミステリを読みなれた、あるいみすれたマニアにとっては、それほど意外な犯人でも奇抜なロジックでもないだろう。
だからこそ、ミステリの入門にはピッタリのカッチリとした、本格ミステリというのはこういうスタイルのものだという刷り込みには、最も適した作品だといえるだろう。
そして、あのダイイング・メッセージだ。
簡単でいて意外な、のちのクイーンの妙にこねくり回したようなものとは違って、とても分かり易いし良い。
まさにシンプル・イズ・ベストである。
歴史的名作であり、必読の作品である。
2010年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
高評価につられシリーズ全作買ってみたが、開始早々、
1作目のこれをして、自分には合わないのでは・・・と感じました。
当然ながら、素晴らしい点とその真逆の点両方があります。
秀逸だったのは、確かに読者にも作者が意図した真実に辿り着けるよう、
各所に非常に巧みにヒントが散りばめられていた点。
物語の最後、レーンが事件を解説していく上で、
「なるほどそう言われれば!」と唸ってしまいました。
この作品が発売されたミステリー最盛期の頃は、
本気でこの謎に取り組んだ読者もいたのかも知れませんね。
それくらい非常によく練られており、また整合性と分かりやすさ、
両方が素晴らしいバランスで存在していると思います。
しかし一方で、そのトリック、その捜査方法は、
あまりにもご都合主義過ぎると思わざるを得ませんでした。
読者が探偵役よりも先に真実に辿り着けるかどうかではなく、
レーンのその行動があまりにも非現実的な点に違和感を感じました。
そもそもリアリティに徹していながら、
ことレーンの行動全てが誰にも露呈せず自然に進行したこと、
そこがあまりにも腑に落ちませんでした。
大胆な手法と、読者に対する挑戦姿勢、当時としては画期的なトリック等、
確かに素晴らしい点は多々存在します。
それと同時に、個人的には諸手を挙げて評価するには
あまりにも都合がよすぎる展開は評価できません。
以降の作品も自分には合わず、過大期待だったようです。
それでもミステリーの名作であると言われても確かに納得はでき、
その点を考慮しまして☆3つとさせて頂きます。
1作目のこれをして、自分には合わないのでは・・・と感じました。
当然ながら、素晴らしい点とその真逆の点両方があります。
秀逸だったのは、確かに読者にも作者が意図した真実に辿り着けるよう、
各所に非常に巧みにヒントが散りばめられていた点。
物語の最後、レーンが事件を解説していく上で、
「なるほどそう言われれば!」と唸ってしまいました。
この作品が発売されたミステリー最盛期の頃は、
本気でこの謎に取り組んだ読者もいたのかも知れませんね。
それくらい非常によく練られており、また整合性と分かりやすさ、
両方が素晴らしいバランスで存在していると思います。
しかし一方で、そのトリック、その捜査方法は、
あまりにもご都合主義過ぎると思わざるを得ませんでした。
読者が探偵役よりも先に真実に辿り着けるかどうかではなく、
レーンのその行動があまりにも非現実的な点に違和感を感じました。
そもそもリアリティに徹していながら、
ことレーンの行動全てが誰にも露呈せず自然に進行したこと、
そこがあまりにも腑に落ちませんでした。
大胆な手法と、読者に対する挑戦姿勢、当時としては画期的なトリック等、
確かに素晴らしい点は多々存在します。
それと同時に、個人的には諸手を挙げて評価するには
あまりにも都合がよすぎる展開は評価できません。
以降の作品も自分には合わず、過大期待だったようです。
それでもミステリーの名作であると言われても確かに納得はでき、
その点を考慮しまして☆3つとさせて頂きます。
2019年6月30日に日本でレビュー済み
創元文庫から新訳の「Ⅹの悲劇」が出ると聞いて、慌てて鮎川信夫氏の旧訳の本書を買った。
「Ⅹの悲劇」が書かれたのは1932年(昭和7年)
随分昔に書かれた本で、もはやミステリー小説においては古典と言ってもよい。
なので、個人的な考えとして、古い本は古い翻訳で読みたいという思いがある。
奥付によれば、鮎川信夫氏訳による創元文庫の初版は1960年(昭和35年)である。
私が購入したのが2017年の108版である。
実に57年にも渡って版を重ねて読み継がれてきたのである。
確かに鮎川氏の訳は、今の感覚からしたら古臭かったり、格式張ったりしている。
人権意識の低かった時代の訳なので、「つんぼ」「せむし」「きちがい」と言った、現代では使用される事のない言葉も散見される。
現代小説を読みなれている人にしてみれば、読みづらい訳ではあると思う。
でも、それが良い。この古臭さが味があって良い。
だから、新訳発売によって旧訳が絶版になる前に購入した。
確かに現代の読者に読み継いでいってもらうには、現代風の表現での訳は必要であろう。それは否定しない。
でも、古い小説は、古い訳で読みたいなあと思ってしまう。
できれば鮎川氏の旧訳の方も残して欲しいなと思っている。
「Ⅹの悲劇」が書かれたのは1932年(昭和7年)
随分昔に書かれた本で、もはやミステリー小説においては古典と言ってもよい。
なので、個人的な考えとして、古い本は古い翻訳で読みたいという思いがある。
奥付によれば、鮎川信夫氏訳による創元文庫の初版は1960年(昭和35年)である。
私が購入したのが2017年の108版である。
実に57年にも渡って版を重ねて読み継がれてきたのである。
確かに鮎川氏の訳は、今の感覚からしたら古臭かったり、格式張ったりしている。
人権意識の低かった時代の訳なので、「つんぼ」「せむし」「きちがい」と言った、現代では使用される事のない言葉も散見される。
現代小説を読みなれている人にしてみれば、読みづらい訳ではあると思う。
でも、それが良い。この古臭さが味があって良い。
だから、新訳発売によって旧訳が絶版になる前に購入した。
確かに現代の読者に読み継いでいってもらうには、現代風の表現での訳は必要であろう。それは否定しない。
でも、古い小説は、古い訳で読みたいなあと思ってしまう。
できれば鮎川氏の旧訳の方も残して欲しいなと思っている。
2010年12月29日に日本でレビュー済み
犯人の用意周到なトリックと物語全般に流れるロジックはもちろんだが
何といっても主人公=名探偵役のドルリーレーン氏の素朴な人間味が堪らなく魅力的だ。
ヴァンス、神津恭介など多くの名探偵は個人的にはかっこよすぎて現実離れしすぎだと思う。
さて物語だが3つの殺人事件全てに読者に解決のヒントが与えられてるのがいかにもクイーンらしいところ。
特に第一の凶器であるコルク球に刺さってる針と第三の回数券の状態と場所から犯人像を推察するアプローチは圧巻の一言。
これぞクイーンワールドを堪能できる名作。
何といっても主人公=名探偵役のドルリーレーン氏の素朴な人間味が堪らなく魅力的だ。
ヴァンス、神津恭介など多くの名探偵は個人的にはかっこよすぎて現実離れしすぎだと思う。
さて物語だが3つの殺人事件全てに読者に解決のヒントが与えられてるのがいかにもクイーンらしいところ。
特に第一の凶器であるコルク球に刺さってる針と第三の回数券の状態と場所から犯人像を推察するアプローチは圧巻の一言。
これぞクイーンワールドを堪能できる名作。
2004年11月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
正統派の推理小説。ヴァン・ダインと双璧です。どちらも作者も飛び抜けて良いのは、2冊だけですが。X,Yとグリーン家、僧正。この4冊は文句無く、推理小説史上、ベスト10に入るのではないですかね。
2006年7月31日に日本でレビュー済み
クィーンの代表作と言うと「Yの悲劇」がよく挙げられる(しばしば海外ミステリのベスト1に選ばれる)が、本作はそれに劣らぬ本格ミステリの傑作である。派手な事件が起こる訳ではないが、小刻みな事件・謎の積み重ね、次第に明らかになる過去の恩讐に起因する事件の全貌、巧みに散りばめられた伏線と真相のカギ。そして何と言っても鮮やかなのは、「X」の意味が最後の1行で明かされるという凝った趣向。ダイイング・メッセージの趣向を大々的に取り入れたのは本作が初めてではないか。このように全体の構成が非常に良くできていて、パズラー好きには堪らない作品である。探偵役の元シェークスピア俳優ドルリー・レーンは作品に重厚味を与えているが、彼について詳細を語るには「レーン最後の事件」を待たねばなるまい。
2004年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
シリーズ4部作のまずは、一作目からはじめられることをお薦めします。演劇界の引退した名優であり富豪、私の想像力の限界かを悟らせる豪邸の描写。老名探偵の登場です。ただ一つ「耳」が不自由である老名探偵、シリーズ4作を読み終えてからの「ああ」と感嘆の納得。一作目の本作は密室的な事件の発生、惑わす追加の殺人、そして深まる疑問、あっけない幕切れと時間の流れを感じながら読み手を深みに誘ってくれます。まずはシリーズ一冊目からどうぞ。たぶんシリーズ4作を読みきるのに時間はかからないでしょうね。