新自由主義が猛威を振るうこの世界において「世界で最も成功した社会主義」と言われた日本も、じわりじわりとその病に冒されようとしています。
永きに渡るデフレにより抵抗力が毀損されてしまった日本が新自由主義と言うウィルスに対抗することは、とても難しいことの様に思えます。
医療の場合、ウィルスに対抗するオーソドックスな方法はワクチンを接種することです。
ワクチンというのは毒性を弱めた病原体のことで、ワクチンを摂取することにより免疫を獲得することが出来ます。
と言うわけで新自由主義のワクチンがこの「顔のない独裁者」です。
本書では新自由主義に則り(乗っ取られ)規制緩和、民営化、グローバル化がこれでもかと言うくらいやり倒された日本を描いています。
例えば消防や警察、果ては国防までもが、この物語では民営化されてしまっています。
それは妄想が過ぎるだろうと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、米国ではすでにこれに近い状態になっています。
一部の州では消防は民営化されていて民間の消防サービスに加入していないと家が火事になっても火を消してもらえません。
さらに国防についても一部の兵隊を「外注」しています。(つまり傭兵)
つまりこの本に描かれていることはただの夢物語ではなく、米国追従を続けていけば遠くない将来実現してしまうかもしれない悪夢なのです。
そんな悪夢の実現を防ぐためには、私達は知らなければいけません。
行き過ぎた自由化の先に有る、グロテスクな結末を。
競争と言う名の共食いの惨劇を。
実際に起こってしまってからでは手遅れです。
自由化とは主権を制限する事に他ならなりません。
自由化が進んでしまった後では国民の意思で後戻りすることは不可能なのです。
自由を求める心が全体主義を産み、全体主義により主権が失われる。
なんとも皮肉な話ですが、そういった苦悩を抱えているのが本書の主人公秋川進です。
進を通じて私達は日本を被い尽くしつつある苦悩と、今正に始まろうとしている私達の物語を知ることが出来るでしょう。
ワクチン摂取の意義は勿論免疫を獲得するということですが、ワクチンを摂取すること、すなわちウィルスが脅威であると認識することそものもが決定的に重要なのです。
脅威を認識できなければいかなる対応も出来ないばかりか、進んで脅威を受け容れてしまうことにも繋がりかねません。
皆さんも世の中を見渡して「何かがおかしい」と感じたら、この本を「予防接種」してはいかがでしょうか。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥2,000以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
新品:
¥2,000¥2,000 税込
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon 販売者: 月夜野ストア
新品:
¥2,000¥2,000 税込
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon
販売者: 月夜野ストア
中古品: ¥261
中古品:
¥261

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い 単行本(ソフトカバー) – 2013/11/13
さかき漣
(著),
三橋貴明(企画・監修)
(その他)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥2,000","priceAmount":2000.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,000","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"lBm1isOIaDr3nzUHYxUCS8N2b0UBLgQQFNrSwaDS60UW5bSBTSm78YUn9odv6Iw87UBl5W6St9VcwQFUzy7N0hHpkCt6ECtwHIg0Gd1cOPKXcXHBUd5rDNKXAoXbjfoktj9mbjakC9dPa4wBibh2PbI84VeJLvcG%2F2VcGneTNCeU8zsf5GxdfQ%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥261","priceAmount":261.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"261","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"lBm1isOIaDr3nzUHYxUCS8N2b0UBLgQQ23EMR8UB61wIAxOeC7BHX8nffUs0NORyMiYm8HMoFCjvNq5ftyJ%2F7quPqrsuvJQBm9KZ7qToY8XcnGLmxc1eZP%2BxdCQY9yMtLhwMxVLPzJKQk2hwAMx5mg4QZp%2BdXFEQQi%2F%2BvjLWyB7F3ESjHzv8Xw%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
京都大学教授/内閣官房参与の藤井聡氏が絶賛&驚愕!
「『過激な自由』がもたらす最悪の未来。このフィクション……ヤバすぎです! 」
201X年、中国漁船の大群が尖閣諸島に押し寄せ、そのうちの一隻の「船員」が魚釣島に上陸したことから、「極東戦争」が勃発。この事態に対してアメリカは、日中間の軋轢に軍事介入することを避け、参戦を拒否。果たして日本は、大エイジア連邦主席という独裁者によって支配され、日本国民は「第三地域市民」として生きることを余儀なくされる。秋川進と涼月みらいは、抵抗組織「ライジング・サン」の一員として「祖国・日本」を取り戻すために、新指導者を戴く革命を成就。暗夜が決壊し、新指導者“GK"は国民の万雷の拍手で迎えられる。だが、それは進とみらい、いや、心ある日本国民にとっては、次なる新たな戦いへの序曲に過ぎなかった……。
気鋭の作家・さかき漣と人気経済評論家・三橋貴明のコラボによる、衝撃の近未来小説!
「『過激な自由』がもたらす最悪の未来。このフィクション……ヤバすぎです! 」
201X年、中国漁船の大群が尖閣諸島に押し寄せ、そのうちの一隻の「船員」が魚釣島に上陸したことから、「極東戦争」が勃発。この事態に対してアメリカは、日中間の軋轢に軍事介入することを避け、参戦を拒否。果たして日本は、大エイジア連邦主席という独裁者によって支配され、日本国民は「第三地域市民」として生きることを余儀なくされる。秋川進と涼月みらいは、抵抗組織「ライジング・サン」の一員として「祖国・日本」を取り戻すために、新指導者を戴く革命を成就。暗夜が決壊し、新指導者“GK"は国民の万雷の拍手で迎えられる。だが、それは進とみらい、いや、心ある日本国民にとっては、次なる新たな戦いへの序曲に過ぎなかった……。
気鋭の作家・さかき漣と人気経済評論家・三橋貴明のコラボによる、衝撃の近未来小説!
- 本の長さ266ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2013/11/13
- ISBN-104569807488
- ISBN-13978-4569807485
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
(さかき)作家、(三橋)経済評論家・中小企業診断士
登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2013/11/13)
- 発売日 : 2013/11/13
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 266ページ
- ISBN-10 : 4569807488
- ISBN-13 : 978-4569807485
- Amazon 売れ筋ランキング: - 929,839位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,188位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

作家・経済評論家。中小企業診断士。1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業ノーテルをはじめNEC、日本IBMなど を経て2008年に中小企業診断士として独立、三橋貴明診断士事務所を設立した。現在は、経済評論家、作家としても活躍中。2007年、インターネットの 掲示板「2ちゃんねる」において、公開データの詳細な分析によって韓国経済の脆弱な実態を暴く。これが反響を呼んで『本当はヤバイ!韓国経済』(彩図社) として書籍化されて、ベストセラーとなった(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 経済ニュースが10倍よくわかる「新」日本経済入門 (ISBN-13: 978-4776206187)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年8月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アニメ(ーター)見本市の「イブセキヨルニ」で本作を知り、電子版を購入。
物語は、大エイジア(イースタシア?)という集合体から見事抜け出した日本が、自由主義の名の下に、経済自由化政策を推し進め、日本が変わり果てていくといった流れである。極度に自由化されていく公共事業の弊害や悲劇は、先の震災を経験した身からするとリアルだった。
序盤はジョージ・オーウェルの「1984」に似ていた。というより、「1984」でイースタシアが滅ぶならこうなるといったところか。
中盤、終盤もちょっと似てるなと感じるシーンはあったものの、独自の展開で読んでて楽しかった。
終盤は「国民クイズ」の最後の方を彷彿とさせて結構熱く読めた。
さて、個人的な本作を読んで良い点、悪い点は以下の通り。
【良い点】
・読みやすい
近未来SFだと思うけれど、経済自由化政策の軍事や公共事業に関する説明が非常に丁寧で分かりやすかった。
私自身、経済に疎い方なので疲れるかと思ったけれど、電力事業におけるレント・シーキング、経済自由化状態における災害時の物流網や支援体制の悲惨さ。作中の出来事を例に取りながら、説明がされており、物語の背景が理解しやすかった。
・タイムリーである
2015/08現在、安保、電力関連のネタはニュースでよく目にする。特に安保なんぞは注目の的であり、そういった親近感のある話があるから入りやすい。今日、反原発や安保など様々なデモが行われている。デモが悪いものとは思わないが、そういったデモの負の一面も描いている。
【悪い点】
・感情移入しづらい
丁寧に経済の説明しすぎているせいか、主人公である秋川進、ヒロインである涼月みらい、その他の登場人物たちに入り込めなかった。経済自由化政策を推し進めた中心人物駒ヶ根覚人も最後の方にスポットライトが当たったが、個人的にはいきなりスポットライトが当たったと感じたせいか、人物の背景を訴えるには弱い気がした。
・短い
終盤に差し掛かると怒涛のような展開で終わるのだけど、少し物足りなく感じた。
登場人物の名前とプロフィールが最初に書かれてあるのだが、恵那や乗鞍、涼月忍と涼月みらいの関係等々は細かく書いても良かったと思う。読みやすい分、淡々と話が進みすぎる印象を受けた。
全体的に人と人との繋がり希薄に感じるところはあったものの、読みやすかったし、面白かった。
最初に書いたが「1984」を匂わせる世界観や言葉が出てくるので、ifストーリーもの、リアルな近未来の話が好きな人はオススメできるかもしれない。何より、経済自由化政策で変わりゆく日本の描写は非常に面白い。
物語は、大エイジア(イースタシア?)という集合体から見事抜け出した日本が、自由主義の名の下に、経済自由化政策を推し進め、日本が変わり果てていくといった流れである。極度に自由化されていく公共事業の弊害や悲劇は、先の震災を経験した身からするとリアルだった。
序盤はジョージ・オーウェルの「1984」に似ていた。というより、「1984」でイースタシアが滅ぶならこうなるといったところか。
中盤、終盤もちょっと似てるなと感じるシーンはあったものの、独自の展開で読んでて楽しかった。
終盤は「国民クイズ」の最後の方を彷彿とさせて結構熱く読めた。
さて、個人的な本作を読んで良い点、悪い点は以下の通り。
【良い点】
・読みやすい
近未来SFだと思うけれど、経済自由化政策の軍事や公共事業に関する説明が非常に丁寧で分かりやすかった。
私自身、経済に疎い方なので疲れるかと思ったけれど、電力事業におけるレント・シーキング、経済自由化状態における災害時の物流網や支援体制の悲惨さ。作中の出来事を例に取りながら、説明がされており、物語の背景が理解しやすかった。
・タイムリーである
2015/08現在、安保、電力関連のネタはニュースでよく目にする。特に安保なんぞは注目の的であり、そういった親近感のある話があるから入りやすい。今日、反原発や安保など様々なデモが行われている。デモが悪いものとは思わないが、そういったデモの負の一面も描いている。
【悪い点】
・感情移入しづらい
丁寧に経済の説明しすぎているせいか、主人公である秋川進、ヒロインである涼月みらい、その他の登場人物たちに入り込めなかった。経済自由化政策を推し進めた中心人物駒ヶ根覚人も最後の方にスポットライトが当たったが、個人的にはいきなりスポットライトが当たったと感じたせいか、人物の背景を訴えるには弱い気がした。
・短い
終盤に差し掛かると怒涛のような展開で終わるのだけど、少し物足りなく感じた。
登場人物の名前とプロフィールが最初に書かれてあるのだが、恵那や乗鞍、涼月忍と涼月みらいの関係等々は細かく書いても良かったと思う。読みやすい分、淡々と話が進みすぎる印象を受けた。
全体的に人と人との繋がり希薄に感じるところはあったものの、読みやすかったし、面白かった。
最初に書いたが「1984」を匂わせる世界観や言葉が出てくるので、ifストーリーもの、リアルな近未来の話が好きな人はオススメできるかもしれない。何より、経済自由化政策で変わりゆく日本の描写は非常に面白い。
2013年11月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、経済評論家の三橋貴明さんが企画・監修し、さかき漣さんが著者の小説です。過激な自由を徹底的に行使したときに、社会がどうなるかを描いています。
小説の世界観の基調である新自由主義的な社会の行き着く先の描写は、リアリティがあって見応えがあります。ただ、登場人物の動機や考え方がうすっぺらいように感じられてしまうのです。残念ながら。
私は『コレキヨの恋文』・『真冬の向日葵』・『希臘から来たソフィア』を興味深く読んできたので、本作も批判はしたくなかったのですが、正直、私には登場人物の心理が理解不能でした。ただし、何が解らないかが解らないというレベルではなく、この点がおかしいと思うという解らなさではあるため、私がおかしいと思ったところは論点として提示しておきます。
(1)秋川進について
一応、主人公の一人ですが、中身がからっぽのように感じられてしまいます。最初はGKの魅力に踊らされ、次は「みらい」という女性の魅力に踊らされているようにしか思えません。主人公なのですから、一度は自由を求めたものが、自由に対抗せざるをえなくなった動機の変化は、思想的にきちんと示されてしかるべきでしたね。
蛾が自ら火に飛び込んで自殺するように、自分がなく他人の光によって導かれて自滅していくタイプ。
(2)涼月みらい
本作のヒロインです。第一章で進とフラグを立てながら、その後は連絡も取らずに第三章では自分勝手に思い詰めて自殺しようとする困ったちゃん。5年ぶりの進とみらいの再開が、たまたまその自殺現場に進が居合わせたという超天文学的な確率に頼った超展開(汗)。
せめて、進に自主的に会いに行って、その帰りに自殺しようとするが、胸騒ぎがした進が駆けつけて阻止するとかいう流れとかくらいは考えてほしいです。または、進を監視していて、自殺は演技で劇的な再会を演出したとかね。いくらでも筋の通ったシナリオ展開はあるのに、天文学的な確率の偶然に頼ったシナリオは、読んでいてげんなりしてしまいます。
ちなみに、本作ラストでも天文学的な確率に頼った再会があり、一部の人には受けが良いのかもしれませんが、私はまたもや超偶然に頼った劇的展開かよと思ってしまいました。
みらいのパーソナリティもめちゃくちゃだとしか思えませんでした。みらいの目的達成のためなら、「敵」と疑似恋人関係になったときにいくらでも可能だったのに、なぜか回りくどいというか、意味不明な裏工作ばかりしているという有様。
(3)独裁者には顔がないのか?
私には、本作の独裁者には顔があったと思います。まあ、その行動についても、イデオロギーというよりトラウマの割合が高いわけで、そこもげんなりしてしまったわけですが・・・。
独裁者に顔がないというのは、一体誰が言ったことなのか?
そこに注目すれば、顔のある独裁者が、自分は悪くない、自分は独裁者ではないという自己弁護のために、無意識的に示した概念だとしか思えませんでした。
他にも、前リーダーですら何故か知らない都合の良い隠し部屋が出て来たり、ツッコミどころは多々あります。
前作までの作品に比べると、さかき漣さんの本来の小説テイストが出ているのでしょう。特に、みらいなどの人物には、さかき漣さんの中の狂気が反映されているのでしょう。そいった狂気については、実は嫌いではないのですが、狂気をうまく表現するなら、頭のおかしい人物は限定しておくべきでした。主な登場人物が、イデオロギーではなくトラウマで右往左往しているのって、本作のテーマからしたら失敗だったと思います。
正直、批判したくなかったのですが、登場人物の考えと行動にあまりに不自然な点が多かったため、否定的な論評になってしまいました。
小説の世界観の基調である新自由主義的な社会の行き着く先の描写は、リアリティがあって見応えがあります。ただ、登場人物の動機や考え方がうすっぺらいように感じられてしまうのです。残念ながら。
私は『コレキヨの恋文』・『真冬の向日葵』・『希臘から来たソフィア』を興味深く読んできたので、本作も批判はしたくなかったのですが、正直、私には登場人物の心理が理解不能でした。ただし、何が解らないかが解らないというレベルではなく、この点がおかしいと思うという解らなさではあるため、私がおかしいと思ったところは論点として提示しておきます。
(1)秋川進について
一応、主人公の一人ですが、中身がからっぽのように感じられてしまいます。最初はGKの魅力に踊らされ、次は「みらい」という女性の魅力に踊らされているようにしか思えません。主人公なのですから、一度は自由を求めたものが、自由に対抗せざるをえなくなった動機の変化は、思想的にきちんと示されてしかるべきでしたね。
蛾が自ら火に飛び込んで自殺するように、自分がなく他人の光によって導かれて自滅していくタイプ。
(2)涼月みらい
本作のヒロインです。第一章で進とフラグを立てながら、その後は連絡も取らずに第三章では自分勝手に思い詰めて自殺しようとする困ったちゃん。5年ぶりの進とみらいの再開が、たまたまその自殺現場に進が居合わせたという超天文学的な確率に頼った超展開(汗)。
せめて、進に自主的に会いに行って、その帰りに自殺しようとするが、胸騒ぎがした進が駆けつけて阻止するとかいう流れとかくらいは考えてほしいです。または、進を監視していて、自殺は演技で劇的な再会を演出したとかね。いくらでも筋の通ったシナリオ展開はあるのに、天文学的な確率の偶然に頼ったシナリオは、読んでいてげんなりしてしまいます。
ちなみに、本作ラストでも天文学的な確率に頼った再会があり、一部の人には受けが良いのかもしれませんが、私はまたもや超偶然に頼った劇的展開かよと思ってしまいました。
みらいのパーソナリティもめちゃくちゃだとしか思えませんでした。みらいの目的達成のためなら、「敵」と疑似恋人関係になったときにいくらでも可能だったのに、なぜか回りくどいというか、意味不明な裏工作ばかりしているという有様。
(3)独裁者には顔がないのか?
私には、本作の独裁者には顔があったと思います。まあ、その行動についても、イデオロギーというよりトラウマの割合が高いわけで、そこもげんなりしてしまったわけですが・・・。
独裁者に顔がないというのは、一体誰が言ったことなのか?
そこに注目すれば、顔のある独裁者が、自分は悪くない、自分は独裁者ではないという自己弁護のために、無意識的に示した概念だとしか思えませんでした。
他にも、前リーダーですら何故か知らない都合の良い隠し部屋が出て来たり、ツッコミどころは多々あります。
前作までの作品に比べると、さかき漣さんの本来の小説テイストが出ているのでしょう。特に、みらいなどの人物には、さかき漣さんの中の狂気が反映されているのでしょう。そいった狂気については、実は嫌いではないのですが、狂気をうまく表現するなら、頭のおかしい人物は限定しておくべきでした。主な登場人物が、イデオロギーではなくトラウマで右往左往しているのって、本作のテーマからしたら失敗だったと思います。
正直、批判したくなかったのですが、登場人物の考えと行動にあまりに不自然な点が多かったため、否定的な論評になってしまいました。