二十年以上前、英米文学学徒だった頃に苦しめられた「意識の流れ」手法的な作品に、文学の進化の過程を目にする思い。逆に必要最少限の言葉で作られ、今でも色褪せない「幸福の王子」を読むと、「最小の働きで最大の効果」というバックミンスターフラーの言葉を思い出す。
前者の作品は研究対象として忘れ去られることはないだろうし、後者はそのエバーグリーンさでやはり忘れられることはないだろうけど、本書にはその中間の、すでに忘れられ始めている作品も収められている。そういう、英米文学史的な意味でも興味深い読み方のできる本。
それにしても、もう文学史の教科書上でしか「メジャー」ではない作家や作品をなぜ採り上げるのだろう? と思ったが、その答えは解説にあった。
「(前略)このとき欠落しているか表面化してない(ママ)観点とは、同性愛が犯罪でもなければ悪徳でもないという観点である。ビドルボームは囚人のように罪人のように罪を贖う禁欲的隠者的生活を送る必要はないのだ。だが現実には、多くの人々が同性愛者であることを暴かれ、経歴を失い社会的に追放された。そして嘆かわしいことに、この傾向はいまもって終わっていない。同性愛開放はまだ未完のプロ ジェクトである。同性愛者であることが犯罪でも罪でもなく汚名でもないこと、同性愛者差別こそ犯罪であることを社会全体に浸透させたとき、そのときはじめて、この短編「手」も失われた時代の犠牲者たちの墓碑銘となるだろう」
この短編「手」は1919年のもの、上記の部分を含む解説は1999年のものである。
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ゲイ短編小説集 (平凡社ライブラリー) 文庫 – 1999/12/13
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ワイルド、ロレンス、フォースターら、近代英米文学の巨匠たちの「ゲイ小説」が一堂に会して登場。大作家の「読み直し」として、またゲイ文学の「古典」としても必読の書。これぞゲイ・キャノン。
<目次>
W・H氏の肖像 オスカー・ワイルド
幸福な王子 オスカー・ワイルド
密林の野獣 ヘンリー・ジェイムズ
ゲイブリエル?アーネスト サキ(H.H.マンロー)
プロシア士官 D.H.ロレンス
手 シャーウッド・アンダソン
永遠の生命 E.M.フォースター
ルイーズ サマセット・モーム
まさかの時の友 サマセット・モーム
解説 大橋洋一
<目次>
W・H氏の肖像 オスカー・ワイルド
幸福な王子 オスカー・ワイルド
密林の野獣 ヘンリー・ジェイムズ
ゲイブリエル?アーネスト サキ(H.H.マンロー)
プロシア士官 D.H.ロレンス
手 シャーウッド・アンダソン
永遠の生命 E.M.フォースター
ルイーズ サマセット・モーム
まさかの時の友 サマセット・モーム
解説 大橋洋一
- 本の長さ397ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日1999/12/13
- ISBN-104582763154
- ISBN-13978-4582763157
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ワイルド、ロレンス、フォースターら近代英米文学の巨匠たちの「ゲイ小説」9編を収める。大作家の作品を新たな視点で構成し、英米文学の「秘められた遺産」を探る。
登録情報
- 出版社 : 平凡社 (1999/12/13)
- 発売日 : 1999/12/13
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 397ページ
- ISBN-10 : 4582763154
- ISBN-13 : 978-4582763157
- Amazon 売れ筋ランキング: - 92,704位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2022年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
解説ではとても深く考察されています。
私としては単純に惚れた腫れたの、人間の性愛を読むだけに至りましたが、同性愛を文学の面から読み解く本書は金額もさることながら、ずっしり重みがありました。
『レズビアン短編小説集』もあります。
私としては単純に惚れた腫れたの、人間の性愛を読むだけに至りましたが、同性愛を文学の面から読み解く本書は金額もさることながら、ずっしり重みがありました。
『レズビアン短編小説集』もあります。
2020年11月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
言うほどゲイ小説でもないです。
見方によってはそのようにも取れますけど...ぐらい。
幸福な王子という話は知ってましたが、これがゲイ小説短編集に入っているのが謎です。
見方によってはそのようにも取れますけど...ぐらい。
幸福な王子という話は知ってましたが、これがゲイ小説短編集に入っているのが謎です。
2021年7月3日に日本でレビュー済み
19世紀末から20世紀初頭の英米の、優れた男性小説家たちの短編アンソロジー。久々に再読したが、この本が独特なのは、ゲイに対してどういう見方をしているかというのを、読者自身に迫ってくることだ。
例えば、全然ゲイについて書かれていないと仰っているレビュワーの方もいる。これはまったく妥当な意見で、実際同性愛行為に触れられるのは、フォースターの一作品くらい。しかし私は、かなり同性愛的なニュアンスの強い短編集だと今回も感じた。それはつまり、どの作品も「隠された欲望とその抑圧」を描いているからだと思う。
同性愛が周囲から暗黙の裡に禁じられているとき、その抑圧を感じながらどうやって生きるかはとても切実な問題だ。ましてや、20世紀初頭のイギリスでは、同性愛行為の露呈や表現は文字通り牢屋行きで、それ以上に、人間社会からの逸脱・社会的な死を意味していた。そして、だからこそ、この逸脱の欲望に囚われた作家たちは、表現すら許されない感情や行為を「一見分からない、それでも一部の人には分かる隠された何か」として作品に暗号のような形で(意識的であれ無意識であれ)刻み付けた。その精華の一部がこの作品群だ。
逆に言えば、周囲からの抑圧を感じたことがない同性愛者や、「同性愛も異性愛も同じ愛のカタチ」と頭で考えたことしかないヘテロの人、人に何も隠すことなく公明正大に生きてきたと自分で思っているような人は、このアンソロジーの感覚にあまり馴染めないのではないか。同性愛の葛藤や周囲から受けた迫害が描かれていないと感じるなら、その読者は、同性愛だってみんな自分と同じ正常な人だという規範を持っている。だからこそ、「差別すべきではない」同性愛の悲劇や喜劇に憤り、笑い、涙することを欲しているわけだ。勿論それは悪いことではない。しかしそういう人は、「規範を外れてしまったという後ろめたさとある種の強烈な恍惚を、周囲にも自分自身にも隠しながら、正常を装って生きる人間」が世の中に存在するということが、心の奥底で理解できていないような気がする。
その意味で面白いのはロレンスの『プロシア士官』で、男女性愛賛美でホモフォビアの代表格みたいに思われているこの作家に、「口」と「血」という表象から、秘められた破滅的な欲望を見るのはお見事。作品自体の良さもあって、全編の白眉になっている(実はロレンスは「クイア」という言葉を同性愛的な仄めかしで使った最初期の一人だったりする)。逆に狙いすぎと思ったのはワイルドの『幸福な王子』。そもそも誰でも知っている話だし、童話形式で書かれているので、読みの幅が大きい。『本当は怖いグリム童話』式に、解説で触れるぐらいでよかったのでは。セジウィックら古典的な同性愛解放運動と批評を纏めた解説はちょっと癖があり、人を選ぶとは思うが、一読の価値はあると思う。
そして改めて思うのは、これが1999年に編まれたものであるということ。約20年経って、ゲイを巡る状況は本当に様変わりした。同性愛が堂々と公言され、差別すれば逆にSNSで炎上する時代だ。良いことではあるが、しかしそれは、ここに収められた作家たちが見てきたものが消え失せたことを意味しない。LGBTQが表通りでパレードするようになっても、差別がいい意味でより少なくなっても、人々がSNSで一見抑圧などないかのように自分の願望を垂れ流すようになっても、人間には、決して他者には明かすことのできない闇の部分がある。このアンソロジーは、「ゲイ」という窓からその闇の一端に触れた名小説家たちの作品集であり、他の方も仰るように、何よりも小説として面白いものばかりだ。一読をお薦めする。
例えば、全然ゲイについて書かれていないと仰っているレビュワーの方もいる。これはまったく妥当な意見で、実際同性愛行為に触れられるのは、フォースターの一作品くらい。しかし私は、かなり同性愛的なニュアンスの強い短編集だと今回も感じた。それはつまり、どの作品も「隠された欲望とその抑圧」を描いているからだと思う。
同性愛が周囲から暗黙の裡に禁じられているとき、その抑圧を感じながらどうやって生きるかはとても切実な問題だ。ましてや、20世紀初頭のイギリスでは、同性愛行為の露呈や表現は文字通り牢屋行きで、それ以上に、人間社会からの逸脱・社会的な死を意味していた。そして、だからこそ、この逸脱の欲望に囚われた作家たちは、表現すら許されない感情や行為を「一見分からない、それでも一部の人には分かる隠された何か」として作品に暗号のような形で(意識的であれ無意識であれ)刻み付けた。その精華の一部がこの作品群だ。
逆に言えば、周囲からの抑圧を感じたことがない同性愛者や、「同性愛も異性愛も同じ愛のカタチ」と頭で考えたことしかないヘテロの人、人に何も隠すことなく公明正大に生きてきたと自分で思っているような人は、このアンソロジーの感覚にあまり馴染めないのではないか。同性愛の葛藤や周囲から受けた迫害が描かれていないと感じるなら、その読者は、同性愛だってみんな自分と同じ正常な人だという規範を持っている。だからこそ、「差別すべきではない」同性愛の悲劇や喜劇に憤り、笑い、涙することを欲しているわけだ。勿論それは悪いことではない。しかしそういう人は、「規範を外れてしまったという後ろめたさとある種の強烈な恍惚を、周囲にも自分自身にも隠しながら、正常を装って生きる人間」が世の中に存在するということが、心の奥底で理解できていないような気がする。
その意味で面白いのはロレンスの『プロシア士官』で、男女性愛賛美でホモフォビアの代表格みたいに思われているこの作家に、「口」と「血」という表象から、秘められた破滅的な欲望を見るのはお見事。作品自体の良さもあって、全編の白眉になっている(実はロレンスは「クイア」という言葉を同性愛的な仄めかしで使った最初期の一人だったりする)。逆に狙いすぎと思ったのはワイルドの『幸福な王子』。そもそも誰でも知っている話だし、童話形式で書かれているので、読みの幅が大きい。『本当は怖いグリム童話』式に、解説で触れるぐらいでよかったのでは。セジウィックら古典的な同性愛解放運動と批評を纏めた解説はちょっと癖があり、人を選ぶとは思うが、一読の価値はあると思う。
そして改めて思うのは、これが1999年に編まれたものであるということ。約20年経って、ゲイを巡る状況は本当に様変わりした。同性愛が堂々と公言され、差別すれば逆にSNSで炎上する時代だ。良いことではあるが、しかしそれは、ここに収められた作家たちが見てきたものが消え失せたことを意味しない。LGBTQが表通りでパレードするようになっても、差別がいい意味でより少なくなっても、人々がSNSで一見抑圧などないかのように自分の願望を垂れ流すようになっても、人間には、決して他者には明かすことのできない闇の部分がある。このアンソロジーは、「ゲイ」という窓からその闇の一端に触れた名小説家たちの作品集であり、他の方も仰るように、何よりも小説として面白いものばかりだ。一読をお薦めする。
2013年12月20日に日本でレビュー済み
9編の掲載作は以下のとおり。
オスカー・ワイルド
「W・H氏の肖像」シェイクスピアの愛人の謎をめぐって男たちは…。
「幸福の王子」有名な童話的作品。王子とツバメの関係は…?
ヘンリー・ジェイムズ
「密林の野獣」ある予感を抱えた男性とそれを「見張る」と約束した女性の半生。
サキ
「ゲイブリエル・アーネスト」『君の森には野獣が棲んでいる』と無口な友人から言われた男がその直後、奇妙な少年と出会う。
D.H.ロレンス
「プロシア士官」下士官の健全な美しさから目を逸らせなくなった上官。彼が自然体でいることが許し難く、相手も巻き込んで不穏な緊張感をたかまらせていく。
(腐女子目線:同性愛的心理のせめぎあいがスリリングで読み応えアリ☆)
シャーウッド・アンダーソン
「手」アメリカの片田舎に住む孤独な老人。老人の思惑と隔たった「何か」を人々に印象付けるその「手」。彼の意識に上らない「何か」を手は知っている。
E.M.フォースター
「永遠の生命」未開の森林の奥に棲む部族のもとを訪れた若い宣教師。彼が訪れた夜、かぐわしい若さをみなぎらせ族長が一人で彼を訪れた。たちまち恋に落ちた二人。
(腐女子目線:本書の中で唯一肉体的同性愛関係をむすぶお話。美しい文章とロマンティックな顛末で腐女子にもお勧め☆)
サマセット・モーム
「ルイーズ」
「まさかの時の友」
2作品ともまったく同性愛的要素ゼロに思えるのだが、解説を読むとなるほど〜と思える。
「ルイーズ」に登場する語り手の男性とルイーズの関係が、米ドラマ「デスパレートな妻たち」のスーザンとリー(ゲイ)の関係と似てる…わかりにくいか。
テレビで人気のおねえタレントが、女子アナに手厳しく突っ込んだりするあのコミュニケーションスタイルと似ている、のです。
男「アンタ、カワイ子ぶっちゃって、その隙だらけのポーズだって男を引き寄せる戦略のひとつでしょお!?」
女「◯◯さん、ワタシのことキライなんですかぁ〜」
男「キライじゃないわよ、むしろ気になって目が離せないのよ!」
…といったような。
さんまの「恋のから騒ぎ」とも似ているけど、アレはさんまが「おねえ」のスタイルを真似たのか…?(おねえタレントのテレビ浸透前夜)
編者・大橋洋一氏による39pもの解説も圧巻。
ゲイ小説とゲイの社会的スタンスについての詳細な考察から始まる。そして一見ゲイ小説と思えない作品が、どのようにして選ばれたのかを解説。
中でも私は「カミング・アウトとパッシング」というテーマの考察が興味深かった。同性愛であることを主張し世間に「見て見ぬふり」をさせないカミング・アウトと、異性愛も同性愛も区別を要さないスタンスからなんら宣言を要しないパッシング。どちらもゲイを自認し隠さないやり方であるのだとか。(その反対の公表しない、端的に言えば隠している状態を「クローゼット」と呼ぶらしい)…などいろいろ。
なるほど〜と勉強になることしきりであったが、サキのペンネームの由来をゲイの定説から引いて解きあかし、このサキのカミング・アウト(と解説者は指摘)を無視して彼の作品を読み解くのは「見て見ぬふり」であるし片手落ちであるという様な主張には、ちょっと穿ちすぎというか、ホンマかいな〜という気持ちにもなった。
英米でゲイが弾圧されてきた歴史から来るのか、全体的に裏を読む態度で作品を見ている。従って「え?コジツケじゃなくホントに?」と戸惑う面もあったりするがシロウトでは判断できないので、なんとなく腑に落ちない気持ちを抱えたまま読み終わった。
これを「正典」と呼ぶ根拠をもう少し説明して欲しかった。引用元のない状況紹介のみでは、食い足りない。
とはいえ、人の関係性を描いた作品、人の生来もつ「匂い」が生々しく香る作品などが揃い踏みで、読み応えタップリの楽しい読書でした。読んで損無し。
オスカー・ワイルド
「W・H氏の肖像」シェイクスピアの愛人の謎をめぐって男たちは…。
「幸福の王子」有名な童話的作品。王子とツバメの関係は…?
ヘンリー・ジェイムズ
「密林の野獣」ある予感を抱えた男性とそれを「見張る」と約束した女性の半生。
サキ
「ゲイブリエル・アーネスト」『君の森には野獣が棲んでいる』と無口な友人から言われた男がその直後、奇妙な少年と出会う。
D.H.ロレンス
「プロシア士官」下士官の健全な美しさから目を逸らせなくなった上官。彼が自然体でいることが許し難く、相手も巻き込んで不穏な緊張感をたかまらせていく。
(腐女子目線:同性愛的心理のせめぎあいがスリリングで読み応えアリ☆)
シャーウッド・アンダーソン
「手」アメリカの片田舎に住む孤独な老人。老人の思惑と隔たった「何か」を人々に印象付けるその「手」。彼の意識に上らない「何か」を手は知っている。
E.M.フォースター
「永遠の生命」未開の森林の奥に棲む部族のもとを訪れた若い宣教師。彼が訪れた夜、かぐわしい若さをみなぎらせ族長が一人で彼を訪れた。たちまち恋に落ちた二人。
(腐女子目線:本書の中で唯一肉体的同性愛関係をむすぶお話。美しい文章とロマンティックな顛末で腐女子にもお勧め☆)
サマセット・モーム
「ルイーズ」
「まさかの時の友」
2作品ともまったく同性愛的要素ゼロに思えるのだが、解説を読むとなるほど〜と思える。
「ルイーズ」に登場する語り手の男性とルイーズの関係が、米ドラマ「デスパレートな妻たち」のスーザンとリー(ゲイ)の関係と似てる…わかりにくいか。
テレビで人気のおねえタレントが、女子アナに手厳しく突っ込んだりするあのコミュニケーションスタイルと似ている、のです。
男「アンタ、カワイ子ぶっちゃって、その隙だらけのポーズだって男を引き寄せる戦略のひとつでしょお!?」
女「◯◯さん、ワタシのことキライなんですかぁ〜」
男「キライじゃないわよ、むしろ気になって目が離せないのよ!」
…といったような。
さんまの「恋のから騒ぎ」とも似ているけど、アレはさんまが「おねえ」のスタイルを真似たのか…?(おねえタレントのテレビ浸透前夜)
編者・大橋洋一氏による39pもの解説も圧巻。
ゲイ小説とゲイの社会的スタンスについての詳細な考察から始まる。そして一見ゲイ小説と思えない作品が、どのようにして選ばれたのかを解説。
中でも私は「カミング・アウトとパッシング」というテーマの考察が興味深かった。同性愛であることを主張し世間に「見て見ぬふり」をさせないカミング・アウトと、異性愛も同性愛も区別を要さないスタンスからなんら宣言を要しないパッシング。どちらもゲイを自認し隠さないやり方であるのだとか。(その反対の公表しない、端的に言えば隠している状態を「クローゼット」と呼ぶらしい)…などいろいろ。
なるほど〜と勉強になることしきりであったが、サキのペンネームの由来をゲイの定説から引いて解きあかし、このサキのカミング・アウト(と解説者は指摘)を無視して彼の作品を読み解くのは「見て見ぬふり」であるし片手落ちであるという様な主張には、ちょっと穿ちすぎというか、ホンマかいな〜という気持ちにもなった。
英米でゲイが弾圧されてきた歴史から来るのか、全体的に裏を読む態度で作品を見ている。従って「え?コジツケじゃなくホントに?」と戸惑う面もあったりするがシロウトでは判断できないので、なんとなく腑に落ちない気持ちを抱えたまま読み終わった。
これを「正典」と呼ぶ根拠をもう少し説明して欲しかった。引用元のない状況紹介のみでは、食い足りない。
とはいえ、人の関係性を描いた作品、人の生来もつ「匂い」が生々しく香る作品などが揃い踏みで、読み応えタップリの楽しい読書でした。読んで損無し。
2004年5月17日に日本でレビュー済み
この本を手に取ったきっかけは、下北沢の某本屋(本と雑貨が一緒に置いてある、あの有名なチェーン店です)で平積みになっていたからでした。今から思えば、すごい貴重な偶然です。
書名は極めて露骨な(失礼!)雰囲気を漂わせていますが、装丁を含めた本自体のスタンスはあくまで『英米文学のアンソロジー』といった趣で、一般的な読者の方にも/にこそ読んでもらえるものだと思います。
他の方の感想にも書かれていますが、私はこの本の白眉といえる部分は、編者である大橋氏の解説ではないかと思います。各作品の新たな読みを提示すると共に、「ゲイ」という枠組みを超えてジェンダー/セクシュアリティーといったトピックの“入り口”をもある程度指し示し得ているのではないでしょうか。
……というか、私自身が勉強のダシに何度も使わせていただきました(汗)。
もし続編が出ることがあれば、日本の小説を入れて欲しいと思います。
書名は極めて露骨な(失礼!)雰囲気を漂わせていますが、装丁を含めた本自体のスタンスはあくまで『英米文学のアンソロジー』といった趣で、一般的な読者の方にも/にこそ読んでもらえるものだと思います。
他の方の感想にも書かれていますが、私はこの本の白眉といえる部分は、編者である大橋氏の解説ではないかと思います。各作品の新たな読みを提示すると共に、「ゲイ」という枠組みを超えてジェンダー/セクシュアリティーといったトピックの“入り口”をもある程度指し示し得ているのではないでしょうか。
……というか、私自身が勉強のダシに何度も使わせていただきました(汗)。
もし続編が出ることがあれば、日本の小説を入れて欲しいと思います。
2010年8月20日に日本でレビュー済み
作者は名の売れた人ばかりですが、作品は、最高傑作と、わけの分からんものが混在している感じです。
たとえば『幸福な王子』は、若いときにも何度も読んだけど、何度読み返しても感動します。本当に美しい話です。私がいままでに読んだすべての物語の中で最も良かった五つの指に入るでしょう。
しかし、これは一体ゲイの話でしょうか。私には到底そうは思えません。と『そのような批判なホモフォビックなもので』とか解説に書かれており、それにも賛成しかねます。ですが、『幸福な王子』をゲイの話とするこの解説は、なかなか興味深いものもあるので、一読の価値ありです。
キリスト教は同性愛を禁じたが、イエス・キリストの姿そのものが同性愛的欲望を喚起するものとは!
たとえば『幸福な王子』は、若いときにも何度も読んだけど、何度読み返しても感動します。本当に美しい話です。私がいままでに読んだすべての物語の中で最も良かった五つの指に入るでしょう。
しかし、これは一体ゲイの話でしょうか。私には到底そうは思えません。と『そのような批判なホモフォビックなもので』とか解説に書かれており、それにも賛成しかねます。ですが、『幸福な王子』をゲイの話とするこの解説は、なかなか興味深いものもあるので、一読の価値ありです。
キリスト教は同性愛を禁じたが、イエス・キリストの姿そのものが同性愛的欲望を喚起するものとは!
2018年7月12日に日本でレビュー済み
サマセット・モームの短編二作、いったいどこが「ゲイ小説」?
作家がゲイであることと、ゲイ小説とは違います。
モームの短編はそれなりに面白く、小説自体の批判ではなく
「ゲイ小説」ともし表看板で銘打つなら、やはり看板に忠実で
あって欲しいと思います。
何度もお断りしますが、編まれている小説のレベルとは別次元の
評価です。
作家がゲイであることと、ゲイ小説とは違います。
モームの短編はそれなりに面白く、小説自体の批判ではなく
「ゲイ小説」ともし表看板で銘打つなら、やはり看板に忠実で
あって欲しいと思います。
何度もお断りしますが、編まれている小説のレベルとは別次元の
評価です。