投資、主として国内株式の現物取引を始めるにあたって最低限知っておいたほうがよい「投資の一般教養」（山田氏まえがきより）について、浅野・山田両氏の対話形式で書かれている。情報の密度はそれほど高くなく、速い人なら数十分でスラスラと読み終えてしまうだろう。
それでも最低限の情報は盛り込まれているので、本書を読み終えたら、対面型の証券会社でなら口座を開いて投資を始めても大丈夫であろう（手数料重視のネット型証券会社を使うにはもう少し勉強するか、あるいは小口から始めて身銭を切る覚悟が必要）。実際、浅野氏は当ラジオ番組のスポンサー・みずほ証券で口座を開いて、そこで表題の300万円の利益をあげている。
一方で、ラジオでのトークの軽妙な部分はあまり再現されていない。たとえば、浅野氏が「先日はじめて買い注文を入れました、300株です」と発言したのに対して山田氏が親しみを込めて「あなた馬鹿ですか」と返したやりとりは、浅野氏の勇猛さと番組の和気藹々さとを示す絶好の材料だと思うのだが、それも全く入っていない。（ちなみに、なぜこれが馬鹿なのかというと、通常、株主総会に参加したり、株主優待品を貰ったりするには100株で十分だからである。従って、その会社がいくら魅力的でも、まず100株で1年くらい様子見をしてから買い増しに踏み切るのが無難なのである。）
そしてもっとも重要なことだが、本書の来歴として、本文が完成してあとは浅野氏のあとがきを待つのみという段階になってもなおタイトルが決まらず、出版社が出してきたタイトル案に山田氏がボツを出しまくっていた、という事情がある。（山田氏は「日本タイトルだけ大賞」の実行委員でもあり、書籍のタイトルについては一家言あるとのこと。）従って、浅野氏が1000万円を元手に300万円の利益をあげたという武勇伝の内幕については一切書かれていない。もしあなたがタイトルだけに惹かれ、一攫千金を求めて本書を手に取っても、それは夢物語に終わるので、きっぱりと諦められたい。
そもそも、300万円という数字が一人歩きしている浅野氏自身も、売り抜けて確定させた利益は確かに300万円あるが、まだ売らずに保有中の銘柄については、その後の相場下落で結構な含み損が出ているとラジオで語っている。その意味でも、一攫千金はそうそう簡単ではないと諦めていただきたい。
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