所謂伊藤海軍戦史三部作の二作目。
二作目なのだがこれを最初に読んだ上で、もっと詳しく知りたい部分について色々な資料を突っ込んで調べると効率が良いだろう。
『連合艦隊の最後』が大東亜戦争の戦記であるのに対して、こちらは帝国海軍創設から戦争に突入するまでの歴史をまとめたものだ。
著者は序文で述べている。
「私は、日本の大海軍の上に、日本民族の誇りを見るものである。世界が「三大海軍国の一つ」と公認した事実に基き、この資源の乏しい国、百年遅れてスタートした小さい国が、よくもかかる大海軍を造り上げたものだと、それを造った日本に自賛の言葉を呈したいのである。その限りに於て、これを日本民族の誇りと称しても、世界は決して笑わないであろう。」
その「日本民族の誇り」を丁寧に叙述しており、日清日露戦争、シーメンス事件、自身も巻き込まれたキャッスル事件、八八艦隊計画、海軍航空隊創設秘話、軍縮条約、一万トン巡洋艦コンクール、友鶴事件、第四艦隊事件…もう何でも書いてある。
著者本人も突っ込んでいるが、帝国海軍の事を書いているはずなのに、いつの間にか山本権兵衛の話になっていたりするのはこの両者が不可分な関係であることが判って微笑ましい。
「名艦建造の技術、当時に於ける科学最高水準の集積と活用、それを指導運営した人々、みな日本人である。つい十数年前にそれを成し遂げたほどの民族は、心の持ち方次第で、何かの方面に国の誇りを再現し得ないはずはあるまい」(序文より)
「だから頑張れ!」と著者は言外に述べているのであって、本作は戦記であり歴史書であると同時に、日本民族全体に対する応援歌となっている。
執筆時期の古さから来る間違いもあるのだが、そこは気にしないで大らかに読んだ方が絶対に楽しく、読後は帝國海軍に対する印象が良い方向に変わるはずだ。

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大海軍を想う: その興亡と遺産 (光人社ノンフィクション文庫 343) 文庫 – 2002/3/1
伊藤 正徳
(著)
- 本の長さ542ページ
- 言語日本語
- 出版社潮書房光人新社
- 発売日2002/3/1
- ISBN-104769823436
- ISBN-13978-4769823438
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登録情報
- 出版社 : 潮書房光人新社 (2002/3/1)
- 発売日 : 2002/3/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 542ページ
- ISBN-10 : 4769823436
- ISBN-13 : 978-4769823438
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,087,711位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2003年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
先の大戦で消滅した帝国海軍の誕生からのそののそ消滅まで事実と筆者の良識ある見解により忠実に表現さています。
大戦以後、戦争放棄の大原則のもと生活しているが、帝国海軍があったからこそ現在の日本があるのかと考えさせられる一冊。
大戦以後、戦争放棄の大原則のもと生活しているが、帝国海軍があったからこそ現在の日本があるのかと考えさせられる一冊。
2004年5月24日に日本でレビュー済み
昔読んだときは、古めかしい調子で書かれているように感じた。
読み直してみると、そんなことはない。
たとえば日清戦争の記述など、意外に要領を得て、ある程度詳細だ。
坂の上の雲などと比べてみても、必要な知識が充分に語られており、しかも船と海戦を良く知る人の、的確な視点が光る。
清国の横陣に対して、縦陣で攻める日本艦隊。
主力の比叡・扶桑は鈍足のため追いつけず、やむなく敵中を分断突破したというあたり、あたかもネルソンの時代のような戦いぶりだ。それでも沈まなかったところをみると、的確な判断だったのだろう。
そうした細部にまで目が届き、この海戦の勘所に迫る手がかりが随所に見られる。
やはり著者は、大海軍記者であったのだと深く感心した。
読み直してみると、そんなことはない。
たとえば日清戦争の記述など、意外に要領を得て、ある程度詳細だ。
坂の上の雲などと比べてみても、必要な知識が充分に語られており、しかも船と海戦を良く知る人の、的確な視点が光る。
清国の横陣に対して、縦陣で攻める日本艦隊。
主力の比叡・扶桑は鈍足のため追いつけず、やむなく敵中を分断突破したというあたり、あたかもネルソンの時代のような戦いぶりだ。それでも沈まなかったところをみると、的確な判断だったのだろう。
そうした細部にまで目が届き、この海戦の勘所に迫る手がかりが随所に見られる。
やはり著者は、大海軍記者であったのだと深く感心した。
2005年3月16日に日本でレビュー済み
先のレビュワーのなぞりがきになってしまうが、良識ある、公平な目で日本海軍の生い立ちから滅亡までがよくまとめられている。とかく「軍人が戦争をひきおこし、今の日本を滅亡にまで追いこんでしまった」との意見も巷ではよくきくが、一方では(やはり先のレビュワーもいうとおり)この海軍があったからこそ、今の日本もあったのではないかと感じる。とにかく創立いらい国の独立を守るために一所懸命だったことには相違ない。
そう思うとき、遠いことのようにしか感じていなかったが、日本人が日本のために戦った軍人の慰霊をするのは当然ではないかとも思えた。
ちなみに日清、日露戦争における戦史、海軍発展における英米からうけた支援、軍縮から太平洋戦争に突入するまでの資料としても十分に読み応えがある。
そう思うとき、遠いことのようにしか感じていなかったが、日本人が日本のために戦った軍人の慰霊をするのは当然ではないかとも思えた。
ちなみに日清、日露戦争における戦史、海軍発展における英米からうけた支援、軍縮から太平洋戦争に突入するまでの資料としても十分に読み応えがある。