山川進という名前に聞き覚えがあったので自分のレビューを遡ってみたら5年前に
ガガガ文庫から刊行された「うちの魔女しりませんか」以来…不思議な懐かしさに引っ張られて拝読。
物語の舞台は剣と魔法と冒険者が大した説明もなく普通に存在している、いわゆる和製RPGベースの世界。
冒険者は誰でもなれる「下級職」、経験積まないとなれない「上級職」、経験以外に求められる物がある「英雄職」に
クラス分けされているが、困った事にこの世界、既に魔王が倒され、あらかたのモンスターが魔界に戻ってしまった事で
残っている僅かなモンスター退治の依頼は上級職以上がガッチリ握って、潰しのきかない「下級職」の冒険者が
職にあぶれて盗賊なんかは強盗や追剥に落ちぶれてしまっている。
物語は「転職を極めし者」と呼ばれる主人公のアサヒがちょっとした事件で出会った
バニーガール姿の遊び人マキナから「私は賢者に転職したいので指導してください」と頼み込まれる所から始まる。
転職希望者の集う冒険者ギルド「兎の冠」に連れていかれたアサヒが引き合わされたのは
マキナ同様に転職を望む土魔導士のメリッサと死霊術士のククル。
目指す職業も転職の動機もメタメタな三人娘の望みを叶えるべくアサヒは転職に必要な
「寄付金」、「経験値」、「転職アイテム」を集めるためのドタバタ騒ぎを繰り広げる事に…
むう、全体的にオーソドックスというか…
ラノベの元祖みたいな「ロードス島戦記」が何の説明もなく作中で「冒険者」やら「盗賊ギルド」なんていう
RPGの基礎知識を読者の前提条件とした単語を平然と並べていた系譜を引き継いでいる
何というか読んでいてちょっと懐かしくなる「ラノベ」である。
「経験値」なんて概念が登場人物に自然に認識されている辺り、同じ初期スニーカー文庫でも
深沢美潮の「フォーチュン・クエスト」あたりの系譜を引いている、と言っても良いか?
主人公のアサヒに「転職したいから指導して」と依頼してくるのは三人のヒロインなのだけど、
この第一巻に関して言えば、完全に表紙に描かれたバニーガール姿の胸のデカい「遊び人」マキナが主役。
バニーガールと言っても白髪・赤い目でグルカナイフを振り回すわけじゃありません。
…そんなの出したらガガガ文庫から吊し上げを食らいます。危なかったですね?
(冒頭で出てくる人の首を刈るウサギも「ボーパル『ラビット』」になってます)
街中でも平然とバニーガールのスタイルを貫いてますが他人の認識を受けないわけじゃありません。
…そんなの出したら電撃文庫から因縁を付けられます。危なかったですね?
(なので小さいお子さんを連れたお母さんから「しっ、見ちゃいけません」とか言われてます)
なのでこれが何というか「なんでこんなのが冒険者やねん」と総ツッコミを入れられそうな「役立たず」。
特殊スキルといえばサイコロを振ると現れる遊び人姿の精霊(二頭身だが着替えが妙に凝っている)の
示す「命令」に強制的に従わされて体が動いてしまう代わりにちょっとした幸運を呼び込むという
特殊スキルだか罰ゲームだか小堺一機の「ライオンのごきげんよう」なんだかよく分からん代物。
しかも「命令」の内容がことごとくセクハラチックという読者サービスの塊。
おまけにマキナ自身は内気で恥ずかしがり屋で真面目な性格なので
町の中でバニーガール姿をしているだけでも相当に恥ずかしいのだが、サイコロを振るたびに
涙目になって羞恥プレイを披露するというそちらの趣味の人には堪らんヒロインとなっている。
そんなマキナの賢者を目指す必死の努力は何故か酒場でのバイトや海での潮干狩り、
ちょっとマシなところで宝箱の開封作業と「これはどう転職に繋がるんだ」という代物ばかり。
中盤はこの転職活動に必要な物を集めるエピソードが短編連作みたいな感じで続いている。
短いページで起承転結がしっかり付けてある辺り、割と話作りはしっかりしているかと。
物語はそんな転職活動を目指したドタバタ騒ぎのまま終わるのかな、と思ってたら、
後半でマキナが賢者を目指す理由や、冒険者の最上級職「勇者」に纏わるちょっとエグい世界観、
「勇者になりたくてあらゆるスキルを身に着けようとした凡庸な男」の話なんかが絡んでくる事に。
個人的にはこの辺のシリアスな話をもうちょっと前面に出しても良かったかな、と思った。
特に序盤と終盤で挿入されるマキナ視点の部分がアサヒ視点だけだったら作れなかった
マキナのキャラクターとしての奥行を生み出す効果を発揮していただけにこれはもうちょっと上手く
使うべきだったと、そこが惜しまれる。
ドタバタ劇がひと段落してマキナが去ったギルド「兎の冠」の風景なんかは「うちの魔女しりませんか」では
ベースとなっていた「しんみりとした感じ」がよく出ていただけに、作者の個性が出るこういう部分は
もっと多くても良かったかな、と。
あとがきによれば作者が普段とは違って「キャラ重視」の話にしようと思った、という事なので
話全体の雰囲気はサクッと読めるスナック感覚のコメディを狙って、シリアスな部分や
しんみりした雰囲気は意図的に抑え目にしたのかもしれないが…。
構成が完全に「引き」となっているのは評価が分かれそう。
プロローグではアサヒが指導するヒロインが三人娘ではなく、四人娘だったのに
本編では残りの一人が出てこず、ラストシーンで登場させて「次回へ続く」ってのは…
うーん、これはどうなんだろう…?
ともあれ、軽く読むコメディの第一巻としてはまずまずの出来。
アサヒとマキナの過去は匂わす程度だったのでラブコメ的な関係の進展は次回以降に期待する。
特に妙に伏せられた部分の多かったアサヒの過去の話はラストシーンに登場したヒロインや
酒場の女主人・ミレイユあたりも加わってきそうだし、この辺りはちょっと気になる。
今回はマキナの転職のサポート役だったメリッサやククルメインの話も読みたいので
二巻以降も期待。
追記
表紙に描かれたあのマーク…30年ぐらい前の「未公開株事件」の時にテレビで散々写されたアレだよな?
あの会社の系譜を引くMF文庫あたりなら分かるが、出して大丈夫だったのか、GA文庫の中の人?
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ぜったい転職したいんです!! ~バニーガールは賢者を目指す~ (GA文庫) 文庫 – 2017/2/14
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購入オプションとあわせ買い
私を『一人前』にしてください!
「私たちが転職できるように指導してください! 」
「断る」
魔王が勇者に打倒され、冒険者たちはヒマになってしまっていた。かつて「あらゆる職業を極めしもの」と呼ばれた青年、アサヒも職を失って放浪していたが、賢者への転職を目指す遊び人の少女、マキナに転職のためのコーチを依頼される。好条件に惹かれるアサヒだったが、そのメンバーというのは一筋縄ではいかなくて――!?
賢者になりたいけど恥ずかしがり屋なバニーガールの遊び人。
アンデッドになりたいくらいゾンビを愛する死霊術士の幼女。
土魔法が得意だけど炎魔法に憧れる、園芸が得意な魔道士。
残念ヒロインたちに囲まれた、ファンタジー転職活動ラブコメ、スタート!
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- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社SBクリエイティブ
- 発売日2017/2/14
- 寸法10.6 x 1.3 x 15 cm
- ISBN-104797390301
- ISBN-13978-4797390308
商品の説明
著者について
山川進(やまかわ・すすむ) 北海道出身。 「学園カゲキ!」 (ガガガ文庫)が第1回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞を受賞。同作にてデビュー。 他の著作に 「バグゲーブレイカー!」 (オーバーラップ文庫)など。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年2月18日に日本でレビュー済み
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2017年7月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
オチが単純すぎる。「ヒロインの遊び人には職業病として全財産をカジノにつぎ込んでしまう」という特性があると分かった時点で、オチが読めてしまった。しかも同じオチをひとつの巻で二回使っている。
2017年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なんと言うか、最後の最後でいきなり台無しになった。最後、そういった展開になるんだったらプロローグが成立しないと思います。プロローグは、二人目線で作らないとおかしいし少なくとも一人は、完全に終わってしまっているんで序盤の内容は訂正しないとつじつまが合わないか2作目以降強引に展開を変えないと行けなくなると思うので微妙ですかね。 あらすじは、食い付き要素かなりあるのに中身がもったいないかな