この本の構成は、多くの取材者によるノンフィクションという体裁を取っているので一貫した主張はない。また、その内容もバラツキがある。
それでも、力作と云える。
先ず、田布施の地下茎と云われているものがある。
山口県旧熊毛郡田布施町を中心とする地域から、政治家を始めとする人材の異常な程の出現である。
岸、佐藤、安倍それ以前は伊藤博文、木戸幸一、松岡洋右、吉田茂がいる。また、河上肇、宮本顕治もいる。
他に山口県出身の政治家には、山縣有朋、桂太郎、田中儀一、寺内正毅がいる。
これらの政治家は、天皇と至近距離で関わっていた。謂わば、シンジケートとでも云うべき人脈である。
「踊る宗教」の北村サヨの生誕地でもありその孫は、参議院議員であり安倍とも繋がっている。
鹿児島県にも熊毛郡もあり多布施村があった。
あの北朝鮮拉致事件の現場である薩摩半島吹上浜の近くである。
小泉純一郎の父の出生地とも云われている。朝鮮総連ビル落札の池口恵観も同様噂されている。両者の共通点は、北朝鮮に極めて近くまた、朝鮮人の人脈が豊富である。小泉の父は、北朝鮮帰還事業の熱心な推進者でもあった。
田（多）布施には、朝鮮人集落があったと云われている。確たる証拠は残っていないようだ。ただ、中華文明圏は、歴史の捏造など造作もないので注意を要する。
旧多布施村の近くには、慶長の役で南朝鮮から連れてこられた朝鮮人陶工集団が住む旧苗代川、現東市来がある。
どちらとも、瀬戸内海、太平洋に面している共通点がある。
また、タフセと云う地名は、熊本、佐賀にもあり全国的に分布しているのかもしれない。
明治維新後も山口の田布施人脈は、綿々と続いている。
その遠因は、外様大名毛利氏を藩主とする長州藩にあるのではないか。
面白い話が残っている。
新年の会に於いて、家臣が「今年は、倒幕の機は如何に？」と藩主に伺いを立てる。これに対し藩主は「時期尚早」と答えるのが習わしであった。
作り話にしても良くできている。
長州征伐で幕府から激しい圧迫を受けたが、ここでも吉田松陰、高杉晋作、桂小五郎等人材を輩出し維新を成就した。多分、江戸以前の歴史も累積してる。
安倍総理の誕生にしても、このような下地が大本に在るのだろう。宰相となるには、極意が要るようである。田中角栄、小泉純一郎は、例外である。この本に書かれている歴史的人脈の深さと厚さを見て改めて感じる。
権力と差別の構造も権力に大きく作用していると思うがこれは手に余る。
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