注意をひきつける表題に釣られて読んでみたが、本書の実態は非常に質の低いトンデモ本である。
第一章は「着々と進んでいる中国の対日工作」と題されているが、内容に全く統一がない。上海領事館の外務省職員自殺事件や橋本元首相のスキャンダルが、革マル派と中国諜報機関のつながり、第二次世界大戦中の対日諜報活動などの話とごちゃまぜに出てくる上、どの挿話についてもまともな検証はない。著者は「人民解放軍が統一教会、勝共連合をとりこんでいる」という主張を、確たる証拠も示さず展開するのだが、「参考資料」として、統一教会の働きかけで現在も建設が続く(?)という「日韓トンネル」の目撃証言を載せているのはなぜだろう。著者の主張をどう読んでも、日韓トンネルと中国の対日工作に関係があるとは思えない。
第二章では中国共産党が、日本国内に潜入させていた工作員に指示した「秘密指令文書」が紹介されている。これは1972年当時某大学教授が香港で入手した、とされているが、私のような情報の素人が読んでも、明らかに偽物とわかる代物だ。一体どこの間抜けな情報機関が、「秘密文書」に「工作員は総計2000名」だの、「必要経費は中国銀行東京支店から支出する」などと書くだろうか。こんなお粗末な文書を何の検証もなしに紹介するとは、読者も馬鹿にされたものである。
第三章以降も統一を欠いた飛び飛びの叙述が続く。なかには中国の日台分断工作など、興味をそそられる記述もあるが、どれも証拠があやふやで信用度は低い。南京事件の犠牲者の誇張や、盧溝橋事件の中国共産党謀略説なども論じられているが、どれも二番煎じだ。
要するに本書は、人目を引く表題で購買意欲を誘う羊頭狗肉、悪しき商業主義の産物といえるだろう。強いて言うならば、本書の貢献は、このような重要なテーマについてきちんとした本が書かれていないことに気づかせてくれたことにあるといえるかもしれない。

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中国対日工作の実態: 日本の中枢、政・官・財を籠絡する工作活動の手口 単行本 – 2006/11/1
福田 博幸
(著)
- 本の長さ286ページ
- 言語日本語
- 出版社日新報道
- 発売日2006/11/1
- ISBN-104817406364
- ISBN-13978-4817406361
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商品の説明
著者について
福田博幸(ふくだ・ひろゆき) 昭和23年 青森県生まれ 昭
和45年 拓殖大学卒業後KKラジオ関東入社。報道部記者。平成2年報道部課
長で同社退社。
平成6年東京MXテレビ開局に参画。平成16年同社退社。
和45年 拓殖大学卒業後KKラジオ関東入社。報道部記者。平成2年報道部課
長で同社退社。
平成6年東京MXテレビ開局に参画。平成16年同社退社。
この間、昭和54年から社団法人 日本生活問題研究所理事長。
主な著書に「勤労・国労を斬る」「全逓を斬る」「自治労を斬る」「過激派に蹂
躙されるJR」「日航機事故を利用したのは誰だ」などがある。
専門は公安情報の分析。
登録情報
- 出版社 : 日新報道 (2006/11/1)
- 発売日 : 2006/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 286ページ
- ISBN-10 : 4817406364
- ISBN-13 : 978-4817406361
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,270,625位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 389位中国のエリアスタディ
- - 4,441位国際政治情勢
- - 8,804位政治入門
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2008年9月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2011年3月21日に日本でレビュー済み
インテリジェンスの世界には、基本的に明白な証拠はない。出せるときは、「もう終わったとき」である。或いは、「出すことが国益」であるときである。だから、インテリジェンスの世界では、いろいろな不規則なことが起こる。情報源の秘匿は、最優先事項というよりこの道に関わる者の「倫理」である。本物を秘匿して偽物を出し、この程度のことしか知らないというメッセージを送ることもある。あやふやな情報、確証のとれない事実の集積。伝聞。否定された発言と実際の行動の乖離。そういった猥雑な全ての物事から、あり得べきストーリーを読み取り、相手の意思を確認し、利益を得るために彼らがやるであろう様々な工作を、最も卑劣でえげつないレベルで想定する。
こういった世界が嫌いな方は、自分が清潔で間違いが無いと思う世界の片隅で、人間の善意と未来の幸福を祈って生きるべきである。
福田博幸氏の「中国対日工作の実態」は、公開された文献、資料、直接的・間接的な経験と人類の歴史一般から概略的に導き出される経験則とまさしく一致するものである。今、日本国民が、一度は読むべき貴重な書物であることを疑わない。
こういった世界が嫌いな方は、自分が清潔で間違いが無いと思う世界の片隅で、人間の善意と未来の幸福を祈って生きるべきである。
福田博幸氏の「中国対日工作の実態」は、公開された文献、資料、直接的・間接的な経験と人類の歴史一般から概略的に導き出される経験則とまさしく一致するものである。今、日本国民が、一度は読むべき貴重な書物であることを疑わない。