1986年12月に初版が出ているが、表紙は現在のような山本権兵衛の写真など無くシンプルな字のみのデザイン。
最近出る明治期(日清・日露戦争に関係した)の軍人に関して書かれた本に、現在のこの本のようにこの種の軍服の
正装姿の老年期の写真が使われることが多いが、実際には30・40代の青壮年期に活き活きと活躍した人達である。
ご本人ではあっても(権威付けのためにだろうが)ご老体の写真を出版社が平気で使うことに違和感を覚える。
著者の千早さんは海軍の連合艦隊参謀経験者で、戦後海軍省の資料調査部やGHQの戦史室調査委員に加えられたように
海軍の歴史への理解、資料を見る目、読み解く、纏めることに、偏り無く平明であったことが想像されるが、読んでみると
箇条書きとも思える整理の良さで、章毎のまとまりも簡潔ですっきりと読みやすい。
山本権兵衛は40歳で今で言う海軍省の官房長となり、明治期の日本海軍の確立を中心となり進め、46歳の若さで海軍大臣に
進む。日露戦争時の海軍大臣であり実際の戦争開始の決定は、彼が準備が整ったと判断したから、御前会議で開戦の方針が
全員の一致で決められたようで、若年でありながら人格識見、先を見る目が優れていたことが知られる。
一人山本権兵衛だけでなく明治期の軍人らのリアリストぶりは、先進諸外国に学ぶため若い時期に年余の期間を外国に派遣
され、かの地の歴史・文化・政治・経済などを柔らかい頭とハートで吸収したことが背景にあるが、日露戦以降の日本は、
リアリストよりも空想的で過激な国粋主義・国家主義者の声の大きさで、方向を狂わされていく。
権兵衛が現役を去るきっかけがシーメンス事件であるが、小事を不必要に膨らませある意味でっち上げられた事件であったことは
現在では共通の認識であるが、政局に利用した政治家・煽ったマスコミに大東亜戦争につながる責任の一端があると言って間違い
ないだろう。
戦争を始めることより、どこで矛を収め、国益を最大にできるのかを重視していた明治期軍人のリアリストぶりに比較し
本の中に一部描かれる大東亜戦時の陸海軍中央部の、掛け声は勇ましいが無手勝流の実体とのギャップに、同じ日本の軍人かと
驚きを禁じ得ない。昭和初期までの日本海軍史を学ぶためのよき一冊です。

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海軍経営者山本権兵衛 新装版: 特別付録秋山真之が乃木希典に二〇三高地奪取を迫った書簡 単行本 – 2009/11/1
千早 正隆
(著)
- 本の長さ269ページ
- 言語日本語
- 出版社プレジデント社
- 発売日2009/11/1
- ISBN-10483341922X
- ISBN-13978-4833419222
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登録情報
- 出版社 : プレジデント社 (2009/11/1)
- 発売日 : 2009/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 269ページ
- ISBN-10 : 483341922X
- ISBN-13 : 978-4833419222
- Amazon 売れ筋ランキング: - 776,575位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 96,702位ノンフィクション (本)
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