北海道岩見沢市が中心の話なので、新聞で紹介された時にすぐに読んでみようと思いました。
この話は、及川清美さんと藤本（旧姓）のり子さんのお話です。清美さんは脳性麻痺による１種１級の身体障害をもって育った方です。のり子さんは、アルビノで視力が弱い障害を抱えていました。
清美さんは障害を持っていたために、幼少から両親に虐待を受けて育ちました。
清美さんが２４歳になった時、岩見沢市の「桜の園」という、大人の重度身体障害者更生援護施設に入所することで、初めて実家を離れます。またそこで寮母をしていたのり子さんと出会います。
清美さんは、タイプライターを手に入れますが、障害を持っているため大変な思いをしながら詩を書き始めます。のり子さんは清美さんの詩にイラストを描くようになり、二人の関係はゆっくりと進み始めます。
その後清美さんは「北湯沢湯の里」という施設に移り、二人は遠距離恋愛に入ります。
清美さんは病気がちであり、何度も入退院を繰り返し、のり子さんは施設での過酷な仕事のために腰を痛めながら、３００通もの手紙のやり取りで、お互いの気持ちを交し合います。
この本で描かれている及川清美さんは、他の入所者と違い、自立心が強くリーダーシップを持ち、常に表面上では前向きであります。清美さんの生きることに対する「情熱」がひしひしと伝わってきます。
また、二人の恋愛、そして結婚は、障害者と健常者であるために、常に障害と不安が付きまといます。
これでもかという現実との葛藤は読んでいても息苦しくなるほどです。
私はできるだけ多くの方にこの本を手にとって頂きたいです。
現在清美さんは６２歳、のり子さんは６３歳で、編者森浩義氏の言葉に、「お二人の存在が、これまでまったくマスコミの話題とならなかったのは、お二人の結婚生活があまりに自然で、あまりにも静かだったためでしょう」とあります。
その根底を支えたものは、お二人の絆の強さでしょうが、その絆をどれくらい時間をかけて作ったかが本全てを通して綴られていると思います。
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