交通運輸労働者の労働条件の劣悪さや、その結果としての疲労はサービスの
質の低下に影響し、最悪の場合、乗客や市民の安全を脅かすことになります。
著者は労働科学の専門家で、その視点から2005年4月に発生した
JR福知山線の事故を題材にJR西日本の電車運転士がおかれている労働実態と
国鉄の分割・民営化以後の労働強化を、それ以前から経年的に実施してきた
運転士からのアンケート調査などを基に浮かび上がらせます。
そこ明らかになったことは、勤務後の乗務員宿泊所で泊まり、翌朝再び乗務する
「泊り・明け」勤務の特性や変則シフト勤務などにより、眠気が発生する時間を
特定し、また、一連続乗務の長時間化に伴う便意を我慢する苦痛や不規則な
食事時間という「食う、寝る、出す」に支障を来すという過酷な労働環境、更には、
事故の背後要因といわれ、当時話題となった「日勤教育」、あるいは、社員が
乗客として乗り込んで減点式で運転士の作業をチェックする「客室添乗」などの
労働管理について調査を進めて、それを具体的な数値に落とし込めるものは
指標化して環境の劣悪化を示します。
また、一方の安全面では行路の基準の電車運転時間を短縮して、列車遅延が
日常的に発生するくらいまで運転の余裕を削り、経営効率を優先させようとする
会社の姿が見えてきます。
上記だけに事故要因を帰結することは早計で、もちろん複合的な要因で事故は
発生したと考えられますが、著者は労働者の健康=乗客の安全を軽視した体制が
残る業態であるならば、自動車運転の労働時間などの規則同様に、社会的な規則の
強化という対策が必要ではないか、というところまで踏み込んで提言をまとめています。

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電車運転士の労働と眠気: JR福知山線事故が提起する安全の条件 (はたらく人々のいのちと健康 9) 単行本 – 2009/7/1
重田 博正
(著)
- 本の長さ104ページ
- 言語日本語
- 出版社文理閣
- 発売日2009/7/1
- ISBN-104892595977
- ISBN-13978-4892595974
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