川澄氏は『資料 日本英学史』全3巻(大修館書店)の編者であるが、『資料日本英学史1(下)文明開化と英学』(1998)の「あとがきに代えて」で「とにかくアメリカの鯨捕りとか日本の漂流民のような庶民がなおざりにされがちであった」という趣旨のことを述べている。その思いが高じて本書となったのであろう。
フェートン号事件の後も日本に接近してくる外国捕鯨船の脅威に幕府は文政8年(1825)に異国船打ち払い令を出し鎖国政策を強め洋学者の弾圧を計ったが、迫り来る英国および米国の勢力は無視できなくなり、やがて安政元年(1854)に開国の世になる。この意味で開国と捕鯨船は密接な関係にあるが、捕鯨船が開国に果たしたもう一つの役割がある。それは漂流民中浜万次郎と偽装漂流民ラナルド・マクドナルドを日本に届けたことである。土佐の漁師中浜万次郎は漂流中のところを米国の捕鯨船に助けられ、米国で英語の教育を受けた後、日本に帰り、『日米対話捷径』を著して英学史に燦然と輝く星の一つになった。捕鯨船員マグドナルドは船長の助けを借りて日本に「漂着し」、阿蘭陀通詞に英語を教えるなどして日本で初の英語のネイティブスピーカーの教師の役割を果たした。
捕鯨と漂流民の観点から日本の歴史・英学史をとらえた研究である。一読をお薦めする。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
黒船異聞 ―日本を開国したのは捕鯨船だ 単行本 – 2005/1/7
川澄哲夫
(著)
19世紀前半、日本近海には数百隻の異国の捕鯨船が押し寄せていた。ペリー来航は、それらの捕鯨船員の要求や、難船して太平洋をただよう漂流民の存在を背景に実現した。本書は、アメリカ捕鯨業の発展から説き起こし、ペリー艦隊が訪れた久里浜・横浜・下田・箱館における彼らの足跡を明らかにしながら、豊富な史料と図版を用いて、日米の異文化体験をつづった歴史ノンフィクション。日本の開国に重要な役割を果たした漂流民・万次郎、横浜応接所の警護にあたった佐久間象山、密航を企てて失敗した吉田松陰、オランダ語通詞の森山栄之助、アメリカ側通訳ウイリアムズ、さらに艦隊員と気安く付き合う庶民などを浮き彫りにし、ペリー来航の具体像を余すところなく描き出す。
- ISBN-104896601882
- ISBN-13978-4896601886
- 出版社有隣堂
- 発売日2005/1/7
- 言語日本語
- 本の長さ248ページ
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 有隣堂 (2005/1/7)
- 発売日 : 2005/1/7
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 248ページ
- ISBN-10 : 4896601882
- ISBN-13 : 978-4896601886
- Amazon 売れ筋ランキング: - 777,748位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう