先ずグルダのモーツァルトが素晴らしい。今日のピアニストからはこの様な小鳥がさえずるが如き歌を聴くことは叶わない。
それだけでも希少価値が高いのだが、ベーム博士指揮バイエルン放送交響楽団も単にサポートするだけでなくピリオド楽器では表現できないモーツァルトの深淵なる美学を見事に描き切っている。
ブラームスの方は長い間、ウィーン・フィルとの来日公演のライヴを愛聴していたが、アナリューゼは基本的には同じである。ベーム博士はこの楽団から最上級の演奏を引き出している。
ベーム博士は今日では特徴がないと揶揄されているが、この構築美には余人の追随を赦さない厳しさがある。
博士がミュンヘンに住んでいたこともあり指揮する機会も多かったのだと思うが、両者による更なる名演を聴いてみたいものである。