イジー・トルンカの遺作にして最高傑作の1つ「手(RUKA)」。
手、手、手。
粘土職人はトルンカそのもので、彼に無理矢理「手」つまり肖像を作らせようとする巨大な手は会社を現すのか。
いや、自らを追い詰めるトルンカの分身でもあるのだろう。
あの手は「大乱闘スマッシュブラザーズ」のマスターハンドの元ネタ?
職人と巨大な手のコミカルかつ切ない闘いを描いた短編。
人形が生物の如く生きている滑らかさは最期まで健在だ。
ろくろ職人は器を作り続ける。彼が愛する鉢植えを収めるような。
巨大な手は絶えず職人に自分の肖像を作るように要求する。
職人はそれを頑なに拒む。
肖像としての「手」、職人の「手」、製作者トルンカ自身の「手」。
様々な「手」のイメージがモンタージュされる。
戦いの度に、職人が丹精込めて作ってきた鉢植えは次々に割れていく。
ろくろが回れば職人もまわりながら箒ヤハンマーを振り回し・・・いや振り回され、自らの運命も振り回されていく。
巨大な手が出入りする外の空間は、暗黒のように不気味に拡がる。
巨大な手は箱や新聞からワープしたりTVを使った洗脳まがいの行為までして徐々に行動がエスカレート。
どんだけチート&ナルシストなんだよ・・・。
職人もハンマーで指の間を叩く“同じ職人としてせめてもの情け”か“次はテメえの指だぞ”という警告をかけながら抵抗を続ける。
黒い手は死神のように職人に襲い掛かる。
職人もまた、支配される事を拒否し、最後まで闘い抜く。
ドンドコ鳴り響く太鼓は、職人に迫る“死”を暗示しているのか。異様な緊迫感が画面を包む。
自らが愛したものに“殺される”皮肉。
教訓:鉢植えは高いところに置くな
クライマックスはトルンカの死を予告するような場面。
凄い作品だったよ。