「怪奇大作戦」は何十年も前に、シリーズを見ており、怪奇性と岸田森のカッコよさが印象的であった。なかでも、「京都買います」は優れたエピソードであった記憶があった。ここ数年、私は映画やテレビのロケ地を旅行することを楽しみにしているが、金戒光明寺をロケ地にしている作品を探していた時に「京都買います」がロケ地であることを知り、久々に再見した。
本作は、岸田の主演であるが、岸田が珍しく捜査対象の女性(演、斉藤チヤ子)に恋をするという設定であるためか、岸田はいつもの陰のあるクールな演技ではなく、むしろ感情的で、いくつかとぼけたユーモアのあるシーンもある。
本作を見て驚くのは、ロケ地の多さ。京都の寺を知る人であれば、不自然な移動の仕方で、場面が切り替わると、ひとつの寺から別の寺にいつの間にか移動しているほど。冒頭は、京都市左京区の金戒光明寺からだが、以下が登場順に、本編で主に岸田が移動した寺となる。太秦(うずまさ)近くの広隆寺。仁和寺。金戒光明寺。宇治市の平等院。金戒光明寺(山門に岸田は登っているが、現在一般客は登れない)。高台寺圓徳院の三面大黒天。宇治市の萬福寺。東福寺の通天橋。金戒光明寺。知恩院。銀閣寺。高台寺。
上記のように金戒光明寺には複数立ち寄り、各寺の地図上の位置を考慮しない登場順となっているが、最終盤は京都市の北が舞台で多くは嵯峨野にある以下の寺が登場。化野(あだしの)念仏寺。常寂光寺。二尊院。光悦寺。平野屋(寺ではなく鮎料理の老舗で、化野念仏寺に近い)。ラストシーンは苔の美しい祇王寺(ぎおうじ)。祇王寺は悲恋の尼寺として知られており、本作のストーリー展開としてもふさわしい歴史をもつ。
エンディングで登場するのは、京都タワー、東寺の五重塔、新幹線と、最後まで京都の名所が紹介される。本作は、一度目はストーリーを、二度目以降は名所の数々を楽しみたい作品。