U47
すべてに渡って中途半端な印象。緊迫感あるべき戦闘シーンは突然終わるし、執行猶予となった死刑囚の牧師はどうなったのかわからない。最後はU47は撃沈されたらしいが、そのシークエンスは唐突にプリーン艦長が敵艦に救出されるシーンから始まり、せっかく救われたその船がドイツの魚雷によって撃沈されて終わる。戦争が終わって10年そこそこ、ナチ時代に英雄扱いされた実在の人物を単純に英雄にしてしまうわけにはいかないだろうし、戦場の英雄は単なる人殺しなのだという点ははずせない。さらに収容所というナチスの蛮行に対して、なにも言わないでいるわけにはいかない。なかなか難しい状況である。主人公がノーテンキな英雄ではこまるわけで、そう言う点では煩悶懊悩し続ける。★★
さめと小魚
こちらのほうが物語として完結しているし、おもしろい。最後の脱出シーンの緊迫感もこちらのほうが良い。鮫と小魚という題名の意味も最後の方でようやく意味が分かるようになっている。★★★
グストロフ号
少し前にギュンター・グラスがこの事件を取り上げ、その際、グラスは右翼たちに迎合するのかという非難を受けたと聞いている。犠牲者の数はタイタニック号をはるかに越えるが、これまで話題になることはほとんどなかった。ナチス時代のドイツ人の悲劇というのは声高に語ることがはばかれてきたのだろうし、非常に注意深く取り上げないと、当時のドイツを肯定することにつながるのではという心配もあったのだろう。ただこの時期の他のドイツの戦争を扱った映画と比較してより慎重に作られている気がする。ナチス親衛隊が、匿っていたユダヤ人を探しに来て、だれもそれを留めることができないシーンや、ソ連軍が襲いかかり、東プロイセンのドイツ人たちが虐殺されるのも、ヒトラーによる絶滅作戦の報復として語られる。ほとんどみんな死んでしまうが、最後に救助された貴族の夫人がつぶやくセリフが被害者としてだけでなく、傍観していた者の懺悔として、反戦を強く主張している。しかし犠牲者の数9000人以上、そのうち半数が子供というのは辛い。★★★