このゲームは
個別ルート(各ヒロインルート)→Routes編→Roots編
という形で進んでいくのですが、メインのお話はRoots編です。Roots編を境に世界観がそれ以前のものと大きく変わり、その名の通り主人公のルーツを辿っていく話となっていきます。このお話が何とも深く、目を見張るものがあります。しかし、本編をすべてプレイし終わった後、「個別ルートのキャラは存在する意味があったのだろうか」と思わされます。それほど、Roots編での各ヒロインの存在意義は皆無です。というか、メインヒロインのみちらっと登場する程度だったと思います。
このゲームのシナリオは、一人のライターが「七海ルート・夕菜ルート・Roots編」を担当し、もう一人のライターがそれ以外のシナリオを全て担当しています。思い返してみると、前者のライター氏のシナリオの方が若干硬い印象を受け、後者のライター氏のそれは緩い印象を受けました。二人で合わせて一つの長い物語としたかったのかもしれませんが、それにしては各シナリオ同士の繋がりが若干不自然で、不完全燃焼しているよう感じました。また、個別ルートやRoutes編は世界観こそ個性的なもののストーリーがあまりにストレートだと感じました。
とはいうものの、開発された当時のことを考えると、アドベンチャーゲームにおいて各ヒロインルートの分量が多く質が高く、かつ設定も深いといったゲームはほぼ皆無であったように思いますし、そんな時にここまでのお話を描けるのは非常に評価されるべきことです。このゲームはあと数年初めて世に出るのが遅ければより良いものに仕上がったのかもしれませんし、またもっと評価も高かったのかもしれません。埋もれてしまっているのはあまりにもったいないです。
個人的にはプレイしてよかったと思える作品のうちの一つです。音楽の質も非常に高いです。