最初に皮膚が、一枚の衣のように切り外される。「このような図は、既にミケランジェロも絵にしている」と解説にあるように、皮膚、筋肉、腱や骨格が紹介されるこの巻は、美術解剖学的には最も興味深いだろう。
腱を引っ張って、手や脚の動きを再現する場面では、日常の動作の内に働くメカニズムが理解できる。新鮮な献体を使用しているので、肉体がまだ柔軟性を保っていて、自然な動きを見る事が出来る。
後半は、その筋肉に指令を送る神経を摘出。脳から脊髄を通って足先の神経に至る経路が、露わになる。例のBSE騒動の報道での、牛の脊髄除去作業の映像を思い出してしまい、少し微妙な気分にもさせられた。
フィナーレでは、取り出した神経系を、男性モデルの体に合わせて位置確認。モデルさんはきっと、玉袋が縮んだと思う。
普段、目にする体表の運動を支える構造と、脳と脊髄という、肉体の最も中心に隠された部位。この対照的な器官の関連性を知る事の出来る巻。