今更言うまでもなく１９７０年代のアメリカ映画を代表する大ヒット作品の原作小説。海水浴場に現れた人食い鮫によるパニックと、それを退治する男たちの織り成すサスペンスは動物が人を襲うというストーリーの「動物パニック物」としては代表格といえる。
小説では映画版で観られるような全長８メートルに及ぶ巨大なホホジロザメが人間に対して意図的な挑発行為や、奇襲攻撃で漁船を沈めたり、酸素ボンベをくわえたあげくに大爆発！といった派手な怪獣映画のような演出はなく、人間ドラマとサメの生態、メルビルの『白鯨』を髣髴（そのまんま）とさせる海上での鮫との闘争が綿密に書き上げられている。
しかし、ほぼ一章分を費やして海洋学者と主人公の妻との不倫にまつわるスチュエーションは、ストーリー上での伏線としてみても、はたして必要であったのかなぁ?という疑問は読むたびに感じる（まぁこの辺はガッツリ飛ばしてしまっても何ら差支えない）のだが、そんな所も差し引いたとしても原作としての小説と映像化された映画の双方で楽しめる稀有な作品。
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