古泉一樹という、表面上さらっとしていながら一癖も二癖もありそうなキャラが
歌う本キャラソン。第一弾ともども今回も本作ならではの絶妙なポップセンスに
彩られた選曲が実に楽しい。さらにまず、CV務める小野大輔の歌声が文字通り
何より魅力的。そして無論、古泉というキャラのcharactersongなのだから、
その一点に重点を置き、いかにキャラソンとして古泉の魅力を伝えるかに
尽力しているのかは、常に的を得た独自の表現でハズさない詞を縦横無尽に
紡ぎだす作詞家の畑亜貴の力量や「涼宮ハルヒ」という作品のはっちゃけた
楽しさを楽曲そのもので演出する作曲家のスタンス含め一聴した通り、である。
やはり男性向けの女性キャラものが、まず主眼に置かれている「ハルヒ」
キャラソンの中において、別の意味で変化球な(笑)キョンと同時に、しかし
唯一男性ものとして常に華のある展開を繰り広げてみせる古泉ソング。
それは今回、古泉らしい白々しく物事の表面を滑っていくかの人事のような、
それでも彼なりの思いやりや優しさが滲む知られざる裏の顔とともに、
甘いマスクにピリッとした毒気(スパイス)を効かせつつ、その矛盾した
独特の味を実に小気味よく弾むようなライトな楽曲の中に躍らせている。
やはりこういうテイストは男女ともに楽しめる古泉ならでは、という気が。
特に今回出色なのは、その知られざるもう一つの本音である"裏の顔"を、
実にハートフルで魅力的なミディアムバラードの2曲目で、惜しげもなく
しっとり切なく披露していること。これにはかなり惹かれるものがある。
1曲目がほとんど面白半分に、しかし蟲惑的でありながら実に楽しげな
駆け引きの微笑とともに彼らしい強引なスタンスで繰り広げるパーティの
如しの弾けたナンバーであるからこそ―おそらくその反動もあるのだろう。
"古泉なら"きっと、こんな反応はしない。絶対に...そういう常套句(きまり)が
あるからこそ、この意外性に心打たれる。そこはCVである小野自身の味を
これでもかと効かせ(それほどの決定打でもないが)その実にらしくない、
このあたたかみにホロッとさせられる。「古泉でさえ」憂う、この世界の行く末。
そこに何とも言えない人の優しさと救いを感じる。だからチクッとする程度の
痛みが物凄く切ない。そしてそれが、とても愛しい。それは、おそらく古泉も...
キャラソンにしておくには惜しい(苦笑)包み込むように甘美なPopバラード
でもあり。そして、そんな想像がワケもなく広がる罪作りな古泉ソング(笑