結果論だけど、前作の評判の悪さはむしろ今になって思うと良かったのかもとさえ思うことがある。
このアルバムで初めて完全に本間昭光氏が手掛けた楽曲がなく、すべてメンバーの二人のみで作曲されたものが収録されています。
一言で言えば「ここからまたポルノ、復活したな」と。
でも、個人的に変わったと思ったのはボーカル岡野昭仁さんの歌い方(発声)の変化です。
本人も15周年のインタビューで語っていましたが、一時期喉を気遣った発声をしていたので聴き比べるとかなり違います。
基本的に活舌の良い特有の歌い方は変わらないのですが、前作までは優しく歌い上げる印象でしたが時々かすれ気味にもなっているのが気になる部分もありました。
今作からは芯のある声というか、本来の彼の良さを生かした歌い方になっていてさらにさらにパワフルになったように感じました。
まずシングル「今宵、月が見えずとも」はアニメタイアップの影響もあり比較的知名度の高い楽曲で新藤晴一さんの皮肉の効いた歌詞が印象的でした。
「グーグル」というワードが登場するのが彼らしい。
他にもワルツっぽく独特の流れるような譜割りが印象的な「瞳の奥をのぞかせて」もお気に入りです。
そして、アルバム曲ですが最初に印象に残ったのは1曲目の「∠RECEIVER」でした。
この手の楽曲が一曲目とは意外だったのと、それ以上に驚いたのが津波のことを歌っていることで、しかもそれがあの東日本大震災の1年前にリリースされていたこと。
もちろんこれはスマトラ沖地震のことを歌っているそうなので偶然でしょうが、不思議な印象でした。
映像作品でしか観れませんでしたが、つまごいロマンスポルノで演奏された時はかなり心に響きました。
改めてこの曲を一曲目に持ってきたことには大きく意味があったのだなと。
他にはライブの定番曲である「Century Lovers」を彷彿とさせるダンスロックナンバー「ネガポジ」。
深く考えずに盛り上がれる曲です。当然ライブでも盛り上がります!
晴一さんの独特の作詞が印象的な「IN THE DARK」は暗闇を擬人化しています。
人気声優さんが声を担当しているアニメ調のインストからのロックナンバー「MONSTER」。
この曲は少しB'zっぽい感じで、B'zのファンである自分にはガツンと来ました。
ストレートな歌詞が岡野さんらしいです。
終盤に収録されている「光の矢」はポルノの楽曲の中でもかなりハードなギターが鳴っています。
ドラムもかっこよく、少しスタジオ感が出ていると思います。
ポップなイメージの彼らの本来のルーツが少し垣間見れる楽曲でもあると思います。
そして、最後に「ロスト」です。
岡野昭仁さんが亡くなった母親に対する想いを歌った曲だそうです。一部のファンの間では「デッサン♯4(ポルノの楽曲には彼らの実体験を基にした楽曲として「デッサン~」シリーズが過去に3曲存在しています。)」とも呼ばれています。
難しいことは上手く語れませんが、これは絶対に聴いておきたい名曲なのでタイトルにも書かせてもらいました。
特典のDVDも見ごたえあります。
PVメイキング映像やTVスポットなどのほかに、映像化しないと宣言していた彼らの唯一の東京ドーム公演(東京ロマンスポルノ'09 〜愛と青春の日々〜)での映像が一曲のみ(楽曲は「うたかた」)収録されています。