1979年11月4日(日)
小雨降る大阪球場で
日本シリーズ第7戦
近鉄対広島が行われ
4対3で広島が勝ち
球団初の日本一となりました。
このDVDは
その9回裏の攻防を描いた
分析的なドキュメンタリーです。
マウンドには
江夏豊氏(1948-)がいて
21球投げました。
実際の攻防は26分49秒ですが
当事者のインタビューや
野村克也氏(1935-)による解説を
挿入しているため
DVDは48分です。
映像化に至る経緯は次の通りです。
山際淳司(1948-1995)がまず
『江夏の21球』という短編を
文藝春秋の雑誌『ナンバー』
(Sports Graphic Number)
1980年4月号(創刊号)で発表します。
そして最初の作品集
『スローカーブを、もう一球』
(角川書店 1981)で
単行本化され、後に文庫化されます。
また比較的最近
『江夏の21球』(角川新書 2017)
として新書化されました。
山際淳司版『江夏の21球』をもとに
『ナンバー』編集部の協力も得て
NHKは当事者たちに徹底した取材
(映像を見ながらコメントしてもらう)
を行いました。さらに
当時の技術を駆使して完成します
(球の軌道が画面に白線表示される等)。
その映像は
「NHK特集 スポーツドキュメント
『江夏の21球』」として
実際の試合から3年余り経った
1983年1月24日、放送されました。
(再放送もあった由です)
このDVDは上記NHK版『江夏の21球』です。
当日、私は試合中継を
ラジオでリアルタイムで聴きました。
だから結果は知識として知っていました。
しかし真相ないし深層は知らずにいました。
あれから30年以上経ち
このDVDによって
初めてあの試合を「映像」として見ました。
なるほど
小雨がしとしと降っているし
ナイター用の照明もついています。
もし9回裏の攻防で同点になっていたら
延長戦にはいり、さらに
1時間程度は試合続行が可能でした。
こうした天候や時間という要素も
微妙にゲームや采配に影響したかもしれないと
映像を見て実感することができました。
子供のころ周囲の大人たちが
「西鉄ライオンズ」の伝説と栄光を
よく口にしていました。
熱意を持ってプロ野球を
フォローしているとは言えませんが
記録または記憶に残る名選手・名監督の
考え方には関心があります。例えば
①野球のセオリー(統計と確率に基づく
将棋で言えば定跡のようなもの)
②投手のピッチングの組み立て(配球)
③それに対する打者の読み
④攻防の際の両軍ベンチの采配
⑤心理的な駆け引きとしての側面
⑥選手とベンチの立場の違い
--などに深い興味があります。
逆に
「人間ドラマ」「燃える○○」「プライド」
などはあまり関心がありません。
プロ野球でなくても私の周囲でも
よく見聞きする現象だからです。
高校野球はあまりフォローしていなくて
最後に見た高校野球は1998年
横浜対PLの延長17回の試合です。
このDVDは
たいへんよく取材・分析されているので
繰り返し繰り返し
何十回も見ました。
何度見ても飽きません。
野村克也氏の解説ではありませんが
「これが野球だ」
と思い、いまだに見続けています。
この日
江夏氏は7回裏1死から登板し
8回までは
あまりカーブを投げなかったそうです。
しかし9回たまたま
右打者の膝もとにタテに落ちるカーブを
投げたところ有効でした。
そこでこのカーブを決め球とし
そこから逆算して配球を組み立てます。
すると見せ球に使う直球が重要になります。
直球を見逃すと打者は後悔することになります。
ちなみに
江夏氏にはフォークはなくて
カーブが2種類あった由です。
そのうちひとつが先の
右打者の膝もとにタテに落ちるカーブです。
球の軌道はフォークに似ていて
ワンバウンドになりやすいので
3塁に走者がいるときはリスクのある球です。
しかし打者が手を出してくれやすい
という利点があります。
ボールゾーンに投げていれば
打者が手を出してもファールになるだけです。
詳しくは
このDVDを見ていただけると幸いですが
19球目がクライマックスです。
勝者は
「カーブの握りで意識してはずした」
と表現し
敗者は
「カーブのすっぽ抜け」
と表現します。
この19球目だけでも
重ねてご覧になることをお勧めします。
DVDにおいても
スローモーションを入れたり
逆回しを入れたり
球の軌道を白線で明示したり
力がはいった作り方をしています。
確かに1球前の
18球目のカーブを
打者はいとも簡単に見逃しています。
ボールを見ているだけ
タイミングをはかっているだけです。
「打ち気がない」→「動いてくる」→「スクイズ」
という推測は高度の蓋然性をもって成り立ちます。
実は
近鉄の西本幸雄監督(1920-2011)は
18球目直後、審判のストライクのコールと
同時にスクイズのサインを出しました。
なぜなら
「3球とも全部打て」と指示を与えて
送り出した打者が18球目を
「いかにもあっさりと見逃し
前向きの姿勢がない」
と判断したからです。
というのも西本監督は
「初めから打ち気で行かないと
このピッチャー(江夏氏のこと)は
打てない」と事前に
打者に対して話をしていました。
投手・捕手の側からすれば
全く無警戒でスクイズされるのと
(何球目かは分からないが)
「この打打者はスクイズしてくる」と
自覚したうえでスクイズされるのでは
大きな違いがあると思います。
なぜなら
頭で分かっていれば
心の準備もできるし
ひいては身体も準備に入ることが可能です。
この時
小雨が降っていてボールがすべりやすい
条件であったことも
ひょっとしたら投手有利に作用したかもしれません。
さらに
(無死満塁の後1人の打者が三振し)
一死満塁で
3塁走者は俊足ですから
スタートは早くなる傾向にあったかもしれません。
スタートが早いと
広島ベンチは「走った」と大声で
投手・捕手に伝えることが可能です。
このように
複数の要素が
投手有利に傾いていたとは言え
そもそも
「カーブの握りではずせるのか」
という中心命題があります。
打者の方は最後まで
「はずされたとは思っていない」
とコメントしています。
それに対し
捕手の水沼四郎氏(1947-)は
「ふつうの投手だったら
完全に暴投になるか
地面にたたきつけるか」
のケースと言い
江夏氏の最高度の技術があってこそ
カーブの握りではずすことを可能にした
という考えです。
一方
打者は瞬時に
「はずされた」と思い
「はずすなら直球」と思ったからこそ
バットを外角高めに突き出した
と考えられます
(後のインタビューとは違います)。
ところが
球はカーブだから遅いし
タテに落ちますから
バットの「下を」かいくぐって
捕手のミットに収まりました。
西本監督は
「待っていれば当てられない球ではない」
と述べています。
しかし打者にしてみれば
カーブではずすはずがない
という思い込みが
瞬時の動作を誤らせたのかもしれません。
繰り返し映像を見つつ
関係者の証言を聴きますと
いろいろなことが考察できて有益です。
「カーブの握りで意識してはずした」のか
「カーブのすっぽ抜け」か
みなさんはどう思いますか?
前述の通り48分と
今となっては短く感じるDVDですが
見るたびに新しい発見がある作品です。
(画質等は「当時」最高水準のものと思われます。
現在から見れば……ですが
私はとくだん気になりませんでした)
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥2,000以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
新品:
¥3,355¥3,355 税込
ポイント: 34pt
(1%)
無料お届け日:
3月21日 木曜日
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
新品:
¥3,355¥3,355 税込
ポイント: 34pt
(1%)
無料お届け日:
3月21日 木曜日
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
中古品 - 非常に良い
¥2,794¥2,794 税込
ポイント: 28pt
(1%)
無料お届け日:
3月21日 木曜日
発送元: Amazon 販売者: 株式会社 ラポール
中古品 - 非常に良い
¥2,794¥2,794 税込
ポイント: 28pt
(1%)
無料お届け日:
3月21日 木曜日
発送元: Amazon
販売者: 株式会社 ラポール
NHK特集 江夏の21球 [DVD]
形式: DVD
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥3,355","priceAmount":3355.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"3,355","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"phihqxlFro2nX6aIvHacD5CWRAIlunkRXmAHZPH%2BMvPmXs7%2F79W2Uv49Px9Mr%2FnnfWx%2BES4eoMJrAlmLSBbOqqklzL27YBWYRu3TrqxGbmB%2BDIErU%2FaT0C%2FyR6rDhgUFxUr6QH0BDTY%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥2,794","priceAmount":2794.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,794","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"phihqxlFro2nX6aIvHacD5CWRAIlunkRKzlNMYAo%2B8z4cX%2BNxoavw4QOdT%2BiSQ03wMoQ2YFH4S4gFoytOgq7lN1yHuDeYhfO1GsKTMPHcAWEFDMoeAic%2Bwx0XTP6biCROLl55I3M%2FnHFji1VaSaHibq9PqtEDTzcumuHTkvECKzI4xV7qb%2Fhdw%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
「いまだからこそ見たい、見てほしい」・・・・・そんなドキュメンタリー
時代を超えて人々の心に残る作品を送り出してきた「NHK特集」「NHKスペシャル」。この夏以降、“戦争”“戦後のニッポン”“日本のこころ” “伝説のスポーツドキュメンタリー”という4つのテーマで、「雨の神宮外苑 学徒出陣・56年目の証言」「江夏の21球」ほか10数作品を4ヶ月連続でリリース!!
第4弾では“伝説のスポーツドキュメンタリー 「目に見えないドラマ」を探る”をテーマにした3作品をリリース!!
【内容】
昭和54年の日本シリーズ、「広島」対「近鉄」の優勝をかけた第7戦の9回裏、近鉄無死満塁の逆転のチャンスを抑えた広島・江夏投手の21球を克明に分析し、観客には見えないプロ野球のドラマを再現する。
○1983年1月24日 NHK総合で放送
登録情報
- アスペクト比 : 1.33:1
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 75 g
- EAN : 4988066172342
- メディア形式 : 色
- 時間 : 49 分
- 発売日 : 2010/10/22
- 販売元 : NHKエンタープライズ
- ASIN : B003XM7XOS
- 原産国 : 日本
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 10,217位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 104位ドキュメンタリー (DVD)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年11月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年9月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ずっとこの世紀の歴史に残る一戦を
涙ぐみながら語る主人にプレゼントしました🎁
大喜びしてくれました❣️
涙ぐみながら語る主人にプレゼントしました🎁
大喜びしてくれました❣️
2021年12月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中学1年生の時、近鉄を応援しながらこの試合を観ていました。最近、たまたま山際淳司氏による同名の著作を読んだのですが、9回裏の熱闘の模様を解説付きで編集したDVDが入手できることを知って居ても立っても居られず購入しました。昭和54年のテレビ中継をもとに制作されているので、古く色褪せた映像が出てくると思っていたのですが予想に反して素晴らしい画質でした。予め本を読んでおいてからDVDを観たので、投手、打者、走者、野手、監督がそれぞれに抱いていた心理状態をしっかりと理解することができました。また、本には書かれているがDVDでは触れられていない事実や、DVDだけに出ている事柄もあるので、両方の媒体を入手してよかったと思っています。
9回裏に江夏が投げた21球を詳細に見てみると、素人目にはヒットになりそうな球はその中にわずか3球しかなかったように思います。すなわち、先頭打者の羽田に投げた初球 (第1球) のストレート (これは実際にセンター前のクリーンヒットになりました)、無死満塁で代打佐々木に投げた2球目のストレート (第13球)、一死満塁で石渡に投げた初球のカーブ (第18球)。超一流の投手は1回の打席の中で打てそうな球を2球は放らないのです。従って、打てる可能性がある球を見送ったり打ち損じたりした時点で投手に軍配が上がります。私は、江夏自身が「神業」と評している運命の第19球目はこのような背景があって生まれた奇跡だと考えています。カーブの握りで投球動作に入ってから、10ミリ秒ともいわれる限りなく短い時間の中でスクイズを外す – スロービデオを見るとボールが手を離れる直前の瞬時の間に左の手首と示指と中指が懸命にボールを外角の高い位置にずらそうとしている様子が分かります。まさしく渾身の一球です。
9回裏に江夏が投げた21球を詳細に見てみると、素人目にはヒットになりそうな球はその中にわずか3球しかなかったように思います。すなわち、先頭打者の羽田に投げた初球 (第1球) のストレート (これは実際にセンター前のクリーンヒットになりました)、無死満塁で代打佐々木に投げた2球目のストレート (第13球)、一死満塁で石渡に投げた初球のカーブ (第18球)。超一流の投手は1回の打席の中で打てそうな球を2球は放らないのです。従って、打てる可能性がある球を見送ったり打ち損じたりした時点で投手に軍配が上がります。私は、江夏自身が「神業」と評している運命の第19球目はこのような背景があって生まれた奇跡だと考えています。カーブの握りで投球動作に入ってから、10ミリ秒ともいわれる限りなく短い時間の中でスクイズを外す – スロービデオを見るとボールが手を離れる直前の瞬時の間に左の手首と示指と中指が懸命にボールを外角の高い位置にずらそうとしている様子が分かります。まさしく渾身の一球です。
2021年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
懐かしい名勝負の1つ。大ピンチでの切り抜け方の参考になります。
2014年12月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
緊迫の名場面 江夏の21球 リアルで見た世代ですが、何度見ても緊張する。江夏は当時おじさんのイメージだが、バリバリの30代前半でのど迫力。こんな30そこそこの人いませんよ。相手バッターの石渡や佐々木もなかなかです。野球選手が怖かった時代。応援団や球場全体の雰囲気が人間臭く、熱かった頃の球史に残る名勝負。名作名高い小説も読むことをお薦めします。
2021年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
江夏氏はNPB最高の投手の一人です。