YMO信者でもあり普段はモダンジャズを聴く者としては、このような企画は本当に「待ってました!」という想いでした。
しかし、教授の主導でテクノの中にシンコペーション等ジャズの方程式を隠し味として活用していたYMOをJAZZカバーすることは、一歩間違えれば安易な企画に成り下がるリスキーな賭けとも云えます。
でも、一聴してまずは一安心。
独りよがりで無用な換骨奪胎なアレンジは避けて、オリジナルのメロディの美しさを上手く活かした職人的なアレンジがとても良心的です。
かと言って、よくビートルズのJAZZカバー等にありがちな無難なイージー・リスニングとも一線を画しています。
全体的にはラテンJAZZの系譜も感じますが、冒険的で思い切った展開に「はっ」とさせられる瞬間もしばしば。。。
「06:Seoul Music」のラテン・スタンダードの「Afro Blue」を想わせる熱気。
「07:UT」のビ・バップ期のバド・パウエルを彷彿させるスリリングさ。
オリジナルが元々Jazzyで美しかった「05:Shadows on the Ground」「08:Silence of Time」は当然こうなってほしいな!と云う期待通りの嬉しい「想定内」アレンジ。
でもやはり一番斬新に感じたのは「02:Rydeen」。
あの疾走感にJAZZのグルーブが加味され、とてもクールな仕上りになっています。
(一方、オリジナルがJAZZに一番程遠かった「03:Cue」はやはり賛否両論あると思います。ボクは好きですけど。)
ある意味、YMO+JAZZの融合は「教授的」アプローチに非常に近いとも云えますね。
そういう観点からでも楽しめるものになっています。
(一番分かりやすい例えは、超絶即興テクで教授のソロ曲をJAZZピアノカバーする「峠のわが家」辺りのアッコちゃんか?笑)
パーソネルは。。。
Producer:MITSUKUNI
Piano:SHINICHI KUSAMA
W.bass:HIDEYUKI KOMATSU / ICHIRO FUJIYA
Drums:TARO YOSHIDA / MASANORI AMAKUSA
Vocal & Chorus:Jenta
。。。という布陣です。
ボクが知ってて、たまたま以前LIVEを拝見した草間信一さん以外の方はあいにく存じ上げないけれど、とても安定感のあるクインテットです。
JAZZ食わず嫌いのYMOファンの方にこそオススメしたいアルバムです。
JAZZの開放感が、ともすれば内省的なYMOの楽曲に新たな息吹を与えています。
JAZZは決して難しくなく、気楽で楽しいもの。。。とご理解いただけるはずです。