みんなのためのロックを、彼らは演奏しない。
聞き流されるよりは、むしろ憎まれた方がいいと思っているのかもしれない。
食事の時に、背景に流れていたら落ち着かない音楽である。
対峙して聞かざるを得ない歌である。
「アノニマス」と「文学少年の憂鬱」は、やはり一曲としての完成度が高い。
この世には幸せな人ばかりじゃないことを知っている。
そんなことをいつも言い立てる自分のことを、決して心から好きなわけじゃない。
そんなロック・ミュージックだ。
乱暴な言葉も多い。だが、コヤマは少なくとも未来への保険として安全な言葉で隙間を埋めたりはしない。
こんな乱暴な言葉や挑発的な歌を歌うのは、かなり怖いはずだ。
自分の存在を賭けた表現というのは、怖い。
怖いが本物だ。
12「それはある夜の出来事」は、飛び降り自殺しようとする若者の歌だ。彼をまぶしく照らす朝日の中で感じる 気の抜けたような白茶けたものが現実だ。
そうして死にきれないで明日が続くことを、コヤマはきちんと歌っている。