当時の平沢進は還暦目前。普通の人なら落ち着いて枯れや渋みを味にする年齢だろうに、
普段のソロ活動よりもずっと胡散臭くてギラギラした何かで漲っている。
あのSF的なストーリーがあることでいつも以上に開き直って中二病全開でやれるんだろうか?
攻撃的な電子音の洪水が押し寄せる不気味なサウンド、ディストピアを思わせる不穏でSFな世界観。
唯一無二とはまさにこのこと。こんなのは他の人には作れないし、そもそも作ろうとも思わないんじゃないかと。
全体的に見ると不気味な曲が多いなか、「それ行け!Halycon」だけはユーモアたっぷりで少し毛色が異なる。
思わず体が揺れるアップテンポなノリが楽しく、かつての盟友の手によるイカれたキーボードソロがすごく刺激的。
不穏な空気が続いた果てに辿り着いた「Timelineの東」では、心地よい電子音やリスナーを鼓舞するかのような歌唱、
さらにはイケイケなギターソロなどによって前向きな希望の余韻を残してアルバムは終わります。
別名義による活動って大抵は気分転換だとかマンネリ打破でやるもんだと思いますが、そういった意味ではこれは大成功。
聞き手に強烈なインパクトを与える一枚になっています。