ソ連時代に国立映画大学で教鞭をとり、グリゴリー・チュフライ、アンドレイ・タルコフスキー、アンドレイ・コンチャロフスキー、ニキータ・ミハルコフ、セルゲイ・ソロヴィヨフといった錚々たる監督達を育てるかたわら、『一年の九日』や『ありふれたファシズム』等の優れた作品によって自らも国際的に評価されていたミハイル・ロンム(1901~1971)。
本作品はその彼が、スターリン時代の1941年に監督し、自作の中で最も愛していた作品の一つ。ロンムと脚本家のガブリローヴィチは第二次大戦の勃発直後の1939年秋にベラルーシ西部(現在はポーランド東部)の都市ベラストークに2ヵ月滞在し、この映画の想を得た。彼らは自分達の見聞を基に舞台をウクライナ西部の都市リヴォフ(リヴィウ)に移して脚本を執筆(両地域は文化的にも歴史的にもポーランドとの関係が深く、メンタリティーが似ている)、翌40年春には撮影が始まった。第一号プリントの完成が独ソ戦開始の7月22日だったという因縁月の作品(公開は43年)。早撮りで知られたロンムは後に、自分の作品歴の中では、長編ドキュメンタリー『ありふれたファシズム』(65)と並んで本作品だけは、比較的ゆっくり創作できたと語っている。
ささやかな希望を抱きながら懸命に生きる“小さな人間"達の群像劇として秀逸であり、今でも時代を超えて観る者の共感を誘う。本作を見た時の米国大統領フランクリン・ルーズベルトは、“夢"荘の女主人を演じたファイナ・ラネフスカヤの演技に感銘を受け、この映画を“地球上で最も見事な映画の一つ"と称賛したと言われる。
●本編:99分、モノクロ、スタンダード、ロシア語
●仕様:片面一層。モノラル音声、日本語字幕
●解説メニュー(3~5頁、ロンムの略歴5頁、作品解説8頁)
●映像特典(A.ドヴジェンコ監督『解放』(40)、ロンムの監督デビュー作『脂肪の塊』(34)、『十月のレーニン』(37)作品からの抜粋、解説3頁、字幕付、合計27分)
*初回完全数量限定生産です。