声優、ピアニストといった多彩な肩書きを並べるより前に、やはり牧野由依という女性はその類稀なヴォーカルセンスが最大の魅力なんだと思う。軽快なポップスは言うまでもなく、静謐なバックトラックであっても等身大の願いから日常とはかけ離れた幻想的な世界観まで幅広くその声で繋ぎとめてしまう。複雑なメロディや速いパッセージも、彼女の声ならば不思議と胸に落ちる。多彩な作家陣を迎えていながらアルバムとしての統一感をこれまで以上に感じ取れるのは、明確なサウンドプロデューサーが一人配されたお陰だろうか。矢野博康氏の活躍は他所でも目を見張るものがあるが、牧野由依との相性は抜群に良いと思われる。
どのトラックを再生しても聴き心地の好い今作だが、ワールドワイドな決意表明とも取れるtr.1にアルバムの色は如実に表れている。
「音楽の旅はまだ 続いていくから」
こんなにも頼もしいフレーズが他にあるだろうか。アルバム名が、英語ではちゃっかり"Tabi*note"と表記されているのが心憎い。