コルトレーンの「至上の愛」と言えば、とかく難しい蘊蓄とセットで語られるのが定番となっているアルバムである。

これほど、内容よりも、アーティストの歴史における位置付けやら何やらが前面に出ているアルバムなど、これと「カインド・オブ・ブルー」くらいではなかろうか。

私はこのアルバムが好きである。

コルトレーンの、どのアルバムよりも好きである。

だが、それは、このアルバムの宗教性だとか、コルトレーンの1つの到達点としての歴史的な価値だとか、そういった事によるものではない。

私は宗教を信じていないし、コルトレーンの宗教観にも興味はないのだ。

では、なぜ好きなのか。

音楽として素晴らしいからである。

音楽を好きになるのに、他に理由が必要か?

荘厳なオープニングから徐々に加熱していくコルトレーンのブロウ。

確かに個々のフレーズは大した物ではないかも知れないが、それらが折り合わさって1つの方向に向かっていく、その流れを感じられないだろうか?
(お経と言われる「a love supreme」という言葉の繰り返しも、見事に、この「流れ」の一部となっている。)

それらが「良い音楽が聴きたい」という私の欲求を満足させてくれるのだ。
(この感覚は、プログレッシブ・ロックを聴く時の物に似ている)

単純な話である。

私には、その満足感が一部のジャズファンにしか感じられない、高尚で難解さを伴う物とは思えない。

にも関わらず、このアルバムを理解できない人も多い。

何故なのか。

ビ・バップが理解できた時にも感じた事だが、ジャズが理解できる時というのは、自分と音との最適な「距離の置き方」を見つけられた時ではないかと思う。

そういう意味では、多くの他のジャズ・アルバムと比べて、このアルバムは少し自分と音の距離をとって聴くべきアルバムである。

前述したように、個々のフレーズよりも全体としての雰囲気によって何かを表現しようとしているのがこのアルバムであるし、なんせ組曲なので、細かい所に集中しすぎると、全体を理解するための集中力が持たない。それなのに、一般的なジャズを聴き慣れたジャズファン達は、他のアルバムと同じようにこのアルバムを聴き、そのため理解する事が出来ず、仕方なしにややこしい蘊蓄を持ち出して崇めるか、逆に「お経」などと酷評したりする。

そして、それを見たジャズ入門者達は、聴く前から尻込みしてしまい、その結果、上記のジャズファン達のように一般的なジャズに聴き慣れてからこのアルバムを手に取り、やはり理解できないという事になってしまう。

要するに、凝り固まった聴き方しかできなくなったジャズファン達が、話をややこしくしているのである。

ビ・バップにしてもそうだが、そういったジャズファン達が理解できないからと言って、歴史的価値などを持ち出して神棚に祭り上げてしまうのはどうなのか。
(逆に、「カインド・オブ・ブルー」だけは例外的に入門者にも勧められるのは何故なのだろうか。全くの謎である。)

確かにジャズ入門者が聴くべきアルバムではない。

しかし、あまりにも出会うのが遅すぎると、逆に理解が困難になるように思われるのである。

ジャズ入門者であっても、ある程度、「入門者向け名盤」を聴いたあとには、積極的にビ・バップや、こういったアルバムに触れるべきである。

そうすれば、多少の困難はあろうが、比較的スムーズにそれらを理解していける。

難しい事など何もないのだ。

そういうわけで、完全な「ジャズ初心者」や、「ジャズファン」を除いて、ぜひ勧めたいアルバムである。

ちなみに、星5つにしなかったのは、「神棚感」を漂わせないためである。

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Amazon カスタマー

こんなに音良かったっけ

2021年4月30日に日本でレビュー済み

友人がカマシ・ワシントン聞いた後に聴きたくなった。と言ってました。ＣＤ買いなおして聞きました。音が良い。個人的に近年はドラムの進化が著しいと思っていたのですが、エルビンすごいわ。ピアノもまるでホーンのようなアドリブでフレーズコピーしたくなる。コルトレーンは、久しぶりに聞いても強烈でした。しかし、今聴くとちょっとしつこいかなあ。

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リリックブルー

求道者コルトレーンの魂の傑作

2010年10月21日に日本でレビュー済み

モンクとの出会いによってスタイルを確立して、
様々な名盤を生み出したコルトレーン。
フリーに行く前に、アフリカに原点回帰し、
自分のルーツを見つめて、熱い想いを有らん限りの
力で、想いの丈をキャンバスにぶつけた抽象絵画の様な
一作です。準備が出来ていない方にはお経でしょう。
でも素直に聴けば心に届くはずです。魂から音楽を
紡ぎ沸き上がらせているコルトレーンの想いが。
娯楽作品ではないけれど決して難しいだけでは無い
、コルトレーンの原風景が、熱い想いが伝わるはずです。
Jazzの一つの到達点。

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Archer King Murakami Manic

Coltraneの代表作のひとつ

2018年11月26日に日本でレビュー済み

肝臓癌のために、たった40歳で亡くなったColtraneだけれども、わずかな活動期間のうちに50枚と思しきレコーディングを残し、20世紀の代表的なジャズ音楽家とされている。

1926年にColtraneは、ノース・カロライナ州に生まれている。ところが彼が12歳になった1938年12月に、おば、祖父母、父親が次々に亡くなってしまい、母親であるAliceに育てられた。1943年に、フィラデルフィアに移り、その直後にAliceからアルト・サックスを買い与えられた。そして19歳になろうと言う1945年8月6日に、海軍に入隊した。この2か月ほど前にColtraneはCharlie Parkerの演奏に接し、大きな影響を受けたようだ。海軍では早くから、音楽の才能を発揮しており、Coltraneの最初の録音は海軍時代にされたほどだった。だが当時の海軍では、主役はすべて白人が演奏していたようだ。1946年8月に海軍を除隊して、フィラデルフィアに戻ったColtraneは、ジャズの洗礼に合う。1955年夏に、Miles Davisから電話を受け、Red Garland、Paul Chambersらとクインテット結成に参加することになった。ところがこのクインテットは幾つかのレコーディングの後、ほどなくColtraneのヘロイン中毒などが原因で解散してしまう。Coltraneは1957年の半ば頃から、Thelonious Monkとそのクアルテットと活動を始めている。そして彼らのカーネギー・ホールでの演奏が、称賛を得た。この頃には、名作「Blue Train」も録音されている。この後、1958年から再びMilesと活動を始め、セクステットに加わっている。そして1959年にはColtrane Changesと言う変貌を遂げ、コード進行に新機軸を生み出したとされている。この後も、Coltraneはアヴァンギャルド・ジャズに取り組むなど、変貌を遂げていく。

分厚いColtraneのテナー・サックスの音を聴いていると、深い闇の中に落とし込められたような気分になってしまう。

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Martha Argerich

屹立するスピリット

2010年6月9日に日本でレビュー済み

この後、修復不可能な路線に突入するトレーンにとって、やはりこの一枚は完成形なのでしょう。アヴァンギャルドな。
でも別に奇を衒ったわけじゃなくて、彼なりの至上の愛を素直に表現しただけ。それを聴いてどんな至上の愛を見つけるかは
また人それぞれ。僕はやっぱり自由だなあ。籠の鳥が外に羽ばたくイメージ。人によってはもっと神秘的なところに重点を
置くのかも。あるいはたんに快楽的な体験なのかもしれない。
精神的に深化したバックの好演も言うまでもなく素晴らしい一枚だが、やはり主役のテナーは熱演。そしてがむしゃらに何かを求む。
特に、賛美のパートが素敵。りんりんと垂直に天まで伸びるトーンの強さの根本に、根の先の繊毛（魂）がふるえているわけよ。
繊毛のように「ふるえる魂」が屹立するスピリット。この稀有なスタイルに僕は惹かれる。
まだ未聴の方は是非とも。あなたにとっての至上の愛を確信してみて下さい。

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