新曲3曲、「アンデルメルヘン歌曲集」から4曲と「天氣輪組曲」から3曲を元P-MODELのことぶき光さんがリミックス。ベストアルバムとかではなく、リミックスアルバムなので注意。帯には「ネオクラシックユニット・黒色すみれ、電子のフロアで踊る」とあるが、まさにそんな感じ。全体的に、ノリが良くダンサブルに加工されたという印象。ほぼどの曲にも打ち込みでリズム音が加えられたことが大きい。ただ、生楽器によるアナログでレトロな音という黒色すみれ本来の特徴が薄まった気もする。正直言って、原曲でも本作のバージョンでもどっちでも良いという印象の曲が多く、原曲の良さが台無しじゃないかと思う曲まである。
新曲「素晴らしき混沌」は珍しく英語詞。デジタルなアレンジが上手く作用、単に無機的というよりは、操り人形の少女がカクカク踊るようなイメージ。新曲「花千代女」は黒色すみれらしい童謡風のメロディ、悲しくさえずるバイオリンが良い。「ゆけ!少年十字軍」は原曲ではさほど目立たなかったリコーダーが前に出てる。「純潔は赤」は赤ずきんの童話を残酷に描く曲だが、原曲の前半部のパーツのみで1曲を再構成。物語は狼が赤ずきんを待つ場面までしか進まない。歌詞とともに楽曲が演劇的に展開していくのがこの曲の魅力だったのにこれでは台無しだ。「永久に麗しく、すみれの花よ」は加えられた打ち込みのリズムが目立つ。新曲「ジョゼット」は脳内をかき回すようなカオス。飛び交う電子音、足場のない空間。自由奔放で混沌としつつも格調高い美しさのバイオリンが素晴らしい。
黒色すみれの活動が好調そうなのは嬉しいが、もともとはカチニカが好きでその関連ユニットみたいなのが始まったなあ…という印象で黒色すみれを聞き始めた者としては複雑な心境でもある。カチニカの新作をずっと待ち続けているのに…。