既にコメントされている方も述べられておりますが、ペリー・ローダンシリーズこと宇宙英雄ローダン・シリーズは1961年に原作がドイツにて刊行されそれから半世紀以上の年月が経過した現在もシリーズは継続しており、本国ドイツでは本編だけでも2013年8月現在で2700話、サイドストーリーを含めれば4000話以上のシリーズが刊行されています。ドイツ版の2話を1巻の構成にて1971年から刊行されている日本語版も2013年6月で450巻(本国ドイツ語版では900話)に到達しシリーズは継続中で、翻訳チームの充実もあって2010年からは月2冊刊行となり1年間で約50話のストーリーが進行するようになりましたが(現在のペースで行けば2015年の初夏に第500巻刊行の予定)、それでも本国ドイツとのブランクは35年近くありまだまだその差は埋まる事はない、逆に言えば楽しみがまだまだ沢山存在しているという状況であったりします。
さてその世界最長のスペースオペラ作品の原点ともいえる本書ですが、舞台となる時代は1971年6月にアメリカ合衆国による人類初の有人月宇宙船「スターダスト」の船長ペリー・ローダンをはじめとする一行が月面に到達後、当地にて不時着していた巨大宇宙船と遭遇します。その宇宙船は地球よりも遥かに進んでいた科学技術力を持つ宇宙種族アルコン人によるもので、アルコン人は銀河系に一大星間帝国を築いていたもののローダン達がファーストコンタクトをしたこの時点では種族としての最盛期はとうに過ぎて久しく退廃的になっていましたが(ちなみにこの不時着も種族的な退廃が一因)、科学技術の力は当時点における地球よりも進んだものである事には変わりなく東西ブロックとアジア連合の三つの勢力に分かれていた地球のどれか一つにその技術が渡ってしまえば地球は最終戦争の悪夢が現実のものとなり、それを防ぐためにローダン一行は地球に帰還後アルコン人の技術を背景にいずれの勢力にも属さない独自の「第三勢力」を築き、地球を統一して宇宙航行種族として宇宙に進出するビジョンを持つという展開になっています。
ローダン一行による初の月面着陸は1971年6月となっていますが、原作にて第1話が刊行されたのが1961年ですので、原作刊行当時からすれば10年後の“近未来”を舞台にしていたという事になり、また同時点での地球の勢力図は当時の東西冷戦の構図というものが反映されているようにも見受けられます。1961年という年はかの「ベルリンの壁」が建設された年でもあり、東西冷戦の最前線に位置していたドイツの緊張感はエンターテイメントの世界にも現れていたと考えられます。但し東西ブロックはともかくアジア連合は現在まで実現には至っていませんが。
他にもローダンからは「地球だったら精神病院行きの連中」と厳しく批判されていた退廃したアルコン人は抽象的な幾何学模様が色々と変化するシミュレーターマシンの前に寝そべって日柄一日それに興じていると述べられていますが、現代的に表現するならばバーチャルゲームに興じているという事になるのでしょうか。シリーズを通してみるとアルコン帝国は末期のローマ帝国を彷彿とさせられるものがあったりもします。
シリーズを全体的に考えてみれば、序盤ではローダン達は地球内の列強はもとより地球の存在を知ったアルコン人をはじめとする宇宙航行種族との戦いや政治的な駆け引きの後に地球を統一して地球人を宇宙航行種族の一員となるまでに発展させて、様々な敵との戦いや困難を乗り越えて宇宙の奥深くへと進出していく、という展開にはスペースオペラはもとより様々なSFの要素が盛り込まれておりまさにエンターテイメントとも言えるものがあると考えられます。魅力的なキャラクターは言うまでもなく、宇宙艦隊、銀河帝国、超能力、パラレルワールド、タイムスリップ、地球外知的生命体、超越知性体、機械生命、超古代文明・・・・・、と何でもありな事を思うと。
この1巻から25巻までは「第三勢力」サイクル−ローダン・シリーズの特徴でもある日本語版の25巻〜50巻のストーリーはサイクルと呼ばれており、途中からシリーズを読み始める事も出来る構成になっています−、ではローダン達が銀河社会ではまだヒヨッコに過ぎない地球人を立派な宇宙航行種族へと成長させるために少数戦力を駆使して知恵と勇気、時にはハッタリを使いながら強大な敵と巧みに張り合っていきそのストーリーは痛快の一言に尽くものがあります。原作が1960年代の初頭に書かれたものだけあって、太陽系内の惑星の描き方は観測の進んだ現代から見ると変わったものだったり身近な機械等は現実のモノの方が高性能に思えるような描写もありますが、当時はそう考えられていたんだと割り切った方が良いと思われます(笑)。

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大宇宙を継ぐ者 (ハヤカワ文庫 SF 32 宇宙英雄ローダン・シリーズ 1) 文庫 – 1971/7/1
- 本の長さ285ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1971/7/1
- ISBN-104150100322
- ISBN-13978-4150100322
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1971/7/1)
- 発売日 : 1971/7/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 285ページ
- ISBN-10 : 4150100322
- ISBN-13 : 978-4150100322
- Amazon 売れ筋ランキング: - 595,476位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2020年9月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「ユーズド・良い」と
「カバーにややスレ、ヤケ、ヨゴレ、イタミがあります。」は矛盾していると感じました。私は良い状態とは思えませんでした。
「カバーにややスレ、ヤケ、ヨゴレ、イタミがあります。」は矛盾していると感じました。私は良い状態とは思えませんでした。
2016年8月13日に日本でレビュー済み
今週、ドイツ本国でペリー・ローダンが完結しても、いまを生きる僕たちは、その最終話を読めないだろう…。
2008年5月3日に日本でレビュー済み
少年の頃に読み、完全にその世界にはまった
ドイツの連作スペースオペラの記念すべき第一作。
緻密でリアリティのある文体のシェールと、
SFの楽しさを感じさせてくれるダールトンのコンビによるシリーズスタートは、
今読み返してもワクワクする。
映画のスターウォーズが初めて公開された時に、
本シリーズで接していたスケールの大きさと世界観に全く及ばないと感じ、
絶賛する周囲の熱狂ぶりに全く共調できなかった原因となった作品。
生涯かけて翻訳の先駆を遂げられた
故 松谷健二氏の仕事にも敬意を感じます。
ストーリーをスピーティに追える独特のノリのある翻訳は、
とても魅力的でした。
ドイツの連作スペースオペラの記念すべき第一作。
緻密でリアリティのある文体のシェールと、
SFの楽しさを感じさせてくれるダールトンのコンビによるシリーズスタートは、
今読み返してもワクワクする。
映画のスターウォーズが初めて公開された時に、
本シリーズで接していたスケールの大きさと世界観に全く及ばないと感じ、
絶賛する周囲の熱狂ぶりに全く共調できなかった原因となった作品。
生涯かけて翻訳の先駆を遂げられた
故 松谷健二氏の仕事にも敬意を感じます。
ストーリーをスピーティに追える独特のノリのある翻訳は、
とても魅力的でした。
2007年12月4日に日本でレビュー済み
1961年ドイツの週刊誌に連載されてスタートした世界最長最大のSFスペース・オペラの記念すべき第一巻です。日本版が翻訳刊行されたのは本国に遅れる事10年後の1971年で、現在2007年12月最新巻まで342巻が足掛け37年を掛けて出版されています。日本版は1巻で本国の2話分を収録していまして、日本では本国での684巻が出た事になり、原書刊行時期はまだ1974年ですから、誠に気の遠くなるようなペースです。現在2000巻以上(日本版で1000巻)出ていますから、日本の出版ペースの月1冊年に12冊のペースで進むと、そこに到達するだけでも55年は必要な計算になります。10代20代の方でしたら、まだまだ希望がありますが・・・・、とは言え高齢化社会ですから30代以上の方でも期待出来るでしょう。シリーズの創作手法としては、ドイツのSF作家の精鋭が結集して大筋を決定し、それぞれの個性で肉付けして行くという方法が取られ、それが見事に巧を奏して未曾有の大連作となりました。
『スターダスト計画』K.H.シェール著:アメリカの有人宇宙船スターダスト号の指揮官ぺリー・ローダン少佐と同電子エンジニアのレジナルド・ブル大尉が月面上で謎の宇宙人アルコン人調査隊の男女クレストとトーラと遭遇する歴史的事件が描かれます。『《第三勢力》』クラーク・ダールトン著:ローダンとブリー、2人のアルコン人が中国の砂漠地帯に基地を構え、地球の対立する勢力を相手にし平和的統一を目指して、圧倒的テクノロジーを駆使し戦う前哨戦が描かれています。この巻では前述の四人に加え、後の重要人物で国際情報局長官アラン・D・マーカントが登場します。342巻は大変な数字ですが、私の経験上の目安で言いますと1日1冊ペースを目標に読んで行けば、一年ちょっとで追いつけます。どんどん面白くなって時間を忘れて没頭し、決して飽きません。今からでも遅くありませんので、ぜひ全冊読破に挑戦して下さいね。
『スターダスト計画』K.H.シェール著:アメリカの有人宇宙船スターダスト号の指揮官ぺリー・ローダン少佐と同電子エンジニアのレジナルド・ブル大尉が月面上で謎の宇宙人アルコン人調査隊の男女クレストとトーラと遭遇する歴史的事件が描かれます。『《第三勢力》』クラーク・ダールトン著:ローダンとブリー、2人のアルコン人が中国の砂漠地帯に基地を構え、地球の対立する勢力を相手にし平和的統一を目指して、圧倒的テクノロジーを駆使し戦う前哨戦が描かれています。この巻では前述の四人に加え、後の重要人物で国際情報局長官アラン・D・マーカントが登場します。342巻は大変な数字ですが、私の経験上の目安で言いますと1日1冊ペースを目標に読んで行けば、一年ちょっとで追いつけます。どんどん面白くなって時間を忘れて没頭し、決して飽きません。今からでも遅くありませんので、ぜひ全冊読破に挑戦して下さいね。