1994年に出た本ですが、まず私が心を奪われたのはその書きようです。社会学者、歴史学者、政治学者、そのどの分野もマスターした人が趣味のサッカーをネタにして余暇で書いたような余裕が感じられる書き方です。
頭に入る量が段違いだなと、今の欧州の人に合ってもその基礎レベルが軒並み高い民族性を感じるのですが、日本人なら英語というのは別にして、このレベルの事実を書こうとしたら物凄く必死にならなければ出来ないのではないか、それが事実な気がします。欧州は凡そ欧州のここ50年の歴史ならどこの歴史も我が国のように知っている、そういう人々で成ると思えます、せめてこの90年代までの時代の人は。
穿って言えばゲームなどが無かった時代、個人が個人で遊んで終わる育ち方の日々ではなかった時代。冷戦時代が如実にあって、すぐそこに脅威があるから感じずにはいられない他国との関係や、そこから生まれる快感や幸福を知って育ち、育てられした時代。社会も歴史も政治もスポーツも知っているにはそんな環境がそうさせたと言えそうです。そしてこれは今の時代には遺伝しない。冷戦がない育ちというのは、最初からカラーテレビと自衛隊があった世の中に生まれた人みたいな事だから。危機感が別次元で。米軍基地のない沖縄以外では特に。
しかし今でも英国の新聞を見れば日本との差は埋まらないほど広いと感じられます。それは向こうは国内のニュースなど2割もないからです。8割以上が世界じゅうの話で埋まるのが新聞。だから新聞記者も準じて世界を知って、行って、話以上に体験的に個々人が各々で各国、歴史に認識を持っている。片や日本の新聞は9割以上が日本のニュース(そんなに大事なニュースでもないだろう)で占められている。それでいいのだから世界へ目を向ける時間も環境にもない。読者もそれに準じている。
そんな欧州との違いが本書から一番に受けた感銘であり、落胆であり、尊敬であり、、、です。今や三笘選手が英国で通用しているかの様に日本では報道され、それを信じる日本人ですが、日本人にとって三笘選手が珍しいだけであって、あのレベルでいいのならペルー人もコロンビア人も、セルビア人にもアルジェリア人にも三笘選手に匹敵する実力を示した選手は沢山いるでしょう。ドワイト・ヨークほど活躍している訳でもない三笘選手です。ソンフンミンの足元にも及んでいないでしょう。フラットに見る為には本書の様な本から欧州スタンダードは何かを知るのが一番早い様に思います。深さにため息を着きつつ読めるこの本です。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
サッカーの敵 単行本 – 2001/3/1
フーリガンより物騒な奴らがいる! 試合を操る大統領、秘密警察のチーム、クラブに巣食うマフィア、宗教対立するファン、内戦を戦うサポーター等、サッカー・アンダーワールドを暴く。
- 本の長さ332ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2001/3/1
- ISBN-104560049602
- ISBN-13978-4560049600
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
東欧・欧州・アフリカ・南北米、22カ国を徹底取材。試合を操る大統領や秘密警察のチーム、クラブに巣食うマフィア、内戦を戦うサポーター等、「サッカー・アンダーワールド」を暴くノンフィクション。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2001/3/1)
- 発売日 : 2001/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 332ページ
- ISBN-10 : 4560049602
- ISBN-13 : 978-4560049600
- Amazon 売れ筋ランキング: - 738,377位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,247位ノンフィクションのスポーツ
- - 19,518位スポーツ (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1963年大阪府生まれ。東京大学工学部卒。雑誌編集者を経て英米文学翻訳家、映画評論家。特殊翻訳家として人のあまり手がけない本の翻訳に注力する。主訳書にアラン・ムーア、エディ・キャンベル『フロム・ヘル』(みすず書房)、ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』(国書刊行会)、J・G・バラード『クラッシュ』(東京創元社)など。
映画評論家としては〈映画秘宝〉などで執筆。『興行師たちの映画史』(青土社)など。欧米の殺人事件に精通し、洋泉社ムック〈Murder Watcher〉シリーズの責任編集をつとめる。その他サブカル全般。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年10月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
サイモンクーパーの実力について説明は不要だと思うが、本格的な記者の道に入る前の段階ですでにこれほどのクオリティーを発揮しているのだから、改めて凄い人物であるのが分かる。
英国人らしい皮肉も含まれるが、クラブと社会の裏事情をよくぞここまで細部にわたって描写したものである。まさに驚きを禁じ得ない。
日本語の訳が一部で奇妙な用語となっている点は、訳者も編集者もサッカーにそれほど通じていないから?
しかし良書であるのは間違いない。
好き嫌いを物差しにしながら、やたらに批判ばかり書いてる日本人ライターにもぜひ読んでもらいたい。
英国人らしい皮肉も含まれるが、クラブと社会の裏事情をよくぞここまで細部にわたって描写したものである。まさに驚きを禁じ得ない。
日本語の訳が一部で奇妙な用語となっている点は、訳者も編集者もサッカーにそれほど通じていないから?
しかし良書であるのは間違いない。
好き嫌いを物差しにしながら、やたらに批判ばかり書いてる日本人ライターにもぜひ読んでもらいたい。
2005年1月25日に日本でレビュー済み
サッカー・マニア必携の一冊。
サッカーとその裏側にひそむ政治的背景をあぶりだしており、
サイモン・クーパー著の中でも最も面白い作品だと思う。
普通に学校の図書館にもおいてあるので、興味をもった人は是非
読んで欲しい。
サッカーとその裏側にひそむ政治的背景をあぶりだしており、
サイモン・クーパー著の中でも最も面白い作品だと思う。
普通に学校の図書館にもおいてあるので、興味をもった人は是非
読んで欲しい。
2002年7月23日に日本でレビュー済み
「フットボールと政治」。W杯や欧州クラブチームが巨大化し、利権を巡る醜聞も、日本にも伝わってくるようになりました。というよりも、日本という市場も、フットボール経済に取り込まれたということなのでしょう。
本書は1994年W杯アメリカ大会直後に、また東欧やアフリカなど「不安定な国」を中心に書かれています。大統領からフーリガンまでさまざまな関係者へのインタビューにより、サッカーを巡る政治と経済の、不思議なからくりが展開されていきます。
いろいろな意味で、日本の常識が通用しないことを思い知らされる内容です。「面白い」と同時に「恐ろしい」。サッカー本としてだけでなく、文化論としても非常に興味深い一冊だと思います。
本書は1994年W杯アメリカ大会直後に、また東欧やアフリカなど「不安定な国」を中心に書かれています。大統領からフーリガンまでさまざまな関係者へのインタビューにより、サッカーを巡る政治と経済の、不思議なからくりが展開されていきます。
いろいろな意味で、日本の常識が通用しないことを思い知らされる内容です。「面白い」と同時に「恐ろしい」。サッカー本としてだけでなく、文化論としても非常に興味深い一冊だと思います。
2001年9月12日に日本でレビュー済み
サッカーは世界広範な地域で行われているわけで、その態様も多岐に渡っているわけだ。いろいろな本の中でいろいろな形で今までそんな事情を目にしていたが、これだけ世界のサッカーについて具体的に、しかも熱烈に書いた本はそう見つかるまい。
東欧から南米、アフリカサッカーの暗部まで、など簡単に書ききれるものではないだろう。今までただ単に憧れを持って見ていただけのサッカーにそれなりの背景が用意されている事を今更ながらに理解できた。
後藤健生好きなら★5つ。 でも馴染みのない地域、あとテーマが非常に重いので疲れる。だからS・クーパーには申し訳ないけれど★4つ…
東欧から南米、アフリカサッカーの暗部まで、など簡単に書ききれるものではないだろう。今までただ単に憧れを持って見ていただけのサッカーにそれなりの背景が用意されている事を今更ながらに理解できた。
後藤健生好きなら★5つ。 でも馴染みのない地域、あとテーマが非常に重いので疲れる。だからS・クーパーには申し訳ないけれど★4つ…
2009年1月5日に日本でレビュー済み
サッカーを取り囲む多くの弊害が描かれている。これを読むとJリーグがどれだけ安全で紳士的に行われているのかが良く分かる。また、逆に世界のサッカーとの差に愕然とさせられる。
2008年8月22日に日本でレビュー済み
22カ国を9ヶ月かけて旅してサッカーと政治の関係をまとめたというだけあって、非常に中身の濃い作品です。ハイチの人が「ブラジル戦とアメリカの侵略のどちらが大切か?」という質問にした答えはサッカーの魅力を再認識させられました。南米の国の大統領が試合のメンバーについて批判するというのも、サッカーの大きさを感じました。
ただ、私は半分くらいしか読みませんでした。。全く知らない国に関する内容はどうしても興味がもてなかったです。「リトアニア・ラトヴィア・エストニア?うーん・・・」と住んでいる方には申し訳ないですが、読んでもイメージがわかず結局飛ばし読みでした。
サッカーの社会への影響力を知りたいという方は、読んでみてはどうでしょうか。
ただ、私は半分くらいしか読みませんでした。。全く知らない国に関する内容はどうしても興味がもてなかったです。「リトアニア・ラトヴィア・エストニア?うーん・・・」と住んでいる方には申し訳ないですが、読んでもイメージがわかず結局飛ばし読みでした。
サッカーの社会への影響力を知りたいという方は、読んでみてはどうでしょうか。