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イメージ付きのレビュー
基本的なデッサン力はある人向け。初心者向けではありません。
この本は、１９６９年に米のGrosset&Dunlap社から出版された「How To Draw Animals」の訳書で、１９７７年１０月に初版が発行されました。 私が持っているもの（アップしている画像の本）はその初版で、当時の価格は１４５０円でした。 この本が出る１年前には原書の方も買っているのですが、１９７６年版の価格は３．９５ドル、日本での価格は１６００円前後だったと記憶します。 本の体裁はＡ４版ムセン綴じのペーパーバックで、総ページ数は１２０頁強ほど、全頁モノクロでカラーページはありません。 図版は総て筆者のイラストで、鉛筆画やコンテ・パステルを使った絵やペン画などがありますが、コンテやパステルの絵はキャンソン紙のような粗目の紙に描いてコントラストをハッキリさせて製版しており、非常に見やすくなっています。 著者のＪ・ハム氏については、人体ドローイング書の定番である「人体のデッサン技法」（人体のデッサン技法）の著者として非常に有名ですから、改めて説明する必要はないでしょう。 ちなみにＪ・ハム氏の著書は、上掲「人体のデッサン技法」とこの本以外にも、「人物漫画の描き方」（人物漫画の描き方）と「風景画の描き方」（風景画の描き方）同じ建帛社から出版されています。このうち「人物漫画の描き方」だけは、現在は絶版になっているようです。（ただしペーパーバックの原書は、現在でもアマゾンで安く入手できます） 本書の内容は、大見出しだけを書き出すと以下のようになっています。動物画の基本ネコ類の描き方クマ類の描き方ウマ類の描き方ゾウの描き方イヌ類の描き方ラクダの描き方キリンの描き方カバとサイの描き方シカ類の描き方バッファローの描き方ウシの描き方ブタの描き方サルと類人猿の描き方その他の動物の描き方 本のカバーには、「初心者にはもちろん、プロにも大いに参考になる、基本から応用までの極意詳解指導書」という煽り文句が付いていますけれど、これは明らかに誇大な表現で、基本的なデッサン力や人体ドローイングの知識程度は持っていることが前提になっています。 動物の解剖学的解説も若干入っていますが、人間の肘や手首や指や膝や足首などが、動物だとどこに来ているのか、人間と動物の骨格はどのくらい違うのか、から動物の骨格を理解させるという方法ですから、人間の骨格を理解できていない人には何の助けにもなりません。 端的に言ってしまえば、以下のような悩みを持つ人へのお助け本です。 スケッチやクロッキーの経験も豊富でデッサン力もある、実際の動物を見ながら、または写真を見ながらなら、そこそこの絵は描ける。しかし、何となく生き生きした感じにならない、躍動感が出ない。あるいは動物園などで動き回っている動物をスケッチすると、どうも上手く描けない。どうしたら良いのか…。 つまり、対象の基本構造を理解すればより良い絵が描けるという、当たり前のことを教えてくれる本です。 動物以外にも、例えば自動車の絵を描くなら、トーイン・キャンパーなどの角度が判っていれば前輪はよりリアルに描けますし、リジッド、マルチリンク、トレーリングアーム、ダブルウィッシュボーンなどのサスペンションの構造を理解していれば、動いている車両はより躍動的に描けます。 また例えば建築物の絵を描く場合も、日本の城なら唐破風の構造や屋根瓦の葺き方などを理解していれば、よりリアルな絵が描けます。 同様に、動物の場合も骨格や筋肉の構造や、その動物が歩いたり走ったりする時の基本的な動き方を理解していれば、相手が動き回っている動物でも、知識によって補うことができるわけです。 この本に掲載されている「ライオンの歩き方」の分解図解はネコ科全般に応用できますし、ウマの走り方の分解図はウマの絵を描く場合には必ず理解していなければならないポイントです。 薄い本ですので、決して総ての動物について十分な解説がなされているわけではありませんが、イヌやネコやウマなど、普通に見かける動物については相応の解説がされています。これでまず身近な動物の描き方を覚えて、その他の動物については自身で観察を重ねて応用しろというところでしょう。 星は十分５つ付けられます。 ちなみに、鳥類や爬虫類がまったく載っていないことに不平を漏らす方もいるようですが、米語でアニマルと言った場合、確かに動物全般の意味もあるものの、日常的には哺乳類、特に四足歩行をする陸上哺乳類を指します。動物全般ならクリーチャーという語を使ったでしょう。 タイトルについては偽りがあるわけではありません。
