石風社は中村哲の存在を世にプロデュースした出版社である。最初の著作『ペシャワールにて』から、実に18冊中11冊は石風社からのものである。
石風社は同時にペシャワール会の実質の事務局でもあったが、ペシャワール会については4冊の書籍が出ているが本書はその最初の1冊である。
執筆したボランティア47名の90点からなるペシャワール会通信は、時代順に沿いつつ、7つの主題ー戦乱と喧騒の街、小さなオアシス、医は国境を越えて、未曾有の大旱魃そして9・11、緑の大地を求めて、異文化の「非日常」、「命の水」への挑戦ーに編み分けられている。
中村哲の眼に映るパキスタン/アフガニスタンには出てこない、現地人の個人名はむしろ、本書にこそ頻繁に出てくる。また、彼らの描くパキスタン/アフガニスタンの姿は、中村が描くものと微妙に異なり、その両者の差から、パキスタン/アフガニスタンの姿が立体的に見えてくるし、彼らの眼やな映る中村哲の姿、中村哲の客体視から、中村哲の姿も立体的に見えてくるだろう。
もちろん、1人1人のボランティアも個性的であり、何を見ているのか、どこを重んじているのかもそれぞれに異なるし、そのうち一定数の人物は中村の著作にも登場していたので、こちらも、中村からの客体視と本人の執筆から立体的に見えてくる。
中村自身は文才があったが、それを支えていた周囲の人々については事細かに書けなかったので、この両者からの書き物を通じて、彼のパキスタン/アフガニスタンでの事業の全体像が辛うじて立体的に見えてくるだろう。
私自身は本書をよみながら、1人1人が今、何をしているのだろう、と気になり、何人かについては実際に探してしまった。
『丸腰のボランティア すべて現場から学んだ』はタイトルにもあるよう、石風社風の端的なタイトルである。本書からの2年がペシャワール会と日本人ボランティア・ワーカーにはもっとも充実した時であったかもしれまい。率直にパキスタン/アフガニスタンに臨んだ彼らに今は頭を垂れたい。

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丸腰のボランティア: すべて現場から学んだ 単行本 – 2006/9/1
中村 哲
(編集),
ペシャワール会日本人ワーカー
(著)
- 本の長さ399ページ
- 言語日本語
- 出版社石風社
- 発売日2006/9/1
- ISBN-104883441393
- ISBN-13978-4883441396
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登録情報
- 出版社 : 石風社 (2006/9/1)
- 発売日 : 2006/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 399ページ
- ISBN-10 : 4883441393
- ISBN-13 : 978-4883441396
- Amazon 売れ筋ランキング: - 654,444位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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