1962年の「黒の試走車」からスタートした「黒シリーズ」第2弾。1963(昭和38)年制作。監督は第1弾に引き続き増村保造、主演は宇津井健、共演は叶順子、高松英郎、小沢栄太郎、殿山泰司、神山繁、上田吉二郎、中條静夫ほか。原作は佐賀潜「華やかな死体」。
「黒シリーズ」特有の小気味良い演出はここでも十分に感じられ、ある殺人事件を巡って若手検事の宇津井健と老獪な弁護士、小沢栄太郎による攻防が焦点になっています。正統派の捜査を旨とし正義漢にあふれる宇津井健と、買収、恐喝、事実の歪曲など何でもありの小沢栄太郎との戦いは息を飲むような迫力に満ちています。これは産業スパイを扱った前作「黒の試走車」での敵味方に分かれた攻防戦の凄まじさに通じる緊張感があります。犯人役の神山繁のふてぶてしさも秀逸な演技です。
意外な結末を迎え失意の元に去る宇津井健を、改心した叶順子が訪ねてくるのがこの作品のなかでの唯一の救いかもしれませんが、個人的には宇津井健を支えるベテラン刑事役の殿山泰司のいぶし銀の演技が醸し出すさりげない人間味が光っていると思います。